第3回 直販PC市場に斬り込む日本HP――ノートブックPC編 その2PC USERが斬る!

» 2005年03月07日 00時00分 公開
[PC USER]
写真 黒と銀色で構成されていた従来のnx9110から、ボディーカラーを黒ベースに改めたHP Compaq Business Notebook nx9110 ブラックモデル。注意深くみると液晶やタッチパッド周り、側面が濃いグレーになっており、ツートーンカラーであることがわかる。

10万円以下で15.4インチワイド液晶搭載機が手に入る

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 今年2月に発売が開始されたnx9110だが、カテゴリー的にはデスクトップ機の代替となるフルサイズのノートブックPCに分類される。デスクトップPCの代わりになるからには、液晶ディスプレイのサイズが大きく、解像度も高い方がいいし、省スペースであることが望ましい。キーボードやポインティングデバイスといった入力環境にもこだわりたいところだ。その点からすると、本機は実に見どころが多い製品に仕上がっている。

 まず真っ先に挙げられるのは、15.4インチのワイド液晶ディスプレイだろう。このサイズの液晶パネルを採用したノートブックPCは2005年春モデルのトレンドとなっており、注目が集まっているジャンルである。手前みそだが、弊誌PC USERの4月号でも特集を組んだほどだ。

 数あるワイド液晶ディスプレイ搭載機の中で本機が際立っているのは、実売10万円以下で購入できる点にある。昨今ではこのクラスの低価格ノートブックPCはけっして珍しくはないが、15.4インチのワイド液晶を10万円以下で手に入れられるとなれば話は別だ。同社の最大のライバルといえるデルも、最近はワイド液晶搭載ノートブックPCに力を入れているが、現行のラインナップでは10万円を切る製品は見当たらない。

写真 現在人気の高い15.4インチのワイド液晶ディスプレイを採用。画面解像度は1280×800ドットとボディーサイズは大柄だが、そのぶんキーボードやパームレストにゆとりがある。タッチパッドの機能オン/オフボタンは健在だ。

 本機が備える解像度1280×800ドットの液晶パネルは、高輝度・広視野角といった謳い文句こそないものの、表示品質はなかなか良好だ。公称値は明らかにされていないが、上下/左右ともに視野角は広めで、急な角度で見た場合でも色の反転が少ない。ノングレアらしい落ち着いた表示で目に優しいという印象だ。

 店頭で販売中の他社製ノートブックPCでは、TV番組の視聴やDVDビデオの再生に適した光沢タイプが全盛だが、文字の入力やWebの閲覧時は逆にまぶしすぎたり、画面への映り込みが目立ったりとデメリットが指摘されている。非光沢タイプの本機はそのような心配が全くなく、低価格PCにありがちな輝度不足でDVDビデオの鑑賞に向かないといったこともない、実にバランスの取れたパネルといえる。ワイドタイプなので、DVDビデオの再生にも問題なく対応できるほか、前面にJBL製のスピーカーを内蔵することで、ノートブックPCとしては迫力のあるサウンドを楽しめるのもうれしいところだ。ちなみに、DVD/音楽CD操作用に独立したボタンは用意されていないが、Fnキーと数字キーの組み合わせで再生や停止、チャプターや曲のスキップが行なえる。

デスクトップPC用の高速なプロセッサーを採用

 本機のもう1つの特徴は、Celeron 2.8GHzというデスクトップPC用のプロセッサーを搭載していることにある。いわゆるデスクノートと呼ばれるもので、値段を抑えつつ高速なプロセッサーを搭載できるのがメリットだ。同社の現行製品の大半がPentium M/Celeron Mプロセッサーに移行しているだけに、これだけの高クロックなプロセッサーを備えているのは本機だけのアドバンテージといえるだろう。

 逆に省電力機能を持たないデスクトップPC用のプロセッサーを採用するだけに、発熱や冷却ファンの高速回転による騒音面が気になるところだが、本機の対策は万全だ。

 というのも、昨年末まで販売されていたシルバータイプのnx9110では、TDP(熱設計電力)が82WのPentium 4/3.2GHzを内蔵していた。さらにさかのぼれば、本機の前身であるCompaq Presario notebook R3000シリーズ(米国で発売中・日本では未発売)では、より発熱量の激しいAthlon 64プロセッサー(TDPは89W)を採用しているだけに、TDPが68.4WのCeleron 2.8GHzを搭載する本機にはそれだけ冷却システムに余裕がある。実際、システムに負荷をかけ続けても耳障りなノイズは発生しなかった。これは2基の大型ファンを効率よく回転させていることが寄与している。発熱もキーボードの右側がわずかに熱を帯びる程度ですむ。バッテリーの駆動時間も約3.5時間と必要十分だ。

