IDF 2005 Fallの基調講演の記事でも紹介されているように、インテルのChannel Platforms Group(CPG)は、これから経済は発展していくと見られる途上国における市場に力を向けていくとアピールしている。その“橋頭堡”となるのが、インドのバンガロール、ブラジルのサンパウロ、エジプトのカイロ、中国の上海という、インテルが拠点を構える4カ所だ。これらは、その国でも優秀な人材が集まる都市であるがゆえに所得平均も高水準である。このことは、その地域の購買力が高くPCの普及率も高いことに結びつく。
インテルのCPGに関するプレスリリースには、国毎にユーザーのサンプルケースを想定し、そのユーザー像に適したPCを研究する構想が示されている。たとえば、インドならば、筐体の隙間からPCケースの内部に入りがちな「小バエ」や「蚊」といった小さな虫や砂塵への対策を施し、さらにエアコンがない常時酷暑の空間に設置されるPCには、「過酷な熱」にも耐えうるPCが求められる。また、中国やブラジルなどでは、個人住居よりインターネットカフェでPCが普及しているため、ハードウェアを監視しやすいPC、を「ユーザーのサンプルケース」として想定している。
筆者はインドで知り合いの家をいろいろと訪問しているが、多くの家庭で防塵用のPCカバーと、頻繁に起きる停電対策用のUPSを所有していた。インドの個人住居は庭付きの一戸建てが多い。公道は舗装されていないのが一般的だが、インドにおける乾季の乾燥っぷりは日本人の想像をはるかに超える。風が吹けば砂塵が一気に部屋に吹き込んでくる。そのため防塵カバーは必須なのだ。
一方、電力不足と日本で報道されることが多い中国だが、インドほど停電が起きるわけではなく、部屋に砂塵も飛んでこないので、インドで求められるような「防塵」「無停電装置」というような対策は必要はない。しかし、インドでは考えられない「ゲームセンター」と化した巨大インターネットカフェがどこの都市でも当たり前のようにある。筆者の経験から思うに、インテルの言っていることはインドと中国に関しては実に的を得ている。
もっとも、インドの一般家庭のPCでこそ防塵対策は必須であるが、インド的「産業の米」ソフトウェア業界の社屋は日本にもよくある近代的なビルで、さすがにその中に砂塵は入ってこない。中国だってPCを使う仕事は会社のPCで行うのであってネットカフェではない。インテルのCPGが狙っているのは紛れもなく途上国の「コンシューマーPC」ユーザーということになる。
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