高画質と多機能に磨きをかけた21.3インチUXGA液晶ディスプレイ──ナナオ「FlexScan L997」レビュー(3/3 ページ)

» 2005年05月12日 00時00分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]
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 ピボットツールやグラフィックスカードのドライバで縦表示を行う場合、画面解像度そのものが縦長になるわけではない。それに対しActiveRotation IIでは、ディスプレイを縦位置にすると、画面のプロパティの解像度の設定で1200×1600ドットが選べるようになる。これは縦表示をハードウェアで処理しているからである。

 描画の切り替わりには10秒くらいかかってしまうが、専用ツールの常駐やグラフィックスカードの設定変更、PCの再起動などは必要ない。Macintoshでも同様の機能が得られる。プロの現場ではMacintoshが多く使われているので、これは非常に大きなメリットだ。

 ただし、この動作には対応グラフィックスカード(GPU)が必要だ。RADEON系とGeForce系はほとんどが対応しているが、一部環境では、縦回転のあとにPCを再起動したり、「ActiveRotation II Utility」の使用が必要なケースもある。この辺の詳細はナナオのWebサイトで確認してほしい。なお、グラフィックスカード(GPU)が対応していなくても、L997のOSDでActiveRotation IIを無効にすれば、グラフィックスカードのユーティリティなどでピボット機能と縦表示を利用することが可能だ。

 ちなみに、一時的にでもUXGA以下の解像度で利用する場合は、(1)フルスクリーン拡大、(2)アスペクト比を保持した拡大、(3)等倍表示──の3通りの表示方法が選べる。

 (1)と(2)では、アイコンや文字の輪郭のスムージング強度を5段階で設定できる。(3)の等倍表示は、画面解像度の1ドットと液晶パネルの1ドットを1:1で対応させるモードだ。例えば画面解像度が800×600ドットなら、L997の1600×1200ドットのうち、中央部分の800×600ドットだけを使って表示される(一部の画面解像度は強制的にフルスクリーン拡大になる)。現在の液晶ディスプレイで、これらの表示方法を備える製品は非常に少ない。

2系統の画面をピクチャー・イン・ピクチャーで同時に表示

 「ActiveShot」は、とてもユニークで実用的な機能だ。表示している表(おもて)入力の画面(親画面)内に裏入力の画面(子画面)をピクチャー・イン・ピクチャーで表示できる。子画面のサイズは変更でき、画面全体を縮小表示するか、画面の一部を切り取って表示するかが選べる。後者の場合、切り取る画面エリアを自由に選択することが可能だ。

「ActiveShot」は、UXGAの広い画面を有効活用する機能だ。L997につないだ2台のPCの画面を同時に表示できる。子画面の位置やサイズ、子画面で表示する裏入力の画面エリアを自由に変えられるので、L997 1台だけでもデュアルモニタのように使える。アイデア次第でいろいろと便利な使い方ができそうだ

 活用シーンとしては、次のような使い方が考えられる。親画面でビジネスアプリケーションを使いながら、子画面ではブラウザを開いて情報収集する。Webデザイナーなどは、親画面でWebページを編集しつつ、子画面ではブラウザを開いて表示とレイアウトを同時に確認できる。また、キーボード/マウス切替器と併用し、子画面のPCを親画面からリモート操作するような環境でも便利だろう。シングルモニタでありながら、デュアルモニタのように利用できるのだ。

 ピクチャー・イン・ピクチャー画面の表示/非表示はOSDメニューで行うほか、前面の入力切り替えボタンでも可能だ。入力切り替えボタンを普通に押すと2系統の入力切り替えだが、2秒間押しっぱなしにしていると、ピクチャー・イン・ピクチャー画面の表示/非表示となる。通常の入力切り替え操作も有効で、ピクチャー・イン・ピクチャー画面を表示した状態で入力切り替えボタンを押すと、親画面と子画面が入れ替わる。

よくある質問 「ColorEdgeシリーズ」との違いは?

 L997はFlexScanシリーズのハイエンドに位置するが、EIZOブランドの液晶ディスプレイには、完全にプロ向けの「ColorEdgeシリーズ」というラインナップもある。L997とColorEdgeシリーズの違いに関する問い合わせも多いとのことなので、ナナオの担当者に伺った内容を簡単にまとめておこう。

 ColorEdgeシリーズは、正確な色の表示が大前提だ。RGBのガンマカーブをナナオの技術者が1台ずつ手作業で調整したうえで、顧客に納品される。技術的なところでは、RGBを100%ずつ混ぜると「白」になるという、加法混色(加算混合や加色混合、加色法とも呼ばれる)がきちんと成り立つ。適正な白レベルと黒レベル、正しいニュートラルグレーを出力できるため、カラーの「色」も正確なのだ。

 よって、ディスプレイ単独のカラーマネジメントだけでなく、複数のディスプレイ同士や業務用プリンタで色を合わせたり、複数の出力行程をたどるDTP分野、厳密な色合わせが要求される分野のプロカメラマンなどにはColorEdgeシリーズが向いている。というより、ColorEdgeシリーズでなければダメな場合が多い。

 一方のL997は、従来モデルのL985EXやその他の“汎用”機種に比べれば非常に高精度ではあるものの、ColorEdgeシリーズほど厳密なガンマ調整は行われていない。例えば黒(0%)〜白(100%)のグラデーションを表示すると、わずかながらも両者の精度差が出てしまう。

 もちろん、L997でも安価な製品とは比較にならないクオリティなので、プロの現場でも十分に通用する。ColorEdgeシリーズはとても高価であることから、すべてのPCに導入するのはコスト的な負担が大きい。オペレーターのクライアントPCではL997を使い、出力や納品前の最終チェックをColorEdgeシリーズで行うという運用も現実的だろう。

クリエイターは要チェック、個人でも用途と予算次第で買う価値アリ

 筆者はグラフィックを生業とする「プロ」ではないが、おもにコンシューマー向けのイメージングデバイスの記事執筆が多いことや(その意味ではプロの端くれかもしれない)、以前から静止画を趣味にしていることもあって、ディスプレイ環境にはそれなりに気を配っている。

 きちんと調整したL997なら安心して「色の作業」ができるし、スーパーIPSパネルの優しい発色は長時間の作業でも目が疲れにくい。UXGAの作業効率と快適さも、SXGA以下とは雲泥の差だ。特に、PhotoshopやIllustratorといった、ツールパレットをたくさん開くアプリケーションではっきりと実感できる。

 微妙なのは、実売で20万円弱という価格だ(最安値では17万円台もある)。高い安いの評価は読者諸氏にお任せするが、L985EXの最安値が25万円弱だったことを考えれば、かなり導入しやすくなったのではないだろうか。個人ユーザーでも、静止画の表示品質を最重視する人で予算があるなら、文句なしにオススメできる。

 また、画面サイズが20.1インチと少し小さくなるが、UXGAモデルの「FlexScan L887」も要注目だ。

 液晶パネルがVA方式なので厳密な色調表示はL997に一歩及ばず、ActiveShotとActiveRotation IIを持たないものの(ディスプレイの縦回転は可能)、L997と同じASICを使って内部ガンマ補正を14ビット精度で演算しているため、シャドウ側の階調表現力が豊かだ。実売価格も約15万円前後で、L997に比べるとぐっと身近である。予算的に厳しい人やビジネスアプリケーションが中心のユーザーは、L887をチョイスするとよいだろう。

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提供:株式会社 ナナオ
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年3月31日