モデルチェンジした新PIXUSの実力は――「PIXUS iP8600」「PIXUS iP7100」(1/3 ページ)

» 2004年10月26日 11時00分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]

今年の傾向:キヤノン編

 今年のキヤノンは、シングルファンクション機と複合機のラインナップを全面リニューアルしてきた。どちらかといえばシングルファンクション機に力を入れており、派生的な機種も含めると全部で9モデルものラインナップだ。複合機は全4モデルとなっており(そのうちPIXUS MP370は継続販売)、セイコーエプソンや日本ヒューレット・パッカードの複合機重視路線とは異なる布陣だ。

 シングルファンクション機のラインナップは表の通りだ。派生的なモデルは、メモリカードスロット搭載のダイレクトプリント機「PIXUS iP6100D」と、有線LAN(100BASE-TX)/無線LAN(IEEE802.11b/g)インタフェースを備えた「PIXUS iP4100R」の2モデルである。

表■シングルファンクション機のラインナップ

SUPER PHOTO BOX
多色インクモデル
PIXUS iP8600
PIXUS iP8100
PIXUS iP7100
PIXUS iP6100D
(ダイレクトプリントモデル)
SUPER PHOTO BOX
顔料Bkインクモデル
PIXUS iP4100
PIXUS iP4100R
(USB+有線/無線LANモデル)
PIXUS iP3100
エントリーPIXUS iP2000
PIXUS iP1500

 純粋なシングルファンクション機は、ハイエンドの「PIXUS iP8600」からミドルローの「PIXUS iP3100」までと、エントリークラスの「PIXUS iP2000」「PIXUS iP1500」との間に、明確な一線が引かれている。PIXUS iP8600からPIXUS iP3100は、ニュースタイルとなる「SUPER PHOTO BOX」だ。印刷ヘッドまわりやインタフェースを除いて、本体デザインと主要な機能はまったく同じなのである。

 グレードを決めているのは、印刷ヘッド(インク色とノズル数)から来る画質と速度、価格だけと思っていい。機能的な部分では差がないので、ユーザーとしては比較と選択がしやすい。PIXUS iP2000/iP1500は、上位モデルと比べてスペックと機能の落ち込みがやや大きい。主力のSUPER PHOTO BOXモデルを理解するための重要なキーワードは「マルチペーパーハンドリング」だ。

8色インクのハイエンド機「PIXUS iP8600」、6色インクの標準高画質機「PIXUS iP7100」

 PIXUS iP8600(以下、iP8600)は、全色独立タンクの8色インクを備えたA4機のハイエンドモデルだ。CMYBkの基本4色と低濃度CMに加えて、高彩度のレッド/グリーンを持つ。ノズル数は各色768ノズルで、構成的にはA3ハイエンドの「PIXUS 9900i」と同じだ。

PIXUS iP8600

 PIXUS iP7100(以下、iP7100)は、CMYBkの基本4色と低濃度CMの6色インクで、やはり全色独立タンクである。ノズル数は各色768ノズルだ。

PIXUS iP7100

 iP8600とiP7100のスペック的な違いは、インクの総数だけだ(カラーリングや消費電力など微妙な差もあるが)。iP7100と比較して、iP8600ではグリーン系の最大彩度が約1.2倍、レッド系が約1.6倍と、色域に差がある。実際の画質は、後半で印刷サンプルを見ながら検証していく。以降、特に記述のない限り、iP8600とiP7100に共通の内容だ。ちなみに両者の中間には、7色インク(CMYBk、低濃度CM、特色レッド)のPIXUS iP8100が存在する。

 インクには新開発の「BCI-7」系を用い、キヤノン純正用紙との組み合わせで従来以上の耐候性を実現している。アルバム保存で約100年、フォトフレーム保存での耐光性が約30年(プロフェッショナルフォトペーパーの場合)、そのままの状態で飾ったときでも約10年(耐ガス性)は色あせしないという。

 耐ガス性は、オゾン(O3)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)の混合ガス環境で測定されたものだ。また、温度が30度、湿度が80%という高温多湿でも、色が変化しにくいという実験結果が示されている。耐候性は実環境に大きく左右されるため、公表値を鵜呑みにするのは危険だが、従来モデル以上であることには期待してよさそうだ。

ボックス型の本体とマルチペーパーハンドリングで使い勝手が向上

 新PIXUSシリーズ(SUPER PHOTO BOXモデル)の最大の特徴といえるのが、ボックス型の本体とマルチペーパーハンドリングだ。まずボックス型の本体は、これまでの「いかにもプリンタ」というスタイルから、リビング設置を意識したというシンプルな形状になった。

トレイ類をすべてたたむと直方体に近いボックス型になる(写真はPIXUS iP7100)

