MITメディアラボ、2006年には100ドルのノートPCを実現へ

» 2005年05月17日 15時38分 公開
[IDG Japan]
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 わずか100ドルのノートPCを開発し、配布するという、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のMedia Labによる野心的な計画は来月、初めての受注により、大きな前進を果たすことになりそうだ。

 MIT Media Lab所長のニコラス・ネグロポンテ氏は5月16日、東京で取材に応え、本格的なパイロットプロジェクトの始動前に、5〜6カ国からトータルで600万台のマシンの受注を見込める見通しを明らかにした。このプロジェクトの基本的な目標は、各国の政府を通じて、すべての子供たちにノートPCを提供するというもの。

 ネグロポンテ氏は、約80カ国からの代表者が参加する世界情報社会サミット(WSIS)のテーマ別会合「東京ユビキタス会議」において同プロジェクトを促進すべく、日本に滞在中だ。

 同氏によれば、多くの国々には、現行の教育システムを通じて子供たちの可能性をフルに実現できるような手段や能力が欠けている。だが同氏の構想では、すべての子供たちにノートPCを提供し、そうした子供たちの住む町や村にブロードバンド接続を配備し、デジタル素材を扱うための授業計画を組み合わせることで、子供たちが受ける教育、ひいては子供たちの将来の展望を改善できる。

 ネグロポンテ氏によれば、既に各国政府との間でパイロットプロジェクトに関する話し合いが進んでおり、中国が300万台、ブラジルが100万台のノートPCを購入する見通し。このほかにも、さらに3カ国(アフリカ、中東、東南アジアでそれぞれ1カ国ずつ)が注文を予定しているほか、米国でも、マシンが生産に入る前に幾らかの供給が予定されているという。マシンはうまくいけば2006年の生産が予定されている。

 ノートPCの通常の販売モデルでは、流通、販促、利益のために多くの資金が必要となるが、ネグロポンテ氏は販売モデルを簡略化し、デバイス自体をリエンジニアリングすることによって、100ドルという価格も実現可能だと考えている。

 マシンは店舗では販売されない。The $100 Laptop(仮称)と呼ばれる会社が直接、ノートPCを中央省庁に販売し、利益は追求されない。現行ノートPCの価格の約半分は、マーケティング、販売、流通チャンネル、利益のためのもので、こうした要素を排除すればコストを大幅に節減できる、とネグロポンテ氏は説明している。

 ノートPCの価格の残り半分は、部品や製造のコストだ。ネグロポンテ氏はこうしたコストの節約も計画している。残り半分のコストのうち約3分の2はディスプレイパネルと付属のバックライトにかかるものだが、ネグロポンテ氏のノートPCにはトータルで約30ドルのプロジェクション方式が採用される。

 「残りは、信頼性の低い過重なOSにかかるコストだ。それを排除して、軽量の小さなOSを採用すれば、多くのことを実現できる」とネグロポンテ氏。

 このノートPCにはLinuxが採用される。どのディストリビューションになるかは、まだ決まっていないが、同プロジェクトでは現在、Red Hatのほか、北京のRed Flag Softwareと本格的な話し合いを進めているところだという。

 第1世代のマシンは、同プロジェクトの主要な支援企業の1社であるAMDの500MHzプロセッサをベースとし、256Mバイトのメインメモリのほか、HDDの代わりに1Gバイトのフラッシュメモリ、無線LANを搭載する予定。マシンはほかのマシンと自動的に接続してメッシュネットワークを構成し、通信やインターネット接続共有をサポートし、VoIPアプリケーションのSkypeなどのソフトも実行できる。

 ネグロポンテ氏によれば、計画は既に十分進展しており、第2世代、第3世代のマシンもそれぞれ2007年と2008年に投入が予定されている。同氏がデモを披露した第3世代マシンのプロトタイプは、E Inkのプラスティックフィルムディスプレイをベースとしたタブレット型だった。このマシンは、回路基板の製造に最新の印刷技術を用いることで、さらなるコスト削減を実現できるだろうと同氏は説明する。

 現在の計画では、最初の600万台のマシンは中国で製造され、その後、各地に製造センターが設立される予定。ネグロポンテ氏によれば、ブラジルも自国や南米の市場向けのノートPC製造工場の建設に興味を示している。

 このプロジェクトが「年間1億〜2億台のノートPCを製造する」という最終目標を達成することになれば、製造能力のさらなる強化が必要となるだろう。IDCの最近の調査レポートによれば、世界PC市場では2004年に1億7800万台のマシンが販売されている。

 このプロジェクトはネグロポンテ氏のほか、MIT研究員のジョー・ジェイコブソン氏とシーモア・パパート氏が先導している。ジェイコブソン氏はE Ink技術を開発した人物、パパート氏は子供の教育の専門家だ。プロジェクトのホームページはhttp://laptop.media.mit.edu

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