続いて静止画の表示品質だ。FineContrastのモードは、S2410WとL997とも「sRGBモード」で評価した。ただし「黒」レベルを適切にするため、輝度を落としている。目視による設定なので厳密ではないが、S2410Wは30%、L997は50%だ。色温度は6500Kのまま変更していない(sRGBモードで変更できるのは輝度のみ)。
静止画の表示品質は、スペックで判断するのは難しい。見た目でいうなら、輝度とコントラスト比が高いS2410Wの勝ちだろう。黒が引き締まり、高彩度な色も、L997より鮮やかに表示されるからだ。
もう1つの視点には、色の正確性が挙げられる。S2410WとL997は基本的にプロ向けという位置付けなので、この点を少し詳しく突っ込んでみたい。判断要素としては、視野角や階調性も含まれてくる。
まず色の正確性では、S2410WとL997は詳細な調整項目を備えており、RGB個別のゲイン調整やRGB/CMY個別の色相/彩度調整によって、色を合わせ込むことが可能だ。両者ともきっちり調整して使うべき液晶ディスプレイだが、sRGBモードのデフォルトでも問題のない色再現性を見せる。ただ、sRGBモードの色温度(6500K)に関して、L997は若干高め(青みがある)のように感じた。
次は視野角と階調性だ。ここで言う視野角は、スペック数値の視野角ではない。画面を真正面から見たとき、視線を画面の中央から四隅に向かわせるにつれて、どれくらいの部分で色が違って見え始めるかを意味する。液晶パネルの駆動方式からして、スーパーIPS方式のL997の方が優れているのは言うまでもない。
視野角チェックに使ったのは、NVIDIA製ビデオカードのドライバに含まれる「NVIDIAディスプレイ最適化ウィザード」だ。ウィザード中に「明るさの最適化」という項目があり、グレースケールの上部2パターンの境界が区別できなくなるまでディスプレイの輝度を落とすことによって、最適な明るさに調整する。
S2410Wでは、真正面から見ると上部2パターンの境界が消えているときでも、真正面から比較的すぐ左右の部分で境界が見えてしまう。つまり、視野角による輝度変化(色変化)が大きいわけだ。一方L997では、画面と正対している限り、ほぼ画面全体が同じ色と輝度で見える。この傾向こそが、カラーを扱う作業において、スーパーIPS方式が適していると言われる大きな理由の1つだ。VA系の液晶パネルは、視野角がつくとシャドウがどうしても浮き気味になる。
階調性は、黒から白の横方向グラデーションでチェックした。理想的なのは黒から白までスムーズに階調が変化することだが、これを実現できている液晶ディスプレイは本当に少ない。ほとんどの製品は、グラデーションの一部で縦すじが発生する。少し乱暴な言い方をすると、縦すじ=トーンジャンプと考えてよく、縦すじの部分で階調が欠落していることを意味する。
S2410WとL997では、L997のほうがきれいなグラデーションを描く。S2410W、L997ともに、普通に見る分にはまったく縦すじは見えないが、L997については目を皿にして精査しても、目に見える縦すじは1本もなかった。
無彩色(グレー)のグラデーションは、シンプルなだけにごまかしがきかず、液晶パネルや周辺回路の優劣が比較的はっきり現れるところだ。階調性を決めるのはガンマカーブで、S2410WとL997は内部10ビットガンマ補正(14ビット処理)を備えているが、それでも差が生じている。液晶パネル自体の階調性能としては、やはりスーパーIPS方式が先を行くのだろう。
なお、ガンマカーブによる階調性に関しては、多少の個体差が存在する可能性があることをお断りしておく。また、これは言うまでもないことだが、上記の内容はともにハイエンドモデルのS2410WとL997を比較した結果として述べたものであり、同社製品を含めた液晶ディスプレイ全体の中では、視野角性能、階調性ともにトップに位置することを念のため確認しておきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:株式会社 ナナオ
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年3月31日