写真 モバイル用に比べ、発熱の激しいデスクトップPC用のプロセッサーを内蔵しているので冷却システムは大柄だ。そのぶん、システムに高い負荷をかけ続けても2基の大型ファンから耳障りなノイズは発生せず、小さな冷却ファンを高速回転させるよりも静かなのは好印象だ。ただし、底面から吸気を行なうタイプなので設置場所には気を配る必要がある。

ゆとりのある入力環境と豊富な拡張性が魅力

 さて、液晶ディスプレイと並んでノートブックPCの使い勝手を左右する入力環境を見ていこう。大画面のワイド液晶ディスプレイを実装しているだけに、キーボードはキーピッチが19.05mm、ストロークが2.5mmと余裕がある。何よりキーボードの剛性が高く、キーを押し込んでもキーボード面が変にしなったりすることもない。不規則な配列がなく、カーソルキーがほかのキーよりも下にレイアウトされているのもポイントだ。Enterキーの右横にPgUp/PgDnやHomeキーがあるためミスタイプを誘うように見えるが、Enterキーとの間に若干のスペースがあるので、思ったほどの実害はない。

 スクロールゾーンを設けたタッチパッド上部には、タッチパットのオン/オフボタンが並ぶ。オレンジ色のLEDランプが点灯しているとタッチパットが機能し、消灯時はタッチパッドが無効になる。これにより、キー入力時にカーソルが不用意に移動するのが防げる。同社製ノートブックPCのアイデンティティーともいえるおなじみの機能だ。タッチパッドが左右の中央部分にあるため、ホームポジションに手を置くと多少の違和感を覚えるが(タッチパッドが右にずれるので)、慣れてしまえば問題はないだろう。

 左右のクリックボタンには滑り止めのゴムが貼り付けられているのも気が利いている。ALPS製の多機能ドライバーが導入ずみなので、タッチパッドの細かい機能のカスタマイズもお手の物だ。幅広のパームレストとあわせて、入力環境は総じて満足できる仕上がりといえる。

写真 拡張コネクターは従来機と共通で、フロッピードライブからシリアル/パラレルポートまでフル装備といえる内容だ。4ピンのIEEE1394や3基のUSB 2.0といったポートは、アクセスしやすい左右の両側面に並んでいる。ただ、電源やハードディスクのアクセス、無線LANの動作状況を示すランプが前面にあるので確認しづらいのは気になった。

 大柄なボディーを生かした豊富な拡張性も本機のウリで、フロッピードライブの内蔵はもとより、パラレルやシリアルといったレガシーインターフェイスも完備する。3基のUSB 2.0ポートや4ピンのIEEE1394ポートを左右の両側面にバランスよく配置しているのも歓迎したい。細かいところでは、側面をのぞき込まずにケーブルを着脱できるように、キーボード面に拡張コネクターのアイコンがシルク印刷されているのも興味深い。

 左側面奥にはSDメモリーカード/MMC/メモリースティック/メモリースティックPRO/スマートメディアの各メモリーカードに対応したスロットを用意する。変換ケーブルやアダプターを使うことなくデータを直接やりとりできるのが魅力だ。

写真 5つのメモリーカードに対応したスロットを左側面奥に備えている。デジカメなどのデータをやりとりするのに最適だ。コンパクトフラッシュに非対応なのは残念だが、直下にTypeIIのPCカードスロットがあるので大きな問題ではないだろう。

ほどよくバランスのとれた基本スペック

 これまでは使い勝手を中心としたレビューとなったが、肝心の基本スペックはというと、なかなかツボを押さえた内容になっている。

 基幹となるチップセットにはグラフィックス統合型のATI MOBILITY RADEON 9000 IGPを採用。グラフィックスメモリーはメインメモリーから確保するUMA方式(最大128Mバイト)だが、評価機は512Mバイトを搭載しているので安心だ。光学ドライブにはDVD±RW、ハードディスク容量は40Gバイト、そしてIEEE802.11g/b準拠の無線LAN内蔵と、そのほかのパーツも納得のいく構成といえよう。DVD±RWドライブの書き込み速度が4倍速にとどまっていることと、DVD-RAM対応のDVDスーパーマルチドライブでないことは少々残念だが、これはBTOメニューの拡充や次期モデルでのサポートに期待したい。

