「完成度は一番」と自認するLet's note Rシリーズを生んだ「技術力」と「その課題」を神戸工場に見る(2/2 ページ)

» 2004年10月12日 21時34分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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 このように、PanasonicがノートPCで必要と考える「7項目」でバランスを取りつつ、すべての要素で秀でたスペックを実現しようとすると、日本のが持つ高い生産技術が必要となる。

「コア技術で差別化し、海外生産では不可能な製品が必要。この技術は生産拠点を海外に置いているメーカーでは実現できない」」という彼らの言葉に、コスト競争力では不利になりがちな日本に生産拠点を構える理由があるといってもいいだろう。

EMC設計対策室は「電波暗室」ともいえるブースで、外部からの電波を遮断した部屋の中で、ワイヤレスLANモジュールの性能検査を行う
保証環境内での動作を検証するために一定の温度と湿度を再現する「低温恒温恒湿室」
そして急激な温度変化に対する耐性を確認する「熱衝撃試験機」も用意されている。 約30分で室温+摂氏350度に、もしくは約60分で室温−摂氏70度という過酷な状況を出現させる
「TOUGHBOOK」というと耐衝撃性を確認する落下試験や、防水性能をチェックする「防滴試験」が注目される。しかし、米国で最も評価されたのは、車載利用でPCを破壊する一番の原因である「振動」に対する耐久力なのだ。その対振動試験を行う「複合環境試験」では、多種多様な周波数の振動を長時間与えて、PCの動作をチェックする

 その、高い生産技術を集約している神戸工場。細分化するユーザーの需要に対応するために、生産ラインを自由に構成できる「セル生産」や、TOUGHBOOKシリーズが誇る堅牢性を生み出した各種環境テスト機材など、ユニークな生産方法を率先して導入してきている。その神戸工場で、さらなる製品品質向上のためにいま試みられているのが「KISSシステム」だ。

 「Kobe Intranet Solution of Super-Production」と名づけられたこのシステムは、生産設備、製品部材をバーコードで印字したシリアル番号で管理し、その情報をイントラネットで共有するもの。常に動作状況のデータを集積しており、エラー発生率がある一定の値を超えると、生産設備の場合はその部分のメンテナンスを促し、製品部材の場合は不具合発生の可能性をサポートセンターなどに告知する。

製品の履歴を保存し、動作検証の蓄積データから動作不良の発生を予見する「KISSシステム」のコンソール画面。左の画面は製品の履歴が表示され、右画面にはHDD読み込み速度などの検査結果一覧が表示される
セル方式では個人のスキルが生産効率に大きく影響する。神戸工場では「セル単位」の生産性を把握するシステムが現在試験的に導入している。低効率のセルが確認された場合は、原因を把握した上で個別レクチャーなど、スキル向上のための方策が施される

 このほかにも、ユーザーごとの細かいカスタマイズに対応しながら、発注から3日以内でユーザーに製品を配送する「My Let's倶楽部」や、企業ユーザーに対してPC単体だけでなく、周辺機器やセキュリティー/ネットワーク設定など総体的なシステムとして納入する「コンフィグサービス」など、ただ作るだけでなくユーザーの満足度を高める質の高いサービスの供給源としても、神戸工場は機能し始めている。

 ほかのメーカーでは真似できない、日本発のノートPCをこれからも供給しつづけていくPanasonic。軽量化を突き進めたRシリーズ、内蔵ドライブを持ちながらも軽量化を果たしたWシリーズともにその完成度は高い。しかし、高いがゆえに、それが、ユーザーにインパクトを与える次世代製品の登場を阻んでいる、といえなくもない(先日発表された秋冬モデルは、既存モデルのマイナーバージョンアップである)。

 「Let's noteシリーズの中で一番バランスがとれていて完成度が高い」と自ら認めるLet's note Rシリーズを超える製品をいかにして開発するか。開発スタッフが「途方にくれる」とこぼすほど難しい問題に、神戸工場はいま取り組んでいる。

100万台突破を記念して展示された歴代のLet's note
Let's note AL-NO。センターではなくサイドに設置された「黒いブツブツがついた赤い」トラックボールが、個人的に「なつかしぃ〜」
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