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2004/11/12 14:17 更新

インタビュー
ペンコンピューティングの過去・現在・未来――Windows XP Tablet PC Edition開発者が語る(前編:進化編) (2/2)


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瀬戸 それは、ちょっと言いすぎです。手書き認識によるテキスト入力は、高度な文字認識エンジンの技術と、その成果を最大限、引き出すユーザーインタフェース設計が両輪となっています。

 タブレットPCを開発している連中の中には、タブレットPCという製品が出るずっと以前から、長年、ペンコンピューティングや手書き認識に関わっている人がいます。私もその中の一人ですが、過去に登場した手書き文字認識と比較すると、相対的にユーザーインタフェースにかけるウエイトというのが、Tablet PC 2005では大きくなっていると感じます。CPUパワーの進歩と手書き認識などの基本技術の発展を見極めて、最高に使いやすい文字入力のユーザーインタフェースを設計する、これがWindows XP Tablet PC Editionが目指しているところなのです。

――バージョン1のとき、「全画面入力」というのがありましたが、あれがなくなった理由は?

瀬戸 「全画面入力」というのは、入力パッドという決められたウインドウに書くのではなく、デスクトップのどこに書いても、手書き文字として認識する、というユーザーインタフェースです。ユーザービリティテストの結果やソフトウェアのデザインを検討しなおした結果、「全画面入力」では、使い勝手の向上に限界があると判断したからです。限界を一言でいうと、文字の入力なのか、それともWindowsの操作なのか、という識別が完全にはしきれない、ということです。

 例えば点を書いたとします。これが、たまたまアイコンの上だったとすると、これはアイコンをタップしたのか、点という文字を書こうとしたのか、書いた(あるいはアイコンをタップした)本人以外が判断することは無理なんですよ。95%は区別できても、残りの5%ができない。OSではそういうものはサポートするべきではないという結論です。ただし、全画面入力の持っている良い点は、すでに、話した、「インプレイス・ティップ」とか「オート・グロー」とかに十分生かされていますから、「全画面入力が生まれ変わった」といってもいいかもしれません。

「タブレットPC 入力パネル」上で、かな漢字変換が可能に

――そういえば入力パネル上でかな漢字変換も可能になりましたね。

瀬戸 これも、要求の多かった機能で、改善点の6つ目です。

 手書きで書こうとしても漢字を忘れた、という状況が多々発生するのです。バージョン1のタブレットPCを使って、日本て実施したユーザービリティーテストで実際にあったことですが、ある人はまったく漢字を書かなかった。課題として用意したかな漢字混じりの文章を全部、入力パネルを使ってかなで入力し、そして、かな漢字変換ボタンで、IMEを使って変換をしている。これを繰り返しているんです。それを見たときは愕然としました。テストの後で、聞いてみると、「漢字で直接、書くこともできることは知っていたが、かなで書いて、かな漢字変換のほうが分かり易かった」とおっしゃっていました。

 バージョン1の時から、かな漢字変換とどうやって組み合わせるかということは考えてはいましたが、このユーザービリティテストの結果が大きいインパクトを与えましたね。実際に使われるユーザーの方が少しでも、抵抗がないように作っていかなければということです。入力パネル上でのかな漢字変換は機能が大きいし、ユーザーインタフェースの設計に時間が十分に取れず、バージョン1ではリリースできなかった機能ですが、これは、是非、実現せねばと開発に関わっていた人間は皆、思いましたね。

 入力パッドに書いていくと、同時に茶色いバーが、認識された文字の下に出てきますがこれはかな漢字変換を行って区切った文節です。このバーをタップすると文節ごとにかな漢字変換ができるようになります。実際は、キーボードで入力する場合とは違って、かなと漢字が混じって書かれるので、厳密には「かな漢字交じり変換」をやってます。たとえば、「作ぎょう」と書いたあと、その茶色いバーをタップすると、「作業」はもちろんのこと、「サ行」も変換候補に出てきます。これを使うと、そんなことをする人がいるかどうかわかりませんが、例えば、「多摩」と書きたいときに「玉」と一文字入力パッドに書いて、茶色いバーをタップすると「多摩」になります。「たま」とひらがなで書いて、変換しても当然、「多摩」に変換されるわけで、まあ、普通は、そうするでしょうけれど。

 改善機能の7つ目として、枠あり「文字パッド」での「英単語モード」というのも、ご紹介したいものの一つです。ビジネス文書では、結構、英単語をそのまま、日本語文章中に書くことってありますよね。調べてみると、中国でもヨーロッパのビジネス文書でも英単語は混ぜて書かれることが多いということが分かりました。そういう、英単語が混ざった文章を手書き認識を使って入力する場合、たとえば、Microsoftを入力するには、「文字パッド」は枠ありですから、1つの枠に一文字づつ、M、i、c、r、o、s、o、f、tと枠を9つ使って書く、あるいは、ソフトウェアキーボートにモードを切り替えるとかしていたわけです。Tablet PC 2005の「文字パッド」では、「英単語」ボタンをタップすると、一時的に枠なしモードになり、続け字で英単語が書けるようになります。これは便利ですよ。最初に見た方は、「なにこれ。どうなってるの。」と驚かれます。

