「日本のホワイトカラーはね、損をしているんですよ」
ある企業幹部との昼食会で、唐突に言われた。
「パソコンで何かを書こうとする時、日本語だと『変換』しなければならない。これだけで英文でタイプしている欧米人より、確実に時間を取られているんですよ。その上、英語はできるのに、日本語で文章を書かせると、からきしダメな人間が増えてましてね。このあたりの生産性マイナス分を10%と仮定しても、日本のホワイトカラー全体で合計すると、欧米人よりかなり不利でしょうね」
ちなみに日本のホワイトカラー人口は約3000万人。日本語入力や文章作成のロスタイムが8時間労働の10%と仮定すると、1日あたり合計2400万時間が霧消していることになる。試算してみたら、けっこうな数字ではないか。
もちろん、「英語と日本語のどちらが効率がいい言語か」というのは、こんな単純計算では比較できない。それに日本のビジネスシーンから日本語をなくすというのは、現実問題として不可能である。しかし、確実に言えるのは、“日本語環境”がホワイトカラーの生産性や労働時間に与える影響が意外と大きい、ということだ。
ビジネスパーソンの日本語力低下も無視できない問題だ。
筆者はジャーナリストをしながら、IT企業の客員研究員も行っている。前者の肩書きが“日本語のプロ”と見られるせいか、20代〜30代前半のビジネスパーソンに、よく「文章を書くのが苦手で……」とこっそり相談される。また、彼らの世代を中心に、日本語の語彙が乏しかったり、誤字・脱字の多い文書やメールを書いている人を見かけることも少なくない。
今年5月に日本能率協会総合研究所が発表した調査によると、ビジネスパーソンの習い事の人気トップは「語学関係」、次点が「情報・PC関係」だという。確かに英語やPCを使いこなし、饒舌にプレゼンをするビジネスパーソンは増えている。だが、その一方で、日本語力、特に文章力が弱い層が増えているのかもしれない。
しかし、よくよく考えれば、「日本語力」を養うのは大変だ。
母国語ゆえにスクールが数多くあるというワケでなく、社内研修でも通り一遍の「新入社員研修コース」でビジネス文書の書き方を習う程度というケースが多い。筆者は先輩記者から日本語のイロハを叩き込まれたが、これはまあ、出版業界という特殊な環境だからこそである。
多忙なビジネスパーソンが、てっとり早く日本語力を身につけたい。そんな時こそ、人類が生み出した“外部脳”、PCを活用するといいだろう。
私が勧めているのが、ジャストシステムが作る老舗のワードプロセッサ「一太郎」と、そこに含まれる日本語入力ソフト(IME)「ATOK」の活用である。
一太郎シリーズは今年がちょうど20周年。ジャストシステムには、それだけの歳月をかけて“日本語”を研究し、一太郎/ATOKシリーズとして商品化、研鑽を積んできた実績がある。いわば、日本語の大家である。
そのジャストシステムが、最近の一太郎/ATOKシリーズで注力するのが「日本語力のサポート」だ。ユーザーの入力を正確に変換するだけでなく、誤字・脱字や敬語の誤りを指摘し、同音異義語で迷ったら正しい使い方を教えてくれるのだ。
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