俺の血管でPCが起動するっ!──日立製作所「指静脈認証」ノートPCを試してみた(1/3 ページ)

» 2005年12月15日 17時11分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 「ノートPCが盗まれて個人情報が流出」という記事がしばしば見られるように、いまやノートPCにセキュリティー機能は必須。ビジネスモデルだけではなくコンシューマー向けノートPCにもセキュリティー専用チップが実装され、指紋センサーによる「パスワードの指紋認証管理」がセールスポイントとなっている。

 このように、以前は認識がなかなか難しくて「登録した本人だけがログインできない」(体験談)なんてこともあったバイオメトリックスであるが、いまや認識率も向上し、セキュリティーのためなら指紋センサーは当たり前、というのが常識となりつつある。

 そんななか、「もう1つ上のバイオメトリックス」に取り組んでいるのが日立製作所である。彼らが取り組んでいる「静脈認証」については、すでにこの記事や、この記事とこの記事で紹介されている。銀行のATMで導入されていてテレビCMでもさかんにアピールされている、実はけっこうポピュラーで、かつ、実用段階に入ったバイオメトリックスでもある。

 その日立製作所が指静脈センサーを実装したノートPCを発表した。先に紹介した記事でも報じられているように、ノートPCの試作機自体はすでに紹介されており、CEATEC2005の展示ブースでは実際に指静脈認識を体験できるようになっていた。しかし、今回、製品化された機材を一人でじっくりと触れる機会に恵まれた。そこで「実際の静脈認識の登録から認証ってどうなのよ」というあたりを体験してみた。

指静脈センサーを世界ではじめて取り入れたノートPC「FLORA Se 210」はHDDを持たない、シンクライアントPCである

 「指静脈センサー」を搭載したノートPC「FLORA Se 210」のベースは「FLORA 210」というB5サイズ1.5キロ級2スピンドルノート。PCUPdate的コンシューマーユーザーにはエプソンダイレクトの「Endeavor NT350」シリーズというと分かりやすいかもしれない(どちらにしても元をたどればASUSに行き着くのだが)。

 パームレストの右寄り、ほかのノートPCなら指紋センサーが載っていそうなあたりに指静脈センサーが実装されている。銀行のCMで登場する「ATMの静脈センサー」の大きさをイメージしていると、これが静脈センサーであるとは思えないほど小さい。「静脈認証って手の平のパターンを使うんでしょう」というイメージが強いが、最近は指静脈パターンを使う場合もある。FLORA Se 210も指静脈パターンを使っているが、それでも従来型の20分の1、というサイズを実現している。

 このブレークスルーとなったのが、指静脈を読み取る光の照射方法。従来は上から光を照らして「透ける」静脈をスキャンしていたが、新方式では指先と付け根の2箇所をLEDで下から照射。すると「指の中を光が散乱」して静脈のパターンが透けてくる。あとは従来と同じように透けた静脈パターンをスキャンで読み取るだけだ。光源にLEDを使い、かつスキャンデバイスと1つにまとめたおかげで小型化が実現した(このあたりの説明はこちらを参照。

パームレストに搭載された指静脈センサー。中央の窓状の部分が静脈パターンを読み取るスキャナーユニットでその上下に見えるのが指を下から照らすLED

新方式の指静脈センサーは下からLEDで指を照らす。指に入った光は内部で散乱して表面近くにある静脈を照らし出す。そうやって透けて見えるパターンをスキャナで読み込む

 とはいえ、指紋センサーよりはまだ厚い。この指静脈センサーをFLORA Se 210に実装できたのには「このノートはHDDを持たないシンクライアントPCなので、ノーマルなノートPCでHDDを搭載しているスペースが空いています。指静脈センサーはその部分に搭載しました」(日立製作所 ユビキタスプラットフォームグループ インターネットプラットフォーム事業部 事業企画室 主任技師 中西潤氏)という事情もある。

 ただし、さらなる薄型化への研究開発は進められていて、携帯電話やPDAといった小型デバイスへの搭載は数年後、そして、通常のノートPCへの搭載は「ふっふっふっふ」(中西氏)ということだった。

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