「全製品2日配達保証」の秘密──エプソンダイレクトはいかにしてそれを実現したか?インサイドリポート(1/4 ページ)

» 2006年02月24日 13時30分 公開
[平澤寿康,ITmedia]

 直販専門のPCメーカーとしておなじみのエプソンダイレクト。品質の高さや充実したサポート体制は以前より定評があるが、受注から発送に至るまでの迅速な対応も特徴となっている。実際、取り扱い全モデルが仕様を細かく指定できるBTO対応にも関わらず、受注確定日から2日(一部地域では3日)での配達(顧客宅への到着)を“保証”している。BTOによる仕様の違いを吸収しながら、どのようにして2日での配達を保証しているのか。エプソンダイレクト本社および本体組み立て工場を直撃し、その謎を探った。

「今日の注文分は明日発送したい」──これが「全製品2日配達保証」の原点

 連日激しい競争が繰り広げられているパソコン業界。スペック競争はもちろん、価格競争も激しさを増すばかりだが、PC自体の高性能化に加え、仕様の画一化も進んでおり、メーカー間で製品仕様の差がほとんど見られなくなっているのも事実。特に、直販専門メーカーではその傾向が顕著で、各社とも非常に厳しい戦いを強いられているようだ。

 しかし、そういった中で、製品の品質はもちろん、注文時の対応から購入後の保証サービスに至るまで、常にユーザーの高い支持を得ている直販専門メーカーが存在している。それがエプソンダイレクトだ。

 以前より、最新スペックのPCをいち早く、それも安価に提供することで定評のあるメーカーだが、それに加え、注文の翌々日には手元に届くという非常に迅速な配達を保証する(届かない場合はペナルティとして5000円をキャッシュバック)ことで、ユーザーから厚い信頼と支持を得ているのだ。

 エプソンダイレクトのすべての製品は、BTOによって注文時にマシンスペックを自由にカスタマイズできる。にも関わらず、午後5時までに注文すれば、翌々日には手元に届くのだ*1。まるで、完成品を量販店に注文するのと同じ感覚で、完全カスタマイズマシンが配達されてくるのである。エプソンダイレクトは日本屈指の直販メーカーであり、BTO対応のため最大1億通りを超える組み合わせがあるそうだが、それら全てに対して2日配達を保証しているのだ。

 一度でもPCを自作したことのある人ならそれがどれだけ時間のかかる作業か分かるだろうが、それを1日に数百台以上、新製品の発売直後や新年度前後の注文集中期にはさらにそれ以上をこなしているのである。そこに何らかの秘密があるはずだ。そこでエプソンダイレクト取締役の小松清治氏に、2日配達保証をどうやって実現したのかを直撃してみた。

「全製品2日配達保証」を主導してきたエプソンダイレクト取締役 小松清治氏

 「もともとは、『今日の午前中にご注文いただいたお客様の製品は翌日発送します』ということを明確にしてアピールしたい、というところから始まりました」と、小松氏。当然だが、エプソンダイレクトが現在の「2日配達保証」をいきなり実現できたわけではない。それ以前にも納期短縮のためのさまざまな取り組みを地道に行ってきたからこそ、実現できているのだ。

 エプソンダイレクトではBTOを始めた当初、受注した製品を出荷するまでに最短でも4日かかっていたそうだ。しかし、他社との差別化を図る上で、出荷までにかかる時間を短縮したいという意識が高まり、2003年8月から全社体制で納期短縮プロジェクトを立ち上げたという。その課程でまず、日曜日でも注文を受け付けられるようにしたり、受注・決済(クレジットカード決済や振り込み確認など)が完了するとすぐに製造指示を出せるようにすることで、最短だと受注の翌日に発送できるものも出てきた。そこで、2004年8月から、「最短翌日発送」を告知するようになった。

 とはいうものの、「“最短”翌日発送」では、顧客の側から見ると、自分が注文したマシンが翌日に発送されるかどうかはわからない、という落とし穴があった。つまり、顧客にマシンの納期を明確にすることはできなかったわけだ。企業努力でせっかく「最短翌日発送」を告知できるようにしたのにも関わらず、場合によっては3日後の発送になってしまうこともあり、せっかくの告知がかえって逆効果になってしまうことも十分考えられる。

 そこで、明確に納期を告知するためのプロジェクトが2004年9月に立ち上がった。これが、2日配達保証の実現に向けての、そもそものスタートラインになったというわけだ。

*1:日曜〜木曜の受注分のディズニーキャラクターPCを除く製品が対象。沖縄や佐渡島を含む一部島しょ部は除く。また、東北地方の一部および中国・四国地方の一部より遠方は3日配達保証となる。

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