シーゲイトは1月25日、垂直磁気記録方式を採用する2.5インチHDD「Momentus 5400.3」シリーズの出荷を開始したと発表した。
Momentus 5400.3シリーズは、記録容量の大幅増加が見込める垂直磁気記録方式を採用し、2.5インチドライブとしては業界最大容量(2006年1月現在)となる160GバイトモデルまでラインアップされるHDD製品。ドライブ回転数は5400rpmながら4200rpmタイプと同程度の消費電力で動作するとし、ノートPCへの採用においてとくに重要となるバッテリー持続時間に対するメリットもアピールする。ラインアップは40G/60G/80G/120G/160Gバイト。
同シリーズの面密度は1平方インチあたり132ギガビット(従来モデルは91.5ギガビット)。動作時で350G/非動作時で900Gとする、こちらも業界最大クラスとなる耐衝撃性能(従来モデルは動作時で250G)を備え、流体軸受けモーターやQuietStep LandLoap技術により「ほとんど動作音が聞こえることはない」(同社)ほどの静音性も実現する。なおHDD製品としてはかなり長期となる5年保証となる。
垂直磁気記録方式を採用することにより、面密度を向上させる(記録容量が増える)という大きな効果のほか、高密度化が進むことにより搭載プラッタやヘッド、機構部品点数が減少でき、結果コストも削減できるという効果も生まれる。
なお従来方式である長手磁気記録方式で記録容量を増やすには、記録ビット自体を縮小させ、間隔を詰めて並べるていく必要がある。この場合、記録ビットを維持する磁気エネルギーも低下することになり、結果、熱エネルギーの影響で磁化が弱まる「超常磁性効果」というHDDにとってマイナスの現象が起こる。このために従来方式では現状以上の高密度化は困難とされている。
ノートPCなどモバイル機器向けとなる2.5インチドライブの総出荷台数は、2004年度の約5000万台から2005年度には約7000万台へと伸び、急速に市場が拡大した。さらに2006年度には約9000万台に上ると予想されている。
2.5インチモデル市場に参入し3年が経過した同社もこの市場拡大に伴い、初年度のシェア5%にはじまり、2004年度に8%、2005年度には約12%まで拡大させ、2006年第2四半期決算では昨年度比で25%増となる23億USドルの売上高、2億8700万USドルの純利益を計上した。ユーザーが望む低消費電力性、耐久性、パフォーマンス、容量を持つHDDへのニーズの高まりに対応でき、評価が得られている結果だと同社代表取締役社長 小林剛氏は述べる。
同社は、昨年度の研究開発費(R&D費)を日本円で約230億円費やした。今回投入した垂直磁気記録方式のドライブ開発・投入も、たえまない研究開発を行ってきたことによる大きな効果の1つだという。
同シリーズは、当初Ultra ATA/100タイプのみで投入(すでに開始)されるが、最大転送速度1.5GbpsでNCQ対応となるSerial ATAタイプも2006年後半に投入する予定となっている。ノートPC向けの新規格はデスクトップ用のそれと比べると、チップセットへの対応状況などから12か月ほど遅れて採用されてくる傾向があり、2007年度にはSerial ATA採用モデルが80%以上になるほどにシフトするとされている。
またノートPCへ搭載されるHDD容量についても、2002年までは10Gから20Gバイトモデルが中心であったのに対し、2005年は40Gから60G、80Gバイトモデル中心へ、2007年には80Gバイト以上のモデルへシフトされる。同社は、そのため今回のラインアップでは80Gバイトと160Gバイトモデルが主に出荷されるだろうとし、2.5インチドライブ市場においてもさらなるシェア拡大を図る考えだ。
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