 背面の給紙フィーダと前面の排紙トレイを開くと、約60センチの運用スペースが必要となるが、未使用時は直方体に近く、見た目もよい。本体のプラスチックにもう少し強度があれば、もっと高級感と満足感が得られたと思うのは、まあ贅沢な望みだろう。

背面の給紙フィーダと前面の排紙トレイを開くと、約60センチの運用スペースが必要(写真はPIXUS iP8600)

 マルチペーパーハンドリングは、(1)2way給紙、(2)自動両面印刷、(3)CD/DVDトレイガイドという3つの要素から成り立っている。

 (1)の2way給紙は、2つの給紙場所を同時に使えるというものだ。従来と同じ、背面の給紙フィーダに加えて、前面下部に給紙カセットが新設された。給紙カセットは伸縮式となっており、A5サイズ以上の用紙をセットするときは、カセットの全長を伸ばす必要がある。この状態で本体に装着すると、伸ばした分だけ前方に突き出してしまうが、これは仕方のないところだろう。

 給紙フィーダ/カセットには、サイズや種類の異なる用紙をセットしてもいいし、同じ用紙を大量に給紙しておいてもいい。一般的には、片方にA4普通紙、もう片方にL判などのフォト用紙を給紙しておくと便利だ。よく使う2種類の用紙を交換する必要がないというのは、すこぶる快適だろう。同じ用紙の場合、普通紙なら150枚+150枚の合計300枚、はがきなら40枚+40枚の合計80枚を同時にセットしておける。

 また、背面のケーブル類が後方に出っ張らないので、壁に密着した状態でも設置できる。給紙フィーダは開けなくなるが、前面の給紙カセットがあるので問題ない。PCデスクの最上部といった場所でも、前面給紙なら用紙をセットしやすいのも大きな利点だ。給紙カセットでも、対応用紙への全面フチなし印刷が行える。

給紙フィーダと給紙カセットのどちらを使うかは、本体の正面右に設けられた給紙切替ボタンで指定する(写真中央のボタン)。プリンタドライバでも指定可能だ
プリンタドライバにおける給紙方法の設定。給紙場所(給紙フィーダ/カセット)を固定したり、一方の用紙が切れたらもう一方へ自動的に切り替える設定が行える
給紙カセットの用紙種類/サイズを、あらかじめ指定しておくことも可能だ。例えばA4普通紙にしておくと、ドライバの用紙設定でA4普通紙を選んだときは給紙カセットを使い、A4普通紙以外の用紙は給紙フィーダを使うようになる

 (2)の自動両面印刷は、文字通りの機能だ。複数ページのワープロ文書やPDF文書、Webページの印刷などで非常に重宝する。給紙フィーダと給紙カセットのどちらからでも、自動両面印刷が可能だ。

 ただし、カラー画像の多いデータを「標準」以上の画質設定で両面印刷すると、一般的な普通紙では用紙がヘロヘロになってしまうことが多い。ある程度のクオリティが必要なときは、純正の「スーパーホワイトペーパー両面厚口」がおすすめだ。

 はがきの宛名面と通信面の両面印刷にも対応している。市販のはがき作成ソフトでは、「筆まめ」「筆ぐるめ」「筆王」「はがきスタジオ」の最新バージョンが、ソフト上からの自動両面印刷をサポートする。

 さらに、付属の簡単印刷ツール「Easy-PhotoPrint」とアルバム作成ツール「PhotoRecord」でも、自動両面印刷が可能だ。純正の用紙にA4と2L判の「スーパーフォトペーパー・両面」が追加され、両面印刷の写真アルバムが簡単に作れる。もちろんフチなし印刷対応だ。この用紙は半光沢の絹目調なので、光沢感が欲しいときは従来通りの片面フォト用紙を使うことになる。

自動両面印刷の設定は、プリンタドライバの「ページ設定」タブで有効化するだけ。印刷後に製本する場合は、必要に応じて綴じ方向(長辺の左右、短編の上下)、綴じ代の幅も設定しておくとよい

 (3)のCD/DVDトレイガイドは、CD/DVDレーベル印刷に用いる付属のCD/DVD専用トレイを、本体に直接セットできる機構だ。従来は別パーツのアダプタを着脱していたが、トレイガイドが本体内蔵となったため、使い勝手が格段によくなった。

内蔵のCD/DVDトレイガイドは、排紙トレイの内側にある。排紙トレイを開いた後、CD/DVDトレイガイドを手前に倒してオープンする。CD/DVDトレイは別パーツで、さすがに内蔵するのは難しいだろう

PIXUS iP8600とPIXUS iP7100の画質差は、小さくもあり、大きくもある

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