「ノートPCが盗まれて個人情報が流出」という記事がしばしば見られるように、いまやノートPCにセキュリティー機能は必須。ビジネスモデルだけではなくコンシューマー向けノートPCにもセキュリティー専用チップが実装され、指紋センサーによる「パスワードの指紋認証管理」がセールスポイントとなっている。
このように、以前は認識がなかなか難しくて「登録した本人だけがログインできない」(体験談)なんてこともあったバイオメトリックスであるが、いまや認識率も向上し、セキュリティーのためなら指紋センサーは当たり前、というのが常識となりつつある。
そんななか、「もう1つ上のバイオメトリックス」に取り組んでいるのが日立製作所である。彼らが取り組んでいる「静脈認証」については、すでにこの記事や、この記事とこの記事で紹介されている。銀行のATMで導入されていてテレビCMでもさかんにアピールされている、実はけっこうポピュラーで、かつ、実用段階に入ったバイオメトリックスでもある。
その日立製作所が指静脈センサーを実装したノートPCを発表した。先に紹介した記事でも報じられているように、ノートPCの試作機自体はすでに紹介されており、CEATEC2005の展示ブースでは実際に指静脈認識を体験できるようになっていた。しかし、今回、製品化された機材を一人でじっくりと触れる機会に恵まれた。そこで「実際の静脈認識の登録から認証ってどうなのよ」というあたりを体験してみた。
「指静脈センサー」を搭載したノートPC「FLORA Se 210」のベースは「FLORA 210」というB5サイズ1.5キロ級2スピンドルノート。PCUPdate的コンシューマーユーザーにはエプソンダイレクトの「Endeavor NT350」シリーズというと分かりやすいかもしれない(どちらにしても元をたどればASUSに行き着くのだが)。
パームレストの右寄り、ほかのノートPCなら指紋センサーが載っていそうなあたりに指静脈センサーが実装されている。銀行のCMで登場する「ATMの静脈センサー」の大きさをイメージしていると、これが静脈センサーであるとは思えないほど小さい。「静脈認証って手の平のパターンを使うんでしょう」というイメージが強いが、最近は指静脈パターンを使う場合もある。FLORA Se 210も指静脈パターンを使っているが、それでも従来型の20分の1、というサイズを実現している。
このブレークスルーとなったのが、指静脈を読み取る光の照射方法。従来は上から光を照らして「透ける」静脈をスキャンしていたが、新方式では指先と付け根の2箇所をLEDで下から照射。すると「指の中を光が散乱」して静脈のパターンが透けてくる。あとは従来と同じように透けた静脈パターンをスキャンで読み取るだけだ。光源にLEDを使い、かつスキャンデバイスと1つにまとめたおかげで小型化が実現した(このあたりの説明はこちらを参照。
とはいえ、指紋センサーよりはまだ厚い。この指静脈センサーをFLORA Se 210に実装できたのには「このノートはHDDを持たないシンクライアントPCなので、ノーマルなノートPCでHDDを搭載しているスペースが空いています。指静脈センサーはその部分に搭載しました」(日立製作所 ユビキタスプラットフォームグループ インターネットプラットフォーム事業部 事業企画室 主任技師 中西潤氏)という事情もある。
ただし、さらなる薄型化への研究開発は進められていて、携帯電話やPDAといった小型デバイスへの搭載は数年後、そして、通常のノートPCへの搭載は「ふっふっふっふ」(中西氏)ということだった。
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