中国の所得別PC事情に泣け山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

» 2005年03月14日 08時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]
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嗚呼、おらが村では超高級品のPC

 中国の有名大都市のPC事情を紹介した。次に地方都市や村落のPC事情はどうだろうか。その前に中国の省、市の説明をしておきたい。

 中国では、○○省(四川省など)、○○市(北京市など上部階層に属さない市)と呼ばれる区分けがされている。これが「日本」「韓国」のような1つの国家に相当する大きさ(面積もさることながら行政組織の規模と階層という意味でも)と思ってほしい。

 この下に○○州、○○市(ここでは広東省広州市というように省に属する市)などがある。これが日本でいうところの「関東地方」「近畿地方」だ。さらにこの下に○○区、○○県、○○市という日本でいう「都道府県」がくる。

 で、この段で紹介するのは、○○省の省都から○○省○○州○○県の県庁が所在する都市までの「地方の中の大都市」における事情だ。

 省都で働く人々の給料はだいたい1〜2万円(800〜1500元)程度ときく。食事は比例して安くなり、チャーハンなら40〜80円(3〜6元)で食べられる。

これが省都レベルの都会。高層ビルがニョキニョキ建っていて、日本でいうところの政令都市といったたたずまい

 このよう物価レベルにおいて、さきほどの「5万円PC」は彼らの給料の3〜4倍になる。月給30万円の日本人の感覚ならば、バリュークラスのPCとは100万円でようやっと買える代物になるのだ。さらに、Windowsを新規で購入するとなれば、Windows XP Home Editionは199ドル(2万1000円)と聞いているので、これも給料以上の価格となる。

 いまさらながら、この記事を書いていて気が付いたのだが、日本のラーメン屋でチャーハンを食べようとしたら、400〜600円ぐらいかと思う。仮に500円とすると、最近発表されたNECの低価格路線PC「ValueOne」が6万円台半ばだというから、それにWindows XP Home Editionを加えた価格はチャーハン130杯分ということになる。

 同じ話を中国でしてみると、PC本体が4000元にチャーハンを5元としても、PCはチャーハン800杯分の価値に相当することになる(しかもそこにはWindows XPの価格は含まれてない)。

 ほとんどの省都には電脳街がある。超大都市のそれよりも規模が大きい電脳街も一部の省都にあるが、やはり、そのほとんどは品揃えが少ない。秋葉原に慣れた筆者が現地の電脳街を何度か巡回してみたものの、意外とひねりのある商品がなく、多くのショップで大差ない商品しか販売していない。ただ、そうはいっても、例えば「ショップブランドPCを買うか、それともメーカーPCを買うか」と選択するだけの種類はある。

本文で「品揃えが少ない」とある地方の電脳街だが、それでもユーザーがものを選べるだけの自由はまだまだ確保されている

省都にあるPCショップ。整然としているけど、なんとなく物寂しいのはなぜ?

 省都における平均的給料が1〜2万円というと、日本的感覚からすると驚いてしまう読者も多いだろう。ところがである。省都からさらに規模の小さい県庁所在地クラスの街ではさらに所得が少なくなる。

 県庁所在地レベルの街になると、そのほとんどで電脳街は存在しない。ただし、PC販売店は複数あり、そこでは、メーカー製PCを中国最大手のLenovoや、そのLenovoに続く「Founder」(方正)、「清華同方」などから選ぶことができる。平均所得が低いためか、このクラスの街で商売を営むPCショップではバリュークラスPCしか見かけない。面白いことに、そんな街でも中学高校の周辺にネットカフェがあって、多くの学生が利用している。

地方都市でもビルは低層ながら建っているが、道幅は狭くなり雑然とした感じになってくる

 県庁所在地以外の小さな町や村になると、一般的な給料は3000円以下(200元)となる。いくら一人っ子政策で我が子が大事といえどPCの購入は無理。昨年Lenovoは4万円弱の低所得者向け超格安PC「家悦円夢」を発売して注目されたが、その最廉価PCをもってしてもPCは年収以上の価値であるのだ。

「思えば遠くにきたものだ」と思わず呟いてしまうだろう村の風景。しかし、PCとまったく関係なさそうなこの村にも「Lenovo」の広告が存在した!

そしてネットカフェはどこでも繁栄しているのであった

 PCショップはあっても1店のみであることが多く、購入しようとしても買えるPCに選択肢はなく、ただPCショップの店員から勧められた国産メーカー製低価格PCか、ショップブランドPCを購入するしかない。それでも、ある程度人口があるところはネットカフェもあり、しっかり客も入っているのがすばらしい。

 さて「後ほど」といいながらなかなか説明しなかった「ネットカフェ繁盛の理由」の話。所得が多い都会でも少ない村でも、利用者である学生たちの目的はチャットやゲームなどの「娯楽」が目的なのは変わらない。

 しかし村のユーザーがネットカフェに集う理由が「PCがないから」と切実であるのに対して、大都市のユーザーは「親が勉強のためにPCを購入したため、家ではゲームができない」というあたりが本音らしい。

 中国のPCユーザーが、とくに地方になればなるほど、PCを購入するのに大変苦労する事情を分かっていただけたと思う。中国において海賊版問題に直面した当事者がよくいう「高すぎる」という理由は、まさにここで紹介した「所得格差」が大きく影響しているともいえる。

 もちろん、高いハードを買う都市住民の資金力があれば当然ソフトも買えるはずで、その理由は言い訳に過ぎない。しかし、国外からただ「コピー天国」と叩くだけでなく、そういった経済と生活状況を知った上で解決策を模索する必要もあるのでは、と筆者は思っていたりもする。

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