低価格で機能充実の小型複合機――「Lexmark X2350」

» 2005年09月26日 18時42分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]

 そろそろプリンタ商戦の足音が聞こえてくる季節になった。これから年末までの間、今年の新しいモデルが各メディアを賑わすのが楽しみだ。そんな動向をよそに、レックスマークはマイペースで新モデルを発表しており、今回紹介する「Lexmark X2350」(以下、X2350)も発売日は去る7月23日だった。

 このX2350、一見するとシンプルで小型の複合機だが、スペックはかなり潔い。

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 まず、印刷ヘッド一体型のCMYカラーインクカートリッジを1本しか使わず、「黒」はCMYの3色混合で表現する。メモリカードスロットも持たず、PictBridgeにも未対応。CD/DVDレーベル印刷や両面印刷、ネットワークインタフェースなども、当然ながら(?)備えていない。

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 イメージセンサはCISで、光学解像度は600×1200dpiだ。入出力階調は、入力が48ビット(RGB各色16ビット)、出力が24ビット(RGB各色8ビット)となる。

 スタンドアロンのコピー機能も、原稿をセットして「コピーボタン」を押すだけ。カラー/モノクロを使い分けるボタンもなければ、コピー枚数、拡大縮小、レイアウトコピーといった機能もない。原稿を等倍コピーするだけで、カラー原稿ならカラーでコピーされ、モノクロ原稿ならモノクロでコピーされてくる。機能的には確かに貧弱だが、実際のコピー場面を考えてみると、原稿を等倍でA4用紙(A4サイズ以下の用紙も使用可能)にコピーできれば、十分という人も多いと思う。

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 また、はがきサイズ以下の原稿をセットしてコピーボタンを長押しすると、等倍のフチなしコピーが可能だ。原稿と同じサイズの用紙を給紙しておく必要があるほか、カラー印刷の画質が正直いまひとつなので、活躍する機会は少ないかもしれない。

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レックスマークのプリンタ製品は、全般的に給紙フィーダの紙送り精度があまりよくない。ある程度まとまった枚数を常に給紙しておかないと(厚みにしてだいたい5mm以上)、斜めに給紙されたり、紙詰まりしやすい

PCから使えば機能は高まる

 X2350をPCと接続して使えば、一通りのことができるようになる。ユーティリティーとして「Lexmarkイメージスタジオ」が付属し、レイアウト印刷、複数原稿の連続スキャン、OCR、コピーなどが可能だ。

 特にスキャン機能は、アプリケーションからTWAINで呼び出すよりも、Lexmarkイメージスタジオのほうが使いやすい。TWAINで呼び出すと、1回のスキャンごとにTWAIN画面が閉じてしまい、プレビュー画面や設定も保存されない。Lexmarkイメージスタジオでは、JPEGやBMP、TIFFといった画像形式で保存しながら、複数の原稿を連続的にスキャンできる。また、スキャン画像を保存する以外にも、付属するシンプルなフォトレタッチソフト「Lexmarkフォトエディタ」や、任意のアプリケーションに転送することも可能だ。

Lexmarkイメージスタジオ

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Lexmarkイメージスタジオのトップ画面。ここから目的の操作を始める
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コピー機能も一通りを備える。スタンドアロンコピーでは不可能だった部数やカラー/モノクロ指定、品質設定、拡大縮小などが可能。原稿を用紙サイズに合わせて自動で拡大縮小する機能もある(フィットページ)
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スキャン機能。アプリケーションからTWAINで呼び出す画面も同じものだ。細かい解像度設定や画質調整、モアレ除去などは、別画面の詳細設定で行う。「画像の取り込み先」では、スキャン画像を転送するアプリケーションや、ファイル保存を指定する。ファイル保存の場合、各種の画像形式で任意のフォルダに保存できる。複数の原稿をスキャンするときは、この機能がもっとも使いやすい
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印刷機能。画像の保存フォルダを選ぶと、左側に画像のサムネイルが表示される。印刷したい画像をチェックして「次へ」ボタンを押すか、「画像をレイアウトして印刷する」をクリック。画像のサムネイルサイズは変更できるが、ウィンドウサイズは固定だ
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単純な印刷機能では、用紙サイズと用紙上の写真サイズを選択。簡単な編集機能があり、赤目補正や自動調整、トリミング、画像回転が可能

プリンタドライバ

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プリンタドライバは独特の画面デザイン。最初はとまどうが、すぐに慣れる。L判やはがきの全面フチなし印刷に対応し、レイアウト機能も豊富

印刷品質に期待は禁物。スキャン画質は上々

 インクが3色ということもあって、カラー印刷全般で画質はいまひとつだ。フォト用紙やインクジェット官製はがきへの写真印刷では、シャドウが浮いてグレーっぽくなったり、茶色っぽくなる。CMY混合の「黒」なのである程度はしかたないのだが、全体的にイエローが強く、どころなく色あせたような感じになりやすい。粒状感も肉眼で判別でき、印刷用紙の下端近くで横筋が発生しやすい点も気になった。また、人物写真だと人肌の階調が失われがちで、髪の毛の細かい部分がつぶれて平坦な印象になってしまう。以上から、フォト用紙を使った写真印刷には向いていない。

 普通紙へのコピーや印刷も、写真印刷と同じ傾向だ。シャドウの浮きは写真印刷以上に目立つが、全体的な印象は悪くない。画質を重視するときは、一般的な普通紙の代わりに「OAペーパー」のような少し上等の用紙を使うとよいだろう。

 スキャン画質には大きな不満はない。原稿色の再現性と階調性、細部の表現力とも上々だ。ただ、文字を含む原稿を低解像度(72〜300dpi程度)でスキャンすると、文字の輪郭で偽色が激しい。低解像度のスキャン画像が必要なときでも、600dpiくらいでスキャンして、グラフィックソフトで画像サイズを調整するほうが良い結果となる。

印刷例

  • フォト用紙写真印刷
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コニカミノルタのインクジェット写真用紙「光学/超厚手」(最高グレード)を使ったサンプル。このようなゴチャゴチャした写真なら粒状感は気にならないが、空のグラデーションといった比較的平坦な要素だとインクドットがはっきり見えてしまう。色調は全体的にイエローが強く、CMY混合の「黒」なのでコントラストも低い
  • 普通紙Web印刷
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画質設定を「標準」にしても、カラー部分、黒い文字ともかなり薄い。黒い文字はどうしてもグレーっぽくなるが、インクのにじみは少ない

スキャン例

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反射原稿(プリント写真)のスキャン例。彩度が若干高めだが、コントラストと明度はちょうどいい。不自然な輪郭強調がなく、階調性も良好だ

動作速度

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3色印刷でノズル数も少ないので(160ノズル×3色)、コピーや印刷は全体的に遅い。スキャン時間は低解像度では高速だが、A4/300dpiやL判/600dpiといった高解像度になると遅くなる

普通紙メインの使い方で導入コストを最重視する人に

 一通り触れてみた感想を正直に言わせてもらうと、低価格というほかは見るべきところがあまりない。写真印刷やはがき印刷の画質を多少なりとも求める人は、別の複合機を検討したほうがよいだろう。

 X2350をおすすめするとしたら、ほとんど普通紙しか使わず、コピーやWeb印刷、文書印刷がメインのユーザーだ。インクカートリッジの価格は直販サイトで2600円(送料込)なので、よほどヘビーに印刷しなければ、ランニングコストもさほど気にならない。本体が低価格なことから、2台目以降としての購入も十分考えられる。

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