北京オリンピックのITインフラは開催に間に合うのか?山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

» 2006年03月06日 13時11分 公開
[山谷剛史,ITmedia]
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2008年の北京通信事情

 北京のインターネット接続はブロードバンドからダイアルアップまで多くの方法がすでに存在している。4つ星、5つ星レベルのホテルであれば部屋にLANが敷設されるのは当たり前で、ホテルのロビーに無線LANスポットのあるホテルも多い。部屋にLANが引かれていないホテルであっても外国人が泊まれるホテルなら(中国には外国人宿泊禁止のホテルがある)、ビジネスセンター(中国語で“商務中心”)でネットに繋がったPCを借りられる。説明すればUSBメモリを接続できるなど、意外と融通がきく。

 公衆無線LANもある。公衆無線LANはChina Mobile(中国移動通信)やChina Telecom(中国電信)など電信会社が提供しており、これを国際ローミングサービスで利用できる。現在の北京では(例えばChinaMobileはこちらの北京を参照)、北京首都国際空港、北京駅、高級ホテル、会議センター、著名ビジネスビルに公衆無線LANがある。いま私が立っているスポーツセンターで公衆無線LANは使えないが、ほかの都市では体育館にも無線LANホットスポットがあることを考えると、これから建築されるオリンピック施設に無線LANのホットスポットが備えられるのは十分考えられるだろう。

 ネットカフェは北京中にあり、ブロードバンド接続は当たり前、おまけにPCゲームが動く仕様なのでスペックも申し分ない。しかし多くのネットカフェが身分証の提示が必要な会員制となっており、店員は外国語が話せず、USBメモリやCDなど外部メディアを一切受け付けないPCが多い。よほど中国でネットカフェを利用し続けたツワモノでないとお勧めできない。

北京のとあるネットカフェ内部

 ダイアルアップ接続の場合、北京の電信系企業各社が手続き不要で通話料金にダイアルアップ料金を含めたサービスを行っている。例えば「暢捷科技」のダイアルアップサービスでは電話番号を「96692」「96691」「96291」のいずれかにして、ユーザーネームとパスワードは不要で接続ができる。「賽爾在線」では、電話番号を「95996」にしてユーザーネームとパスワードを「2004 / 2005 / zj / cx / 95996 / 95999 / 12」のいずれかにすれば接続できる。同様に「263」や、「金漢王数据通信」でも同様のサービスをしている。

 蛇足だが、通称「163」や「169」と呼ばれる中国全国区のダイアルアップサービスは中国在住の日本人にもよく知られているが、北京では他の中国の地域と同じように使えない。国際ローミングサービスに関しても北京ではこのようなサービスが利用できない。実際筆者も使えなかった。

 日本にあるサーバにブロードバンド回線でアクセスしたときの回線速度はどれくらいなのか? 中国のネットカフェやホテルがいくら「高速!」「2兆ADSL!」といったところで、日中間のバックボーンが遅くては映像や写真など大きいサイズのファイルを送るのもひと苦労だ。LANが部屋に敷設された北京のとあるホテルで日本までの回線速度を測定したところ、日本にあるサーバまでの速度は下り1〜3Mbps、上り80Kbps〜150Kbpsという数字が出た。

 「遅い……」と悲観するのは2008年まで待とう。中国のCNNICが半年に一度インターネット環境を調べた「中国互換網絡発展状況統計報告」に中国のバックボーンに関する状況が書いてある。1月に発行された最新版の統計報告によると、中国からの海外バックボーン総量は2002年末に9380Mだったのが、2003年末で2万7216M、2004年末には7万4429M、2005年末になると131万6106Mと増強している。これからも増強するだろうから、調査時点で遅く感じても、北京オリンピック開催までには、それなりに日本のサーバへのアクセスも快適になるはず、と願いたい。

北京のADSL付ホテルの客室

ほかの中国の都市に比べてインフラ構築は進んでいるようだが

 北京は研究施設、インターネット利用者率(28.7%)が中国一で、政府がLinuxを積極的に導入するなど、IT化が中国大陸において最も進んでいる場所といえる。その一方で北京市においても貧困層は存在し、PCが買えない人々も多数いる。

 さらには給料(と物価)が高い北京を目指して中国全土から出稼ぎにやって来る。道路が整備され高層ビルが立ち並び、この10年で日本でいえば数十年分の外見的進歩を遂げた中国だが、個人的私見でいえば、人々の内面やモラルがそれに呼応してわずか10年で数十年分の進歩をしたかといえば微妙なところだ。

 現代的都市ではおなじみの交通手段である地下鉄ひとつとっても、降りる人がまだいるのになだれこんで乗車する人々はまだまだいるし、上海の地下鉄駅では自動改札の使い方を知らず、潜ったり、ハードル飛びでジャンプする人もいる(北京では街の中心を走る1号線2号線はそもそも自動改札化されていない)。

 あと2年でITインフラを整えるのは北京の課題だろうが、人々が北京のITインフラに適応できるかどうかも、北京オリンピックに向けての重要な課題かもしれない。

北京の海賊版ソフト販売店。五輪までになくなるか
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