昨年の夏モデルからシリーズに加わったVAIOのデスクトップシリーズtype R。真っ黒で高級感溢れる吹き抜け式の筐体と、ヒートパイプを使った独特な冷却システムを採用した人気モデルだ。
2005年の春モデルでも外観の変更は行われず、CPUやHDDなどの主要パーツがアップグレードされただけにとどまった。そして、デビューから1年を経て2005年夏モデルの登場となったが、今回も外観に関してはまったく手を入れず、構成パーツの変更にとどまっている。それだけよくできたケースであると、ソニーの開発陣は自信を持っているのだろう。
今回登場したVAIO type Rが搭載するCPUは、インテルのメインストリーム向けCPUとしては初めてのデュアルコア構成となるPentium Dである。プロセッサナンバーは830で、動作クロックは3GHzに過ぎない。これまで「SmithField」という開発コード名で知られてきたCPUで、PrescottコアのPentium 4と同じ90ナノメートルプロセスで製造されている。
デュアルコア構成のインテル製CPUには、Pentium Extreme Editionもあるが、こちらは同じコンシューマー市場向けでもハイエンドユーザーをターゲットにしたモデル。Pentium Dとの違いはハイパー・スレッディング・テクノロジをサポートしていることである。そのため、OSから見える(論理的な)CPUの数は、Pentium Extreme Editionが2コア×2スレッドの4CPUとなるのに対し、Pentium Dでは2コアのみの2CPUとなる。
OSから見れば従来のPentium 4と同じ「2つのCPU」と認識されるPentium Dであるが、こちらは物理的に2つのCPUを搭載している。そういう意味で、夏モデルのVAIO type Rによって、これまでの擬似デュアルプロセッサ的シングルコアとは違う「本物のマルチCPU」を搭載したVAIOがはじめて登場したことになる。
VAIO type R(これは従来モデルからであるが)の最大の特徴はその筐体にある。上下の2ブロックに分かれた構造は、それまでのメーカー製PCの常識を覆すものであった。
上下に分かれたブロックの間にあるエアインテークは、外気を熱源の近くから取り込むために採用された仕組み。上のブロックは、CPUから排出された熱を冷却する大型のクーラーユニットと光学ドライブのみが納められている。
下のブロックには、CPUや電源ユニット、マザーボード、HDDなどのメインパーツ、つまり熱源となるパーツが収められている。エアインテークからは、クーラーユニットと電源ユニットに直接外気が吸い込まれるため、効率的に冷却できる。
CPUの熱は、4本の太いヒートパイプによって、下のブロックから上のブロックにあるクーラーユニットに誘導される。こうすることで、CPUの排熱が下のブロックに収納されているパーツの温度を上げてしまうことを避けている。なお、下のブロックにある、CPU以外のパーツから発生した熱は、電源ユニットのファンによって排出される。
注目したいのが、クーラーユニット及び電源ユニットに組み込まれたファンの低い回転数だ。Windowsで動作する監視ツールがないためBIOSで確認しているが、クーラーユニットのファンが840rpm、電源ユニットのファンは1288rpm、そしてHDDを冷却するために下のブロックに取り付けられているファンも1145rpmと、冷却ファンとしてはかなり低く設定されている。
このような低い回転数でもCPUの温度は40℃〜45℃程度に収まっている。大口径の12センチファンを使用していることもあって、冷却の効果は十分なようである。ベンチマークなどで負荷をかけても、ファンから発生する音量が高くなることもなく、静かな状態で運用できた。
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