AMD vs. Intel訴訟、Appleには影響せず

» 2005年06月30日 20時51分 公開
[Daniel Drew Turner,eWEEK]
eWEEK

 業界アナリストらは、Advanced Micro Devices(AMD)が最近、Intelを相手取って起こした訴訟がIntelとAppleの関係に影響を与えるとの見方を否定している。Appleは先ごろ、将来のMacintoshコンピュータにIntelプロセッサを採用するという計画を発表した

 AMDは6月27日、Intelが米国独禁法(シャーマン法、クレイトン法)およびカリフォルニア州企業・職業法に違反しているとして、同社をデラウェア州連邦地裁に提訴した。訴状によると、IntelはPCメーカーに圧力をかけてAMDプロセッサベースの製品を排除しようとしたり、AMDチップを搭載したPCよりもIntelベースのPCを優先的に取り扱うよう小売店に影響を与えるなどの反競争的行為を行ったとしている。

 今年3月には、日本の公正取引委員会がIntelに対して、独占禁止法違反で排除勧告を行っている。AMDプロセッサの採用を制限あるいは中止することに合意した日本のPCメーカー5社にリベートを提供するなどの違反行為を行ったというのが理由だ。

 Intelは排除勧告を受け、商慣行の一部を変更することを公式に表明したが、同社の広報担当のチャック・マロイ氏によると、Intelは同社に対する申し立ての大部分を否定するとともに、公正取引委員会による法律の解釈に異議を唱えたという。

 カリフォルニア州キャンベルにあるCreative Strategiesのティム・バハリン社長によると、AMDがIntelを提訴したことによる「Appleへの影響はまったく見られない」という。

 「AMDが持っているという証拠の本質に目を向けることが重要だ」とバハリン氏は話す。

 バハリン氏によると、今回の提訴は日本での排除勧告の結果がベースになっているという。公取委の調査では、ある企業はプロセッサをすべてIntelから購入することに同意しなければ、契約を解除すると言われたことや、別の企業は自社のコンピュータ製品ラインでAMDプロセッサを一切採用しないという条件でIntelからリベートを提供されたことが明らかになった。また、AMDプロセッサの購入量を全体の10%以下に抑えなければ、価格や供給で不利な扱いを受けると圧力をかけられた企業もあったという(関連記事)

 バハリン氏は、AMDにとって今回の提訴は「極めてリスクが大きい」と指摘する。「問題は、彼らがどうやってそれを立証できるのかということだ。富士通の重役を呼んで証言してもらうのだろうか」と同氏。

 コネティカット州スタンフォードに本社を置くGartnerのアナリスト、マーティン・レイノルズ氏も、「この訴訟はAppleに何の影響も与えない」と話している。

 「しかし、AppleがなぜAMDではなくIntelを選んだのかという疑問が改めて浮上したのは確かだ。これまで両社の間には取引関係はないため、リベートに基づく強制の可能性はない。AMDとIntelが提示した事実に基づいてAppleが判断を下したとも考えられる」(同氏)

 ニューヨーク州シーフォードにあるEnvisioneering Groupのアナリスト、ピーター・グラスコウスキー氏も、「現時点においても、IntelベースのMacが投入される来年においても、Appleへの影響はほとんどないだろう」と述べている。

 「Appleは、Intelと契約を結んだかどうかは明らかにしていない」とグラスコウスキー氏は指摘する。もし両社の間でメモリコントローラなどのコアロジックチップの開発に関して合意が存在するのであれば、AppleがAMDのプロセッサを検討する意味はないという。カスタムデザインのIntel製コントローラとAMDプロセッサと組み合わせても、うまく動作しない可能性が高いというのが理由だ。

 しかしグラスコウスキー氏によると、そういった合意が存在しなければ、Appleがプロセッサを探し回る可能性があるという。「Appleは歴史的に専用のオンボードチップを自社で設計・開発してきたが、Intelと共同でこれらのコンポーネントを設計・生産する可能性もある」と同氏は指摘する。

 「現在、証拠開示の段階を迎えている今回の訴訟が裁判に進むことになれば、Intelは圧力だとされる行為を慎まざるを得ないだろう。その場合、Intelはチップの価格だけで勝負しなくてはならず、企業の製品ラインでIntelチップだけを採用するという約束にチップ価格をリンクするという戦略に頼ることはできないだろう」とグラスコウスキー氏は話す。

 「AppleがIntelと共同でカスタムチップデザインを開発するのであれば、彼らはAMDと話し合う気はないだろう。しかしAppleのスティーブ・ジョブズCEOは、これまで何度も“選択肢”というアイデアを公式の場で強調してきた」(同氏)

 Appleはこの件についてコメントを避けている。

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