そうか! そうだったのか!!──デジハリEXが“目からウロコ”のデッサン入門講座を開講レポート

デジハリEXは、TabletPCを使って本格的なデッサン力を身につける全8回のデッサン入門講座を6月7日より開講する。一足早く同講座のエッセンスに触れる機会を得たので、さっそくその模様をレポートしよう。

» 2005年04月26日 09時30分 公開
[栗田昌宜,ITmedia]

TabletPCでデッサン表現を学ぶ

 「デジタルハリウッド大学エクステンションスクール」(以下、デジハリEX)は、構造改革特別区地域法を利用して2005年4月に開校した4年制の株式会社大学「デジタルハリウッド大学」に併設のエクステンションスクールだ。

 デジハリEXのコンセプトは「学びの専門店街」。株式会社大学に併設されるエクステンションスクールならではの自由な発想で、趣味・教養系の講座だけでなく、ビジネスのキャリアアップに活かせる各種の実践講座や、企業・他スクールとのコラボレーション講座など、バラエティに富んだ幅広いジャンルの講座を展開していく予定だという。

 そのうちの1つとして、6月7日より全8回の構成で開講するのが、「初心者でも安心! TabletPCを使ったデッサン入門講座」だ。同講座は、基礎的な画力を身につけたい人や、TabletPCで絵を描くコツをマスターしたい人を対象としたもの。TabletPCの操作方法を身につけた上で、手や花、動物といった本格的なデッサン表現をTabletPC上で学んでいくという。

 講師を務めるのは、デジハリやデジハリ大学で「デッサン演習」を担当している中村泰清先生。ちなみに中村先生は、デジハリ/デジハリ大学/デジハリ大学院の杉山知之学長が「あの先生に習うと、今までちゃんとデッサンを学んだことのない生徒でも1カ月でとんでもなく絵が上手になる。そんな魔術師のような先生」と評するほどのデッサン表現の教え手である。

“目からウロコ”の方法論

 4月22日、TabletPCを使ったデッサン入門講座の開講に先立って、プレス向けの無料体験セミナーが開催された。

クリエイティブツールとしてのTabletPCの可能性・将来性を力説する杉山知之デジハリ/デジハリ大学/デジハリ大学院学長

 杉山学長や同講座のコラボレーション企業の1社であるマイクロソフトのTabletPC担当シニアプロダクトマネージャーの挨拶に続いて登壇した中村先生は、ペン操作に最適化されたペイント系グラフィックソフト「Alias SketchBook Pro」をインストールしたTabletPCを使ってトンボや羊のデッサンを描く過程をデモンストレーションしながら、同講座で教えるデッサン表現方法のアウトラインを紹介した。

TabletPCを使ってデッサン過程のデモンストレーションを行う中村泰清先生

 中村先生によると、デッサンがうまくなるためには、よく観察することが大切だという。つまり、描く対象をよく見て描くということだ。言葉だけを聞くとさも当たり前のように聞こえるが、実はこれが難しい。なぜなら人間は、成長するにつれて物の姿形に対する概念や観念が固定化されてしまい、見ているようでいて、実はちゃんと見ていないことがよくあるからである。例えばトンボを描いても、あまり似ていないデッサンになってしまうのは、描くのが下手なのではなく、トンボとはこういうもの、という固定観念に引きずられ、ちゃんと見ないで描いてしまっているからだ。

 中村先生は、このような固定観念を打破して物の姿形を再認識するために、TabletPCを使ったデッサンは非常に有効だという。そのための方法論は次のようなものだ。

 まず、描きたい対象物をデジカメで撮影し、TabletPCに取り込んで画面に表示する。こうすることによって、3次元空間にある本物の対象物が2次元空間ではどのように見えるのかを別の目で確認できるようになる。

TabletPCに取り込んだトンボのデジカメ写真

 次に、SketchBook Proのレイヤー機能と透明度調整機能を利用して、トンボのデジカメ写真の輪郭を細い線でゆっくりとなぞっていく。つまり、ペン先で輪郭をなぞるという行為そのものが細部をじっくり観察することにつながり、それによってトンボや茎、葉っぱの姿形を再認識できるようになるわけである。

TabletPCとSketchBook Proを使って輪郭をトレースしたトンボのデジカメ写真

 輪郭が描けたら、次は色を塗っていく。絵を描き慣れていない人は目的の色をカラーパレットから選ぶのも一苦労だが、スポイト機能を使ってデジカメ写真から色をサンプリングすれば、塗りたい色を簡単に選択することが可能だ。

 色を塗るときは、プリントアウトしたデジカメ写真と常に見比べながら、選択した色をその色に合った場所に塗っていく。そうすることによって、色に対する感覚を鍛えることができる。

デジカメ写真と見比べながら色を塗っていく

 ある程度色を塗ったら、次は立体感の表現だ。光の当たり方による明暗を乗せたり、対象物の質感を心の中で擬音化しながらペンを走らせていく。例えば羊の足の硬そうな毛を描く場合は『ガサガサ、ガサガサ』、肩や背中のあたりのなだらかそうな毛を描く場合は『サラサラ』などと音でイメージを膨らませながら描いていく。そうすることによって、物の質感を感覚的に把握できるようになるという。

 ところで、目に写ったものをどう感じるかは、その人の感性に他ならない。ガサガサと感じるか、サラサラと感じるかはその人の感性次第だ。そして、そのようにして描かれたデッサンも、感性の表現に他ならない。

 このようなプロセスを経ることで、物の姿形を再認識し、色に対する感覚を鍛え、自分の感性を表現するすべを身につけることができるという。

完成したトンボのデッサンサンプル

 中村先生の体験セミナーを受講して「そうか! そうだったのか!!」と唸らされたのは、観察力を養うための方法論だ。

 蛇足だが筆者はPC雑誌の編集経験が長く、その中でグラフィックスのハウツー企画を何本も手がけたことがある。その時々に、原稿を書いてくださった本職のイラストレーターに「どうしたらうまく描けるようになるのか、そのコツを書いてほしい」とお願いしたのだが、その答えはいつも決まって「よく見て描くこと」だった(その大前提として「楽しんで描くこと」があるのだが)。そして、その答えを聞くたびごとに、『そうしてるんだけど、うまく描けないんだよなぁ。やっぱり才能なのかなぁ……』などと落胆するのが常だった。

 しかし、今回の体験セミナーを受講してはっきりと分かったのは、「見ているつもりでいたが、実は見ていなかった」という、ごく当たり前の事実である。それが分かっただけでも大収穫だ。「目からウロコが落ちる」とはこういうことを指すのだろう。それをリアルに実感させてくれた体験セミナーだった。


 デジハリEXでは、デッサン入門講座の開講に先立って、一般向けの無料体験セミナーも開催する予定だ。当初は4月26日(火)20:00〜21:30の1回のみだったが、受講希望者が殺到して満席になってしまったため、新たに2回追加開催することを急遽決めたという。

 開催日時は

  • 5月11日(水) 20:00〜21:30
  • 5月18日(水) 20:00〜21:30

で、開催場所や定員など詳細は以下のとおり。

  • 場所:デジハリEX
  • 定員:15名
  • 申し込み/詳細:TEL;0120-001-584 Web;http://www.dhw.co.jp/ex

 興味のある人は、体験セミナーに参加してみてはいかがだろうか。

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