水冷方式は、高性能化に伴って著しく発熱が高まってしまったCPUを効率的に冷却しつつ、十分な静音性も確保できる冷却システムとして、現在ではかなり一般化してきた印象を受ける。
しかし、まだ水冷方式が一般的ではなかった頃からいち早く採用し、冷却能力と静音性を高いレベルで実現したことで大きな話題となったパソコンが存在していた。それがNECの「VALUESTAR FZ」シリーズや「VALUESTAR TX」シリーズである。双方とも、その当時のハイエンドスペックを詰め込みつつ、高負荷時でも約30dBほどという非常に高い静音性を実現していた。
そしてこのたび、そのVALUESTAR FZ/TXシリーズの思想を受け継ぎつつ、幅115ミリというスリム筐体を採用したマシンが登場した。それが「VALUESTAR G タイプC」(以下、タイプC)である。
水冷方式は、ヒートシンクとファンを利用した一般的な冷却システムである空冷方式と比較して、効率よく放熱しつつ、静音性も容易に高められるという特徴がある。
空冷方式では、空気を利用してCPUをその場で冷却する。このため、そのままだと熱せられた空気がケース内部に充満してしまうため、CPU用やケース用などたくさんのファンを取り付けてケース内部をしっかりと換気しなくてはならない。このため、静音性を高めることはかなり難しい。
それに対し水冷方式では、CPUの発熱を液体を利用して別の場所に運んで効率よく放熱できる。
自動車のエンジンの冷却システムは、空気の流れを確保しやすい場所にラジエータを設置し、液体を利用してエンジンの熱をラジエータまで運んで冷却しているが、パソコンの水冷システムもそれと全く同じものと考えてよい。
ラジエータをケース外部やケースの排気用ファンの近くに設置することによって、空冷用のファンをたくさん取り付けなくても、ケース内部の換気とCPUの冷却を効率よく行える。また、ラジエータの構造によっては、非常に少ない風量でも高い冷却性能を発揮できるため、優れた冷却能力を確保しつつ静音性を高めるということが容易に実現できるのだ。
ただし水冷方式は、冷却用の液体を循環させるポンプや液体を貯蔵するタンク、放熱用のラジエータなど必要となるパーツが多く、設置にはある程度大きなスペースを確保しなければならない。このため、小型筐体のマシンには採用しづらかった。
しかし、今回登場したタイプCでは、ラジエータとポンプ、タンクを一体化したコンパクトな水冷システムを新規に開発することによって、幅115ミリというスリム筐体に水冷システムを内蔵させることに初めて成功。コンパクトな水冷システムとはいえ、ラジエータ冷却用に8センチファンを2個搭載しており、高い冷却性能を実現している。
しかもそのファンは低回転の静音ファンなので、静音性も申し分ない。事実、ハイエンドクラスのCPUを搭載しつつ、高負荷時で約30dBという非常に高い静音性を実現している。
実際に利用してみたが、負荷の高いアプリケーションを実行しているときでも、本体に耳を近づけなければ動作音を感じないほど。また、低負荷時にはほとんど騒音が聞こえなくなり、HDDのアクセス音の方がはるかにうるさく感じられるほどだった。
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