写真 左側面手前に固定式のDVD±RWドライブを内蔵する。低価格なモデルながら、記録型DVDを内蔵している点に注目したい。DVDオーサリング用にWinDVD Creator 2をバンドルする。コンボドライブやCD-ROMドライブを備えた、より低価格なモデルもラインナップされている。
写真 増設用のメモリースロットは底面中央にあり、ネジを1本外すだけでアクセスできる。9.5mm厚のハードディスクはユニット化されており、ネジを2本回すだけで着脱が可能だ。
写真 もう1基のメモリースロットはキーボード直下にある。標準装備となる256Mバイトのメモリーはこちらのスロットに内蔵されている。すぐそばには、ノースブリッジのATI MOBILITY RADEON 9000 IGPと、IEEE802.11g/b準拠の無線LANモジュールの姿も見える。
写真 約3.5時間の駆動が行なえる8セルのリチウムイオンバッテリーを底面に内蔵する。BTOメニューでは、排他利用となる12セルの大容量バッテリー(15,000円)も追加が可能だ。ACアダプターはサイズがW65×D170×H37.5mm、重量もケーブル込みで約818gと巨大だが、据え置きでの利用が前提なので別段支障はきたさない。

HPならではの優れたプライスパフォーマンスが魅力

 付属ソフトはDVDオーサリング/DV編集用にWinDVD Creator 2、DVD/CDの書き込み用にRecordNow! Version 7、パケットライトのDLA、そしてソフトウェアDVDプレイヤーのWinDVD 4といった実用タイトルが並ぶ。

 価格は評価機の構成で105,000円(キャンペーン適用時)、メインメモリーを256Mバイトに絞れば99,960円と10万円以下で購入が可能だ。バランスのとれた基本スペックと良好な使い勝手、多彩な拡張コネクターといった要素をうまくミックスした、プライスパフォーマンスに秀でた製品として非常に満足感が高い。このあたりは、ノートブックPCの出荷台数が世界No.1を誇る同社のスケールメリットが存分に発揮されているといえそうだ。

 なお、本機には標準で引き取り修理サービスやパーツ保証、テクニカルサポートなどの無償サービス(いずれも1年間)が付いているが、注文時に拡張ハードウェア保証のHP Care Packシリーズを選択すれば、有償でサポート期間を3〜5年に延長できる。出張修理も選べるので、ビジネス用途で使うのであればぜひ導入を検討したいところだ。

 以上、駆け足ではあるがHPならではのこだわりとプライスパフォーマンスを両立したnx9110の魅力を探ってみた。同社はワイド液晶ディスプレイを搭載したノートブックPCを拡充予定とのことなので、今後の動向にも目が離せない。

HP Compaq Business Notebook nx9110のスペック(評価機の場合)

CPUCeleron 2.8GHz
2次キャッシュ128KB(CPU内蔵)
チップセット ATI MOBILITY RADEON 9000 IGP/IXP 200
メモリー *DDR SDRAM 512MB(最大2048MB/PC2700)
メモリースロット 200ピンSO-DIMM×2(空き0)
液晶ディスプレイ15.4インチワイドTFT
解像度 1280×800ドット
ハードディスク40GB(HGST IC25N040ATMR04-0)
光学ドライブ(固定式) 最大4倍速DVD±RWドライブ(<書き込み>DVD+R最大4倍速/DVD+RW最大4倍速/DVD-R最大4倍速/DVD-RW最大4倍速/CD-R24倍速/CD-RW16倍速、<読み出し>DVD-ROM最大8倍速/CD-ROM最大24倍速)
フロッピードライブ3.5インチ3モード(本体内蔵)
グラフィックス チップセット内蔵
グラフィックスメモリーメインメモリーから確保(最大128MB)
サウンド チップセット内蔵(AC'97コーデック)
ネットワーク100BASE-TX/10BASE-T、FAXモデム
無線LAN IEEE802.11g/b準拠(BROADCOM製)
キーボード日本語91キー
キーピッチ/ストローク 19.05mm/2.5mm
ポインティングデバイススクロール機能付きタッチパッド(オン/オフ機能付き)
メモリーカードスロット 5in1メディアスロット、PCカードTypeII×1(CardBus対応)
インターフェイスUSB 2.0×3、IEEE1394×1(4ピン)、パラレル、シリアル、アナログRGB出力、Sビデオ出力、ヘッドフォン、マイクなど
バッテリー仕様 * リチウムイオン(14.8V 4000mAh)
バッテリー駆動時間約3.5時間
バッテリー充電時間 約2〜3時間/約3.5〜8時間(電源オフ/オン時)
サイズW362×D278〜284×H46mm
重量 約3.81kg
OS *Windows XP Home Edition(SP2)
価格 105,000円(3月1日現在の評価機の場合/キャンペーン適用ずみ/税込み)
* = カスタマイズ可能な項目

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