Mac mini開発担当者に聞く 「リビングルームへの進出は付加的要素――Mac miniはあくまでもデスクトップPC」インタビュー

» 2006年03月07日 18時02分 公開
[林信行,ITmedia]

 インテルCPU搭載Macの第3弾として登場したApple Computer(以下、アップル)の新Mac miniは、メディアプレイヤー「Front Row」や赤外線リモコン「Apple Remote」など、ホームエンタテインメントにフォーカスした機能を備えることでも注目を集めている。この新しいMac miniについて、シニア・プロダクト・マネージャーのジェイ・チュラーニ氏に話を伺った。

ジェイ・チュラーニ氏。ワールドワイド・プロダクト・マーケティング部シニア・プロダクトマネージャー。1990年代末はFireWire担当のプロダクト・マネージャーとして同規格の普及に務め、その後、iMacやiLifeシリーズなど、ハード/ソフトの両方でコンシューマ製品のマーケティングを手掛けている

最新Intel Coreを搭載したもっとも手頃な価格のPC

――新しいMac miniは製品としては大変素晴らしいのですが、これまでのMac miniの売りの1つが「安さ」だっただけに、ユーザーは価格が高くなった(*1)ことを気にしているようです。

チュラーニ氏:たしかに以前のMac miniと比べると少し価格は高くなりました。ただ、この製品がIntel Coreシリーズの最新型CPUを搭載していることを思い出してください。これはたった2カ月前に発表されたばかりのCPUです。PC市場全体を見てもらっても、このCPUを搭載したデスクトップPCはまだそれほどありません。

 スピードで比べてもらっても、従来のMac miniよりも4倍ほど速くなっています。何社かはこのCPUを搭載したPCを販売していますが、これだけ低価格で提供しているメーカーも、これほどの価値を詰め込んでいるメーカーもほかにないはずです。

 今回の製品はとくに無線通信系の機能(筆者注:無線LANおよびBluetooth)、ギガビットLAN、メモリ容量とHDD容量の拡大、光オーディオ入出力端子、Front Rowを呼び出せるApple Remoteなど新機能が満載です。価格に十分以上に見合う価値を提供していると信じています。

――アップルはこれまでも優れた最新技術を積極的に取り入れて製品を進化させ続けてきました。ただし、これまでの製品では、「同じ価格を維持できた場合」に限ってそうした新技術を取り入れていたように思います。今回、あえて値段をあげてまで取り入れたかった機能はなんでしょう。また、どうしてそこまでしてその機能を取り入れる必要があったのでしょう。

チュラーニ氏:とくにこれ1つの機能を特別取り入れたかったというわけではありません。たとえば新Mac miniでは、USBポートが4つに増えましたが(*2)、これはユーザーからの要望が多かったからです。

 一方ではMac miniをサーバーに使いたいのでギガビットイーサネットを搭載してくれという要望もありました。また、リビングルームのTVにつないで使いたいので、オーディオの光入出力ケーブルに対応して欲しいという要望もありました。他社の製品をみてもらっても、Intel CoreのCPUを搭載し、これだけ機能を満載したPCでこの価格帯というものは、おそらくないのではないでしょうか。

Mac miniはリビング用PC?

――今回、アップルは“リビングルームへの進出”を高らかにうたっていますよね。

チュラーニ氏:ちょっとだけ、ですけどね。注意しておきますが、Mac miniは基本的にデスクトップPCです。この製品でユーザーが考える主な用途は電子メールの送受信や、Webブラウジング、デジタルメディアの制作や管理などです。

 ただ、本体サイズがこれだけ小さいため、人によってはこれをTVの横において使いたいと思っています。我々もそうしたユーザーを応援するように、Apple Remoteを付属させ、Front rowを利用できるようにしました。

 ただ、Mac miniの用途は人によって本当にさまざまで、我々もそのように用途に広がりがあることは素晴らしいことだと受け止めています(*3)。

――なるほど。ただ、多くの人がこの製品をViivなどのリビングルーム向けPCプラットフォームと比較していると思います。そうした比較を行なってしまうと、最近の大型デジタルテレビが次々と採用し始めているHDMI端子もなければ、DLNAの通信にも対応しておらず、それが欠点に見えてしまうことも・・・・・・。

チュラーニ氏:接続性については、たしかにHDMI端子は備えていませんが、DVI-D端子を備えており、付属のアダプタを使うことでアナログRGBの接続にも対応しています。今日ではほとんどのTVがDVI-DやアナログRGBでの接続に対応しています。どうしてもHDMI接続をしたい人には、他社からDVI-DをHDMIに変換するアダプタも発売されているので、それを使うことも可能でしょう。またどうしてもコンポジット出力が必要な人には、それ用の製品もあります。

 我々はこの価格、このサイズで提供しうるもっとも基本的な出力を用意していますが、ユーザー側で工夫してアダプタ製品などを使ってもらうことで、こうしたさまざまな接続方法にも対応できるのです。

――DLNAについてはどうでしょう? Front Rowがネットワークに対応し、これを使って同じLAN上のMac/Windowsマシンに登録されたiTunes用音楽や動画が見れるようになりました。また、LAN上にMacがあればiPhotoに登録した写真も閲覧できます。しかし、家電業界ではDLNAというオープンスタンダードが注目を集めています。アップルはこれまでオープン標準を積極的に推し進めてきたと思うのですが。

チュラーニ氏:Mac miniのメディア再生機能は、よりシンプルかつよりエレガントな方法にこだわりました。我々はすでに長い間、iTunesの音楽共有機能を提供しており、高い評価を受けています。同様にiPhotoでも写真共有機能を提供してきました。Mac miniのFront Rowでも、これと同じシンプルかつエレガントなデジタルコンテンツの共有を提供したかったのです。

――Mac miniの最大のライバルは、実はiMacではないかと思っています。とくにディスプレイやマウス、キーボードを新たに買い直そうとすると、あるいはMac miniで物足りないHDDなどを買い足したりしていると、すぐにiMacに近い価格になってしまいます。両製品はどのようにユーザーの住み分けを行なっているのでしょう。

チュラーニ氏:iMacは文句なしで素晴らしい製品で、コンシューマからプロシューマまで幅広いニーズに応えるものです。TVにつなげて使いたい人ならMac miniを買うでしょうし、単体で使いたいならすでにマウス、キーボードやディスプレイを持っていてもiMacを買うかもしれません。大事なのはアップルが幅広いユーザーニーズに対応した製品群を持っているということです。

――その製品群も、今回のインテルMac mini登場で「50%がインテルCPUへの移行を果たした」といっていますね。これはインテル化する残り製品が3種類という意味ととらえてよいのでしょうか。

チュラーニ氏:製品シリーズのおよそ半分が移行したという程度の意味に捉えてもらえるとうれしいです。


*1前モデルが5万8590円からだったのに対して、新モデルは7万4800円からとなっている。

*2従来モデルのUSB端子は2つ。FAXモデムが省かれた代わりにUSBが4基に増え、ライン入力/光デジタル音声入力端子が加わった。

*3Mac miniは、これまでにも車載コンピュータやデータセンター用のサーバなど、さまざまなユーザーがさまざまな使い方をしてきた。ブランドコントロールの厳しいアップルにしてはめずらしく、同社のサイト内にあるMac miniの公式ホームページの右下で、こうした奇想天外な用途のいくつかにリンクを用意して紹介している。

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