写真印刷の画質は間違いなくトップクラスだ。印刷ヘッドのスペック的に見ても、ノズル数を除けばシングルファンクション機の上位モデル(PIXUS iP7100)と肩を並べるので、当然といえば当然である。
掲載した印刷サンプルは、付属の印刷ツール「Easy-PhotoPrint」で出力したものだ。キヤノン製品のレビューで繰り返し述べているように、このツールの自動画像補正処理は効果が強すぎる場合がある。有効で印刷した場合、MP900ではコントラストと明度が高くなり、発色が浅くなりやすい。自動画像補正処理を無効で出力すると色ノリがよくなり、より好ましい色調が得られるケースが多かった。
色調の基本路線は記憶色重視で、鮮やかで好感を持つことはあっても、派手に感じることはない。巧みにバランスを取っており、色設計の熟成がうかがえる。粒状感もほとんど気にならないが、明暗差が激しい部分とシャドウ寄りの部分では、PIXUS iP7100やPIXUS iP8600と比べるとわずかに大きい。もっとも、肉眼で判別しやすいか、しにくいかという程度ではある。
スキャン画質については、反射原稿はまったく不満ない。原稿の色再現性がよく、シャドウからハイライトまで諧調もスムーズだ。ネガフィルムの発色もまずまずで、フィルム特有の粒状感をうまく消している。TWAINドライバの機能で「粒状感低減」をオンにすると、さらに滑らかな画像が得られるが、多少なりともディティールが甘くなるので使い分けたい。細部の描写にこだわる画像は、粒状感低減はオフのほうがよい。
MP900は画質と操作性に優れた複合機だ。ブラックインクが染料のわりには、普通紙への文字印刷もにじみが少ない。ペーパーハンドリングが昨年までの仕様である点と、フィルムのごみ傷対策がないのは残念だが、写真印刷とスキャン画質を重視する人におすすめだ。
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