光沢液晶 vs. ノングレア液晶──それぞれのメリット/デメリットを理解しようITmedia流液晶ディスプレイ講座:第1回(1/2 ページ)

液晶ディスプレイを購入しようと思ったとき、どんなところをチェックするだろうか。画質、スペック、デザイン、価格……。比較すべきポイントはたくさんある。せっかく単独の製品を買うのだから、スペック数値だけでなく、実用面も十分考慮して選びたいところだ。今回から数回にわたって、液晶ディスプレイの賢い選び方を解説していく。第1回は「光沢液晶」対「ノングレア液晶」だ。

» 2005年05月31日 19時00分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]

光沢液晶とノングレア液晶のメリット/デメリット

 ここでいう「光沢液晶」と「ノングレア液晶」とは、液晶画面の表面処理を指す。

 これまで液晶ディスプレイといえばノングレア液晶だったが、ここ最近、メーカー製PC(デスクトップPCと液晶ディスプレイのセットモデル、およびノートPCの液晶ディスプレイ)を中心に光沢液晶が急増している。メーカー製PCにいたっては、個人向けモデルの大部分が光沢液晶だ。単独製品ではまだノングレア液晶が多いものの、光沢液晶の割合も徐々に増加中だ。

 光沢液晶とノングレア液晶の大きな違いは、画面の見え方に集約される。

 光沢液晶の特徴は、画面がツヤツヤピカピカであることだ。画面の色が鮮やかで、黒が引き締まってコントラストが高い。静止画や映像がとてもキレイに見えるのがメリットで、メーカー製PCで広く採用されているのもうなずける。

 その一方で、外光の映り込みが大きいというデメリットもある。自分の姿や背景が画面にはっきりと映り、蛍光灯などの光もそれなりに強く反射する。程度の差はあるが、目が疲れやすいのは確かで、映り込みが気になって画面に集中できないという声も聞こえてくる。

 また、画面の表面にキズがつきやすいため、掃除にも注意が必要だ。画面を一拭きするとき、キズに気を付けるのはもちろん、化学クリーナーを使うと画面の表面が変質する危険性もある。

光沢液晶の画面の見え方。色が鮮やかで黒が引き締まって見えるが(左)、蛍光灯などの外光が強く映り込んでしまう(右)
注:ナナオ製液晶ディスプレイに光沢処理を施した同社製液晶保護パネルを装着し、光沢液晶の画面の見え方を擬似的に再現しています。

 対してノングレア液晶のメリットは、外光の映り込みが少なく、長時間の使用でも目への負担が軽いことだ。一般的なオフィスや官公庁、教育現場などではノングレア液晶が圧倒的に多い。画面の表面もキズがつきにくく、柔らかい布なら少し強めに拭いても大丈夫だ(微細な繊維で作られた無薬品のOAクリーナーが効果的)。

 一方、ノングレア液晶のデメリットは、光沢液晶に比べて静止画や映像の発色が地味なことと、画面がやや白っぽく見える場合があることだ。特に後者は、発色の鮮やかさや見かけ上のコントラストを落とす原因でもあり、画質面で「ノングレア液晶<光沢液晶」というイメージを抱かせる要因になっている。

ノングレア液晶の画面の見え方。上の光沢液晶と同じ条件で撮影しているが、蛍光灯の映り込みはない(右)。ただし、蛍光灯の位置がやや白っぽくなっている

光沢液晶とノングレア液晶の仕組み

 ここからは、少し技術的な仕組みと「色」の話をしていこう。仕組みを知ることで、先述してきたメリットとデメリットをよりよく理解できるはずだ。

 光沢液晶か、ノングレア液晶かを問わず、液晶パネルの表面には偏光フィルタが配置されている。この偏光フィルタの表面処理を「グレア(glare:ぎらぎらする光)」にすれば光沢液晶、「ノングレア(non-glare)」にすればノングレア液晶となる。

 グレアとノングレアの違いは、先にノングレアを知るほうが理解しやすい。ノングレアは、偏光フィルタの表面を微細な凹凸に加工している。凹凸の具合で画面の見え方が違ってくるので、デバイスメーカーの重要なノウハウとなっている部分だ。

 ノングレア液晶の表面に当たる外光は、表面の凹凸で乱反射(拡散)するため、ユーザーの目に届きにくくなって映り込みが少なく見える。その反面、液晶パネルのバックライトからの光も、画面表面の凹凸でわずかに乱反射してしまう。このため、外光の乱反射に加え、液晶パネルからの光がユーザーの目に届く前に拡散するため、「黒」が多少なりとも明るくなり、シャドウの浮き上がりや画面の白っぽさにつながるわけだ。

ノングレア液晶の表面構造。表面が凹凸しているため映り込みが少なくなるが、外光および液晶パネルの光の乱反射により、画面が白っぽくなってしまう

 ただし、最近のノングレア液晶は、液晶パネルのRGBフィルタやシャッタ開口率などの改善によって、引き締まった黒の表現と全体的な白っぽさの抑制がかなり進んでいる。


提供:株式会社 ナナオ
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年3月31日