もともと三洋電機は「動画デジカメ」を登録商標にしているほど、動画機能を強化したデジカメを作ってきたが、どれも一般的なコンパクトデジカメのスペックの中での動画機能にとどまっていた。気軽に動画を撮るにはよかったが、あくまでもメインは静止画だったのである。
それを打破したのが2003年秋に登場した「DMX-C1」だ。何もかもが斬新だったが、つまるところ、はじめて静止画と動画を等価に扱えるデジカメであるという点が最大のポイントといってよい。
DVカメラは動画がメインで静止画はサブだし、デジカメはその逆だが、DMX-C1は動画も静止画もメインという完全なデュアル志向。静止画用と動画用のシャッターが別々に並んでいたほど。ぎゅっと握れば静止画も動画も好きな方を気まぐれに撮れるという楽しいデジカメだったのだ。
それをベースによりパワーアップしてこの秋に登場するのが「DMX-C4」だ。新しすぎる故に理解されづらいところもあるが、前作以上に遊べる動画・静止画マシンに進化している。
まずDMX-C1をそのまま受け継いだ独特のスタイルから見ていくべきだろう。DMX-C4は銃身がほとんどない銃のような、下手なSF映画で手のひらサイズのレーザー銃として登場しそうなボディを持ち、右手でガングリップスタイルで握って撮影する。縦型の小型DVカメラに似ているが、DMX-C4はもっとスリムでコンパクト。小さい分持ちやすく携帯性もずっと高い。
ファインダは液晶モニタのみであり、90度開いて回転させるという構造だ。液晶モニタの内側に電源スイッチがあるが、デフォルトの設定では、モニタの開閉で自動的にスタンバイモードになるため、普段は電源を入れっぱなしで、モニタの開閉だけで使うのが便利。バッテリーの持ちを注意しなければならないとき以外はそれがいいだろう。
レンズ部は少し斜めに付けられており、肘を身体につける感じで目ではなく胸の高さあたりで構えると自然で扱いやすい。使い勝手とデザインが一致しているのである。
ガングリップスタイルのため、レンズ部の奥行きを取れるのはひとつのメリット。それを生かしてレンズをボディに埋め込み、沈胴しない5.8倍ズームを実現した。ビデオカメラと比べると倍率は低いが、手のひらに収まる超小型サイズで5.8倍ズームのデジカメと考えると破格。そんなデジカメはないからだ。
焦点距離は38-220ミリ相当。やや望遠に強い構成で、F3.5-3.7と広角側ではやや暗いが、望遠にしてもあまり暗くならないので実用性は高い。絞り値は固定で、明るいシチュエーションでは内蔵のNDフィルタで対応するという方式をとっている。
撮影距離はワイド端で10センチ、テレ端で80センチからだが、マクロモードにするとワイド端で2センチまで寄ることができる。
CCDは1/2.7インチの400万画素。デジカメとして見ると、5.8倍ズームで400万画素で超小型、とかなり優れたスペックだ。
動画撮影時は、TV-SHQ(640×480ピクセルで秒30コマ)からWeb-S(176×144ピクセルで秒15コマ)まで4種類のモードを持っている。特にVGA動画時はデータレートが3MbpsのSHQに加えて2MbpsのHQモードも持っており、TV-HQ時は512MBのSDカードに30分、1GBのSDカードなら約1時間の記録が可能だ。
注目すべきは音声で、デジカメの中では唯一ステレオマイクを装備。クオリティもサンプリング周波数が44.1kHzの2chステレオで、一般のデジカメ動画に比べると音質が抜群によい。これは重要な点だ。
動画・音声のフォーマットはISO標準のMPEG-4形式を採用。MPEG4といってもいろいろあるが、映像フォーマットはMPEG4,音声フォーマットはMPEG-4オーディオのAAC圧縮で、ファイルフォーマットもMPEG-4(拡張子は.MP4)と完全にISO標準に準拠した、simple ProfileのMPEG-4となっている。
ISO感度は静止画時はISO 50-400。動画時はその4倍の200-1600相当となる(動画画像は4つの画素を混合して生成するため、感度もその分高くなる)。
画質だが、非常にナチュラルな画質で発色は鮮やか。小型の高倍率ズームということや、圧縮率が高めなこともあってかディテールの描写力はあまり高くない。望遠側ではいいが広角側でやや不満があるというところか。オートホワイトバランスも色温度が低くなると追従しない。ただし今回使用した実機は量産試作機であり、画質や音質は製品版とは異なる可能性があるので注意されたい。
動画時は前作よりAFが安定して使いやすくなっている。強い光源があるとスミアが出るがそれは仕方がないところだろう。
でも非常に自然で気持ちいい絵を出してくれるので、日常のスナップ用400万画素機としては十分。特に望遠系を楽しむ人には得難いデジカメだ。このサイズで220ミリまでの光学ズームを持って気軽に使える400万画素機はほかにはない。AFもなかなか高速だ。
なお、DMX-C4は400万画素CCDながら画像補完によって800万画素相当の大きな画像を作る機能も持っている。
今回のもっとも大きな強化はCCDだが、その次はやはり手ブレ補正と音声のノイズリダクション機能だろう。やはりこの2つは動画をメインにする人には欠かせない。手ブレ補正は光学式ではなく、小型のDVカメラでよく使われる電子式を採用している。
電子式は、実際に使う画像より上下左右それぞれ10%分だけ余分に撮影しておき、その結果を見ながら内部で採用する箇所だけをトリミングしていくというもの。あらかじめ大きめに撮るのでその範囲に絵が収まっていれば前のコマとうまくつなぐことで手ブレを抑えた動画を記録できるというわけだ。よって、「手ブレ補正は動画撮影時にのみ適用される」。このサイズで5.8倍ズームを実現するには光学式手ブレ補正は難しいという。しょうがないところだ。
よって、手ブレ補正をオンにすると、焦点距離が38-220ミリ相当から、47.5-275ミリ相当とかなり望遠気味になる。こういう欠点はあっても、動画時は周りが明るかろうが暗かろうが必ず手ブレの影響がでるので、オンにしておきたい。
問題は静止画ではこの機能が効かないため、同じズーム位置で撮っても、動画と静止画で画角が変わるという点だ。手ブレ補正の結果は液晶モニタ上の映像にダイレクトに反映されるのでやや望遠気味になり、静止画を撮ろうと静止画用シャッターを半押しにしたとたん、画面が広角になるという現象が起きる。そこは覚悟しておきたい。
もうひとつ、DMX-C4は片手で握って撮るというスタイルのため、もともと手ブレは起きやすい。特に静止画で望遠側で撮るときや暗めの場所で撮るときは、左手を添えるなどして十分注意するのが望ましい。
音声は高周波成分をカットするというノイズリダクション機能を装備。今までは風の音をそのまま拾ってしまって再生時に気になることが多かったが、それが軽減されるようになった。自然の中で滝の音を撮るなどナチュラルな音が欲しいときはオフで、日常の中で人を撮ったりするときはオンにするのがよいだろう。
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