AMD対Intel訴訟のポイント

» 2005年07月11日 21時20分 公開
[IDG Japan]
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 巨大なx86プロセッサ市場でIntelの後塵を拝してきたAMDが、この強敵を法廷に引きずり出そうとしている。AMDは先月末に起こした訴訟で、IntelがシステムベンダーによるAMD製品の採用を阻止しようと脅し、強要、資金提供などの独禁法違反行為に及んだと主張している。「AMDの市場シェアは、技術的リーダーシップに見合っていない。Intelの不正行為がその原因だ」――。6月27日、AMDがデラウェアの米連邦地裁に提出した48ページの訴状にはそう記されている。AMDは公判を請求しており、来年末までにこの訴訟を陪審に持ち込むことを目指している。この訴訟をめぐる主な疑問に答えるべく、業界識者と法律の専門家から集めた見方をまとめてみよう。

なぜAMDはIntelを訴えているのか

 AMDは32/64ビットのOpteronプロセッサ、およびデスクトップ用のAthlon 64プロセッサによって技術革新を進めたが、x86プロセッサ市場における同社のシェアはごくわずかにとどまっている。一方、調査会社IDCの調べでは、1〜3月期のx86市場は58億ドル規模で、このうち90%をIntelが占めている。AMDによれば、Intelはこうした市場独占力を乱用して競争を阻害し、結果的に技術革新を抑制し、最終的に高い価格と選択肢の欠如という状態によって消費者に損害を与えている。訴状には、Intelの経済圧力によってAMD製品の採用を断念、もしくは購入を制限するよう強要されたとAMDが見なすメーカー38社がリストアップされている。例えば大手のシステムベンダーの中で唯一AMDのプロセッサを採用していないDellについて、訴状には次のように記されている。「AMDからの製品購入についての話し合いの席で、Dellの幹部らは、AMDとの価格交渉においてはIntelから報復を受けることを念頭に置いた価格設定を求めざるを得ない、と率直に認めている」

なぜこのタイミングで提訴したか

 AMDがIntelに対して法的な動きに出たのは今回が初めてではない。実際、AMDは1991年にも同様の申し立てを行った。この訴訟は1995年、各国で係争中の訴訟すべてで和解するという両社合意に基づいて解決された。しかし、業界の専門家の一部は、今回の訴訟ではAMDはもっと強い立場にあると指摘している。1990年代半ばには明らかに劣勢だったAMDだが、32/64ビットのOpteronプロセッサ、Athlon 64プロセッサ、そしてデュアルコア技術の成功から、より手ごわい競争相手となった。また、日本の公正取引委員会が3月、Intelの商慣行に反競争的振る舞いがあったと判断したことは、米国でのAMDの申し立てに重みを与えているといえるかもしれない。

この訴訟の行方はネットワークおよびITの専門家にどんな意味を持つか

 業界の専門家らは、結論が出るのはかなり先になるだろうと注意を促している。結論が出たとき、それがエンドユーザーにどんな影響を与えるかは定かではない。AMDが勝訴した場合、それはIT購入者側の企業にとって朗報となるだろう。AMDは、Intelの値引き慣行となれ合いの取引が競争を阻害し、市場にある製品が高値の独占価格に保たれていると主張している。AMDが勝訴すれば、選択の自由が広がり、価格も下がるだろう。一方、業界観測筋の一部は、IntelはWindowsを走らせている同社のプロセッサこそが、PCとサーバのコモディティ化を引き起こした――ベンダー各社が提供する製品がどれも似たり寄ったりのため、価格で差別化せざるを得なくなった――と主張するかもしれないと指摘している。

PCやサーバのメーカーにとってはどんな意味を持つか

 Intelが違法行為に及んだとの判断が下った場合、それはIntelの顧客にとって、なれ合いの取引に終止符が打たれることを意味するのかもしれない。そしてこのことは、少なくとも短期的には、PCメーカーの収益に打撃を及ぼすことになるだろう。しかし、AMDによると長期的には、同社の勝訴によって真の競争市場を復活し、その結果、マイクロプロセッサの価格は下がるだろうという。

AMDの主張の立証はどの程度困難か

 AMDが提示する証拠の大部分はIntelのサードパーティーとの取引に関係するものだ。このためAMDは、法廷での証拠発見プロセスを通じてIntelと取引をした人物を特定し、宣誓供述を取り、反競争的行為を裏付ける文書を入手しなければならない。AMDは、こうした証人の証言内容をコントロールすることはほとんどできない。だがこの領域で、AMDは既に白星を1つ上げている。AMDは今週、同社が連邦地裁に出した、コンピュータ関連30数社に対する文書保全の要求が通ったことを明らかにしている(7月6日の記事参照)。

(By Jennifer Mears, Network World US)

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