本当の大人は「大人買い」ができないITmedia PCUPdate Weekly Access Top10

» 2004年11月16日 18時31分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 子どものとき「家にはお金ないんだよっ!」と親に言われて無理やり抑えつけてきた物欲。それを自分の稼ぎで自由に使えるようになった経済力で一気に解放してしまうのが「大人買い」だ。

 集められなかったライダーカードを箱買いして一気にコレクションを完成させるのも「大人買い」なら、指をくわえて我慢している小学生の目の前で食玩やトレカをイナゴのごとく漁っていくのも「大人買い」。

 「いい大人が子どものおもちゃを買いあさるんじゃねぇよっ!」と、小中学生の不興もいっしょに買いまくっているようだが、まあまあ、そういわずに暖かい目で見守ってくれたまえ。君達も大きくなったら、目の前で一心不乱に食玩を吟味するお兄さんのように、夢をかなえるときがきっとくるはずだから。

 でもね。本当の「大人」になったら、実は「大人買い」ってできなくなるんだ。ためしにコンビニで「大人買い」に興じているお兄さんをよーく見てごらん。どことなく「恋の悩みはあるけれど、人間ドックでバリウムを無理やり飲まされることもないし、年金問題も介護保険もまだまだ先の話だし、ま、いいか」っていう顔をしていないかい。

 本当の大人は、いろいろな苦労としがらみを背負って生きているのだよ。それは君達のお父さんのやつれた顔を見ればよく分かるはずだ。「さすがに恋の悩みはないけれど、さっきバリウム飲んでおなか苦しいし、年金はきっと戻ってこないし、来年からは介護保険も取られちゃうんだよね〜」というつぶやきが、「しわ」の隙間から漏れ聞こえてくるだろう?

 いろいろと背負った大人になると「稼いだ金は後先考えず全部つぎ込んで大人買い!」ということはできなくなるんだ。そういう大人はね、君達と同じようにお母さんから小遣いをもらって生計を立てているわけだけど、当然「生かさず殺さず」程度の金額しかもらっていないから、「毎日食べていた豚ドンを一日おきにする」「コーヒーはやめて接待用の無料サーバーでお茶を飲む」「給料日一週間前から絶食する」なんていう、まさに命をかけた努力の積み重ねでPCパーツ購入資金を備蓄しているのだよ。

 そういう状況だから、記事にあるような「一日どぉ〜んと25万円」というお買い物は夢のまた夢。「パーツはバルクと決まっています」なんては当たり前で、「ワゴンセールの開封済みマザーボード」とか「PCを拡張したお大尽からおこぼれを頂戴する」という「かすめ技」で、PCパーツをチマチマとそろえていたりするんだな。

 さあ、君達にも「酸いも甘いも」知ってしまったお父さんの買い物は「大人買い」から程遠いことが分かってもらえたと思う。「そういうのは親父買いっていうの?」と君は聞くかもしれない。でも、「親父買い」というのは、金色のネックレスとブレスレットをぎらぎらさせたおっさんが「がっはっはっは、どうもどうも、一番いいものを適当に見繕ってよろしくちゃ〜ん」と金にあかせて買いまくることだから、これまたぜんぜん違うのだ。

 だから、お父さんの買い物はやっぱり「お父さん買い」と呼ぶことにしよう。ひょっとすると君はお父さんのことを「パパ」と呼んでいるかもしれないが、「パパ買い」と呼ぶと、これはこれでちょっと意味が違ってくるから止めておこう。くれぐれも「それじゃ、パパ買いって何?」とは聞かないでくれたまえ。そういうことは大きくなったらきっと分かるときがくるからね。

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