デュアルコアノートPCで5時間駆動 AMD、リファレンス「Yamato」公開

» 2005年12月15日 19時20分 公開
[ITmedia]

 日本AMDは12月15日、2006年前半に市場投入を計画しているノートPC用デュアルコアプロセッサを搭載したリファレンスプラットフォーム「Yamato」を公開した。チップセットへのディスプレイキャッシュ内蔵などの新機能を盛り込み、5時間以上のバッテリー駆動をターゲットに開発を進める。

photo 「Yamato」

 Yamatoは、AMDが昨年6月に日本に設立した「JEL」(ジャパンエンジリアリングラボ)が、米NVIDIAのチップセットなどを使用して日本アイ・ビー・エムのエンジニアリング&テクノロジー・サービス部門と共同開発した。回路図から基板レイアウト、ファームウェアまでプラットフォームレベルで技術サポートを行い、各コンポーネントを検証済みの形でOEMメーカーに提供することで、搭載製品の開発期間の短縮と早期の市場投入を支援するのがねらいだ。

 AMDは来年前半、Turion 64のデュアルコア版となる新製品を投入する計画。毎秒6.4GバイトのHyperTransportとは別に、メモリコントローラを統合することでメモリバスを別に確保。デュアルチャネルDDR2 SDRAMへの対応と合わせ、メモリ帯域幅は毎秒10.7Gバイトに達する。

photo AMDのモバイルデュアルコアアーキテクチャ(右)と「競合他社のデュアルコア」との比較

 NVIDIAとカナダATI Technologiesが開発を進めているグラフィックス機能内蔵チップセットでは、ノースブリッジにディスプレイ用キャッシュメモリを内蔵した製品も登場する予定だ。

 グラフィックスの元データはメインメモリに格納しておくが、アイドル時にはノースブリッジにキャッシュしたデータを使う。メインメモリとVRAMを共用するUMA、外部メモリを使うローカルフレームバッファと異なり、CPUを「寝かせたまま」でも表示のリフレッシュを行えるようにし、省電力化する仕組みだ。来年後半に発売予定のWindows Vistaに搭載される新GUI「Aero Grass」にも対応する。

photo モバイルプラットフォームのロードマップ。2006年、無線LANは802.11nもサポートする

 Yamatoは、重さ2キロ前後のA4サイズノートを想定し、6セルバッテリー使用時にMobileMark 2005で5時間超の駆動時間をターゲット性能として開発を進めている。各部の実行時間ごとの消費電力を細かく計測し、USB接続の外部PCに出力する機能も備えた。現在は電源管理機能のチューニング中で、現時点の駆動時間などは明らかにしなかった。

 公開したデモ機のCPU動作クロックは非公開で、1GバイトデュアルチャネルDDR2やHD表示が可能な1920×1200ピクセルの液晶ディスプレイなどを搭載した。バッテリーではなく外部電源の使用だったが、WMV9とMPEG-2の同時再生や、H.264の1080p動画再生の際に両コアの使用率が半分程度で済んでいることを示し、低電圧・低クロックでも高性能を発揮できるとした。

photo 上はWMV9(1280×720ピクセル、30fps、8.89Mbps、WMA9)とMPEG-2(720×480ピクセル、30fps、7.5Mbps、AC-3)を同時再生させるデモ。下はH.264の1080p(1920×816ピクセル、24fps、10.44Mbps、AAC 5.1ch/48KHz)を再生させたところ。左上のグラフは各コアの使用率を示す

法人市場への取り組みを強化

 10月には米小売りの販売台数シェアでIntelを上回ったと伝えられ、Opteronベースのサーバ採用がエンタープライズ分野で進むなど、今年は躍進の年だったAMD。ノートPC市場でも、今年第3四半期の世界シェアは10.9%となり、前年同期から2.9ポイント拡大した。

 モバイル市場向け戦略の柱の一つが法人市場での拡販だ。今年第3四半期の顧客別シェアを見ると、従業員が99人以下の小規模企業では13.7%だったのに対し、1000人以上の企業では1.6%と極端に低くなるのが現状。コマーシャル市場への浸透は同社積年の課題となっている。

 AMDマイクロプロセッサソリューションズセクター モバイル部門のクリス・クローラン副社長は「法人に満足してもらえる製品群を投入していく」と話し、AMDが伝統的に強みを持つコンシューマー市場と同様、法人市場も重視していく姿勢を示した。日本AMDも法人営業体制を強化し、2006年第1四半期から市場開発営業の専門部隊を発足させる計画だ。

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