きょうは「ファンレス」GeForce 7600 GSの消費電力と熱を調べてみたグラフィックスカード

» 2006年04月05日 11時28分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 先日掲載したLeadtek「WinFast PX7600 GS TDH」のレビュー記事でも紹介したように、GeForce 7600 GSはコアクロック400MHzにメモリデータ転送レート800Mbps相当と動作クロックが低めに設定されている。そのパフォーマンスは従来のミドルレンジGPUの主流であったGeForce 6800 GSに大きく遅れをとり、RADEON X1600 XTをやや下回る結果となった(その差はベンチマークによって大きく変化している)。

 動作クロックと実売価格相当のパフォーマンスであるが、GeForce 7600 GSの評価ポイントはパフォーマンスよりもクロックを抑えたことで発熱も抑えたところにある。この特徴を踏まえてグラフィックスカードベンダーからファンレス仕様の製品がすでにいくつか出荷されている。

 前回紹介したWinFast PX7600GS TDHもその1つだが、Leadtekよりも早くGeForce 7600 GS搭載カードを発表したASUSの「EN7600GS SILENT」もファンレス仕様である。カタログスペックからはコアクロック400MHz、メモリデータ転送レート800Mbps(この値はビデオメモリ容量256MバイトのEN7600GS SILENT/HTD/256Mにおける値。ビデオメモリを512Mバイト搭載したEN7600GS SILENT/HTD/512Mはメモリデータ転送レートが540Mbps相当となる)とWinFast PX7600 GS TDHと変わらない。

GeForce 7600 GSを搭載したファンレスカード「WinFast PX7600GS TDH」(上)と「EN7600GS SILENT/HTD/256M」を並べた。基板サイズは両者同じ。EN7600GS SILENTのコネクタはDVI-IとアナログVGA出力、HDTV対応汎用端子が1つという構成になる

 しかし、基板の表側に搭載されていたWinFast PX7600GS TDHのヒートシンクと異なり、EN7600GS SILENTは基板の表側からカードを巻くようにぐるりと裏側までに達するヒートシンクを採用している。このような形態にすることでヒートシンクの表面積が増えて放熱効率は高くなる。

 WinFast PX7600GS TDHに搭載されているヒートシンクのサイズはフットプリントが約92.5×98ミリ。ヒートシンク底面からのフィン高は約10.5ミリ。表面積を増やすフィンの数は21枚、フィン間距離が約3ミリ、フィンの厚さは1ミリとなる。

 対してEN7600GS SILENTに搭載されているヒートシンクは基板表側のフットプリントが約98×98ミリ。ヒートシンク底面からのフィン高は約11ミリ、フィンの数は30で間隔が約3ミリ、フィン厚約1ミリ。基板裏側のヒートシンクはフットプリント約68×34ミリにフィン高7ミリ。フィンの数は9枚で間隔が約3ミリ、フィン厚1ミリ。そのほかに表と裏のヒートシンクをつなぐブリッジの部分が含まれる。

 裏にもヒートシンクが回っている分、EN7600GS SILENTのヒートシンクサイズは大きくなる。なお、表側だけを比較してもEN7600GS SILENTのフットプリントやフィンの数が多い。これは、表側と裏側を結ぶブリッジ部分の分だけフットプリントのサイズが伸び、エッジ部分にRをいれてその部分だけ感覚を狭めてフィンの数を増やしているためだ。

EN7600GS SILENTのヒートシンクは基板を巻くように裏側に達している。エッジにはRがはいってその部分だけ間隔を狭めてフィンの数を増やしている

 ヒートシンクの外見を比べるとEN7600GS SILENTは放熱効率が高いように見えるが実際のところはどうだろうか。以前掲載したGeForce 7900GTX SLIにおける消費電力と発熱の比較テストと同じ方法で、WinFast PX7600GS TDHとEN7600GS SILENTの消費電力と発熱を調べてみた。評価ではWinFast PX7600GS TDHのレビューで使用したAthlon 64 3500+中心のミドルレンジ構成を使い、ドライバにForceware 84.21を適用している。

ワットチェッカーで調べたGeForce 7600 GT、GeForce 6600 GT、GeForce 7600 GSファンレスカードの消費電力

3DMark03のゲームベンチを3回繰り返した後に測定したGPUの温度から測定時の室温を引いた値、ならびにアイドル動作時に測定したGPUの温度から測定時の室温をひいた値

 GeForce 7600 GSの消費電力はGeForce 7600 GTだけでなくファンを組み込んだクーラーユニットを搭載しているGeForce 6600 GTよりもはるかに低い。このデータからもGeForce 7600 GSの発熱が低いことが期待できる。

 だが、ヒートシンクと基板の間に差し込んだ温度計で測定した温度はGeForce 7600 GT、ならびにGeForce 6600 GTを上回っている。評価機材はPCケースに組み込まれていないため、ケースファンなどの空気の流れで熱を移動できない。熱の排出はヒートシンクの放熱に大きく依存しているわけだが、この状態で放熱性能はファンを組み込んだクーラーユニットに劣ってしまう。ファンレスカードを組み込んだPCではケースの冷却性能が重要であることがここからも分かる。

 アイドル時の温度はほぼ同じだったEN7600GS SILENTとWinFast PX7600GS TDHであるが、3DMark03のGTテストを3回ループしたあとでは摂氏2.4度の違いが出た。わずかながらEN7600 SILENTの放熱性能が高いことを示している。なお、Forcewareの温度表示機能ではどちらも摂氏74度を示していた。

 GeForce 7600 GSはコストパフォーマンスもさることながら消費電力もかなり低くなっている。その特徴を生かしたファンレスカードが数多く登場するのもうなずけるところだが、しかし、カードの温度が低くなっているわけではない。システム全体の冷却性能が高くないとファンレスカードが十分冷却できないことが今回のデータからもうかがえると思う。

 ファンレスカードを導入するユーザーは静音性能を重視したシステム構成になっていると思うが、ファンレスカードを採用するならば、十分な冷却対策をほかの部分で施しておく必要があるだろう。

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