Appleは今度こそ賭けに勝てそうだ

» 2005年06月09日 13時47分 公開
[David Coursey,eWEEK]
eWEEK

 Borlandの創設者フィリップ・カーン氏は、かつて私に素晴らしいアドバイスをくれた――「顧客に考え直す理由を与えるな」と。

 それはなぜか? 顧客が購入決定を考え直さざるを得なくなったとき、彼らの一部はほかのものを買うからだ。

 Appleはそのいい例だ。同社は過去に大きなプラットフォームの変更を行ったとき――Apple IIからMacintoshへ、Motorola 68000プロセッサからPowerPCへ、OS 9からUNIXベースのOS Xへ――その余波で常に市場シェアを失ってきた。

 では、なぜAppleはまた自分に銃を向けるようなことをするのだろうか? 今度は銃弾をよけられるとスティーブ・ジョブズ氏が思っているからだ。さらにジョブズ氏は、Intelとの新しい関係が、Appleハードに新たなチャンスをたくさん作り出してくれると当てにしているようだ。特に大きいのは、顧客のひざに焼けこげを作らないポータブルマシンを構築するチャンスだ。これはIBMのPowerPC G5プロセッサではできないことだ。

 重要なのは、Appleが「Intel inside」となることの重要性を軽視していることだ。結局、実際には何が変わるのだろうか? Appleは5年ほど前からMac OS XをIntelプロセッサ向けにコンパイルしてきたため、同OSはおそらく、大した変更なしで新しいプロセッサに対応するだろう。

 Appleは「Mactel」の発表において、同社提供のツールで作ったMac OS Xアプリケーションを、いかに簡単にIntelプロセッサに移植できるかを示した。彼らは現行のアプリケーションをすぐに再コンパイルして、私たちが既に持っているアプリケーションが未来のIntelベースハードで動くようにする方法を披露した。

 Appleのマーケティング責任者フィル・シラー氏は、今回の発表は、Mac OSを走らせるIntelマシンに関するものではなく、Intelプロセッサを使ったMacに関するものだと説明した。この違いは重要だ。この説明はMacクローンを排除し、おそらくはMac OS XとWindowsの両方を搭載して、起動時に選択できるデュアルブートマシンも排除しているように見えるからだ。

 AppleがIntelに移行するからと言って、将来のMacが将来のPCと全く同じプロセッサをベースに構築されるという意味にはならない。この戦略により、AppleはIntelに移行すると同時に、自社のハードプラットフォームを完全にコントロールし続けることができる。

 この移行がAppleの計画通りに進めば、IBMからIntelへの乗り換えはMacユーザーにほとんど気づかれずに進むかもしれない。もちろん、まだMetrowerksのコーディングツールで開発されたプログラムという問題がある。Appleは最近このツールをけなしているようだが、それはその方が都合がいいからだろう。Metrowerksは常にAppleにとって良い製品を出していた――今にして思えば、良すぎたのだろう――だけに、これは残念なことだ。これらアプリケーションの移植がどれだけ大変なことになるのかはまだ分からない。

 そこでAppleは賢明にも、ハイエンドハードのIntelプロセッサへの移行を2007年まで先送りにする予定だ。これにより、多くのサードパーティーの開発者にとって、アプリケーションを書き直すための時間が増えることになる。

 一部の開発者はIntelへの移行を、気まぐれなAppleに別れを告げる口実として利用するだろう。Appleはサードパーティーの開発者を支援することと同じくらい、彼らの首を切ることにも関心を持っているようだ。MacアプリケーションのWindows版を提供している一部の企業は、かなり前からAppleよりもMicrosoftを後押ししている。

 少なくとも主要ソフト企業1社が、顧客ができるだけ簡単にWindowsに移行できるようにする移行戦略を発表しても意外ではない。

 私としては、この予測にもう少し踏み込みたい気分だが、あまり飛躍しすぎるのも望むところではない。そこで、こうしたことが起きるとは言わず、Macソフトベンダーは今あらゆる選択肢を検討しているに違いないとだけ言っておこう。とは言え、AdobeもMicrosoftもIntelプロセッサへの乗り換えを支持するという声明文を出している。

 コンシューマー向けMacは、およそ1年以内にIntelプロセッサへの移行が始まることになっている。これは可能だ。これらモデルで使われているソフトの大半は、Apple自身が開発したものだというのがその理由の1つだ。そうしたコンシューマー向けソフトは、おそらく、サードパーティーのビジネスアプリケーションよりも短期間でIntelプロセッサに移植できるだろう。

 IBMから「Intel inside」への乗り換えは、Appleの顧客がMacプラットフォームへのコミットメントを考え直すのに十分な出来事だろうか? その通りだ。

 しかしこの移行によって、Appleにとってプロセッサの選択肢がかなり増え、それがハード価格の低下につながり、またAppleが次世代メディアハブ、そして――あえて言うと――新しいコンシューマーデバイスにIntel技術を採用できることにもなる。

 Intelへの移行は、Appleの製品ラインの大きな改善という結果をもたらすと私は確信している。これはMacユーザーにプラットフォーム選択を考え直させるよりも、Windowsユーザーに同じことを考え直させることの方が多いだろう。そうなれば、Appleは初めて大規模な移行で実際に市場シェアを拡大するかもしれない。

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