 実は、マルチリンガル・ユーザーには、もう一つ強力な機能がTablet PC 2005では入っています。これが、最後の8つ目の改善点です。入力パッドの左下隅にIMEでもおなじみの言語バーに相当する言語切り替え機能がついています。今まで、ご紹介してきた機能は全て日本語の入力パッド、すなわち、言語は日本語が選択されている場合のことでした。

 言語バーで、言語をドイツ語にすると、ドイツ語手書き認識を使って、日本語の文章の中にドイツ語を入力できるようになります。Tablet PC 2005のユーザーの方には、手書き認識エンジンパックを無償でダウンロードしていただけます。手書き認識エンジンパックをインストールすると、日本語タブレットPCに標準でついてくる英語と日本語以外に、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、簡体中国語、繁体中国語、韓国語の認識エンジンも使えるようになるという、優れものです。

 以上、駆け足で、ご紹介しましたが、これら8つの改善点は、バージョン1のタブレットPCをお持ちの方にも、XP SP2を搭載した、タブレットを購入された方にも、全て無償で提供させていただいています。実際にお使いになった方々からは、過去の手書き認識入力とは一線を画すと評価をいただいています。

ho_key.jpg

入力パネルのキーボード。左下に「JP」と出ているのが言語切り替え機能

アプリケーションの充実も大切

――アプリケーションも次第に充実してきているようですね。

瀬戸 このソフトは、JPEGファイルをテンプレートとして使用することができるお絵かきソフトです。ブラシというか油絵の微妙なタッチを表現できます。テンプレートを使用できるので、ゼロから絵を描くのは苦手な人でも、元になる写真の上に、イラストのようにレタッチして、油絵を描くことができます。

 ペンの太さの変更、ペンの色の変更も可能で、ブラシですとかクレヨンですとか、ペンだとか消しゴムだとか幾つか切り替えることもできます。結構簡便に、油絵が描けます。弊社のあるタブレットPC担当が言うには、子供の頃は絵を描くのが苦手だったけれど、このソフトを使ったら同僚から褒められてうれしかったそうですよ(笑)。

  • 手書き電子教材

瀬戸 Eスクエア・アドバンスというプロジェクトでは、漢字のドリルソフトを作られたそうです。認識エンジンと組み合わせた漢字書き取りドリルで、字は合っているけれど書き順が違っている、というのもチェックできます。紙の上での書き取りテストではそんなことは出来なかった。採点も瞬時に行える。

 フロリダのある中学校では、マイクロソフトのサーバ製品で構成したクラスサーバという学校用のサーバを導入されていて、そこに教材が全部入っています。生徒は朝来ると、各自のタブレットPCを取り出し、そのサーバにログインして、教材をダウンロードして、英語や数学の問題などをやっています。そこの先生が言うには、今までPCは導入してきたが、タブレットPCは効果が格段と違う。面白いからみんな使うし、ペンなのでダイレクトにいろいろなことができる。各生徒の理解度に合わせて指導ができるので、学習効果も上がるとのことです。今まで、数学が嫌いな生徒が「タブレットPCになって、ずっと良く分かるようになった」と言っていたとのことです。

  • Microsoft Office OneNote 2003 SP1

瀬戸 Microsoft Office OneNote 2003 SP1のファイル共有機能は、私自身、米国と日本のタブレットPC担当との間の会議で毎週使用している機能です。

 まず、共有する相手を決めます。自動的にメールで招待状が送られ、受け取った方は、添付ファイルをクリックすると共有セッションが始まります。ネットでつながっていさえすれば、どこにいても、丁度、ホワイトボードを共有しているような感じで使えるんです。

 例えば、売り上げ状況のグラフを見ながら、「ここの売り上げの推移の原因はなんだろう」と、ペンを使って書くと、相手のOneNoteの共有されているページにも、同じ画が同時に表示される。電話会議では、同じグラフを見ていても、「こことここが」という風に、指し示すことは出来ない。言葉で「8月の東北の売り上げと関西の売り上げが」と喋る必要があります。テレビ会議でもなかなか、グラフを示して「こことここが」というふうにはいかない。

 OneNoteの共有セッションを使うと、ドキュメントを共有できてお互いに書き込みが出来る。時間として3倍くらい違いが出ますが、時間短縮だけでなく精度、プロダクティビティーですね。コミュニケーションのクオリティというのが飛躍的に向上します。もちろんセッションが終わった後は、データが両方に残ります。

瀬戸 メディク・クエスト株式会社が青山学院大学に納品されたEduCanvasの企業版というのが出てくるそうです。かなり強力なアプリケーションです。

 PowerPointなどの資料をインポートして、共有して同時に書き込みをすることが出来ます。画像情報、音声情報などがストリームとして溜まっていきます。青学バージョンでは、90分の講義で10Mバイトくらいに圧縮されます。1学期の授業がCD-ROM1枚に入ってしまいますね。

 タブレットPCのいい点としてはその場で出た非定型情報やアイデアなどをキャッチしやすい、というところです。お客様との対応でその場で出てきた話ですとかいちいち録音機で録音するわけにはいきませんよね。ありがとうございましたといって分かれてからタイプするかです。かなり内容が抜け落ちているわけです。

 ペンであればコミュニケーションを続けながら重要な情報をキャプチャできます。今まで失われていた非定型の情報であるとか顧客対応情報であるとか、医者と患者とのやり取りなどでもそれが残るわけです。

※後編(Q&A・未来編)に続く

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[大出裕之,ITmedia]

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