「Viivの進む道」をキーマンのレジンスキー氏に聞くIDF Japan 2006

» 2006年04月10日 16時57分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

 2006年1月、Intelはモバイル向けの“Centrino テクノロジー”に次ぐ2番めのプラットフォームブランドとなる「Viiv テクノロジー」を立ち上げた。Viivは、Intelがコンシューマーエンターテインメントのために用意するプレミアム・プラットフォームに冠せられるブランドであるものの、わが国においてその認知度はそれほど高くないのが実情だ。

 Intelは現状でのViiv、あるいはViivに対応したPCは、理想のコンシューマーエンターテインメントPCのビジョンに向けた「第1歩」であるという。現状だけでViivを判断して欲しくない、とも述べている。

 では、Intelは今後どのようにViivを発展させていこうとしているのだろうか。IDF Japan 2006に合わせて来日したデジタルホーム事業本部ネットワーク・メディア・プラットフォーム事業部のビル・レジンスキー事業部長に聞いてみた。

基調講演という重労働の直後なのに、快くインタビューに応じてくれたビル・レジンスキー氏

──Intelはコンシューマープラットフォームをどのように発展させていこうとしているのでしょうか。

レジンスキー氏 われわれはコンシューマープラットフォームをさらに3つのセグメントに分けて考えています。1つはエクストリームゲーマーで、Pentium Extreme EditionとIntel 975Xチップセット、グラフィックスカードの2枚利用、Matrix RAIDなど、ひたすら性能を追求するセグメントです。将来的にはConroe(ベースのExtreme Edition)コアCPUが使われることになるでしょう。

 2番めのプレミアムデスクトップは、スタイリッシュな小型PCのセグメントです。ここではモバイル向けのIntel Core Duo(開発コード名はYonah)とモバイル向けのチップセットであるIntel 945GM、あるいはこれをクロックアップすることでデスクトップPC向けにグラフィックス性能を強化したIntel 945GTチップセットが使われます。将来的には(開発コード名)MeromコアCPUに切り替わる見込みです。

 メインストリームは、現在CPUにPentium DやIntel 945チップセットが使われているセグメントで、将来的には(開発コード名)ConroeコアCPUが使われることになるでしょう。

──Viivのプラットフォームを構成する技術のロードマップもOEMから伝わってきたりするのですが、技術ロードマップを公開することはしないのでしょうか。

レジンスキー氏 技術ロードマップについては、NDAベースでパートナーに公開しています。しかし、あまりに詳細な技術について発表することは、かえって消費者に混乱を招くのではないでしょうか。現在公開している内容では、2006年の後半にネットワークの簡単なセットアップや、メディアサーバ機能、リモート機能の強化などがViivに追加されることになっています。

──コンシューマー向けPCは、企業向けPCに比べても、国や地域による嗜好のバラつきが大きいのではないかと思われるのですが。

レジンスキー氏 その通りです。米国では今も大型の筐体を用いたパワフルなPCが好まれます。が、日本では小型のスタイリッシュなものが主流です。韓国も日本とほぼ同じ傾向で、欧州は日本と米国の中間というところでしょうか。

──Intelは、個々の地域と嗜好に合わせてプラットフォームを細かく調整するつもりなのですか。

レジンスキー氏 Intelが行うのは、あくまでもプラットフォームを構成するコンポーネントの提供です。CPU、チップセット、ソフトウェア、さらにViivの場合はコンテンツも含まれます。これらのコンポーネントを使って、それぞれの国や地域にふさわしい製品を作るのは、システムベンダの役割です。

──コンテンツの領域に踏み込んだ点はViivの特徴の1つだと思うのですが、コンテンツこそ地域差の非常に大きな分野であり、活動が難しいのではありませんか。

レジンスキー氏 そうです。言語、好まれるコンテンツの内容、さらには政府の法規制など、非常に大きな違いがあります。Intelがコンテンツの分野で果たしたいと考えているのは、コンテンツ所有者にIntelのプラットフォームで何ができて、それを有効に活用するにはどうするべきなのか、ということを説明することです。また政府には、有効な著作権管理とはどのようなものか、ということを説明しています。

 最後に、コンテンツ所有者とコンテンツを実際に提供するサービス会社との仲立ちをして、1日も早くコンテンツが公開される手助けをしています。Intelの役割はさまざまな啓蒙活動などを通じてエコシステムの構築に努めることであって、Viivプラットフォーム向けにコンテンツを所有したり管理したりということを行うつもりはありません。日本でも電波産業界(ARIB)、コンテンツ関連で吉本興業やフェイス、ミドルウェアのデジオン、ネットワーク機器のバッファロー、さらには多くのPCベンダや家電メーカーと折衝しています。

──コンテンツ、とくにオンラインコンテンツの問題は、個々のユーザーが利用できるネットワークの帯域によってユーザーの満足度が異なってしまう、ということです。ネットワークの帯域が十分でなければ、ViivのロゴがついたPCであってもViivが提供するコンテンツを満足に楽しめないかもしれません。これではViivの価値を訴求しにくいのではありませんか。

レジンスキー氏 オンラインコンテンツの利用が帯域に依存することは事実です。そこでViivについても、まずブロードバンドの普及した国から始めることにしました。また、必ずしも十分な帯域が得られない国や地域については、帯域依存度の高いストリーミングではなく先にダウンロードさせたりプログレッシブダウンロードでコンテンツを提供するように、コンテンツ所有者やサービス事業者に説明しています。

──比較的平等に帯域を保証しやすい技術としては、通信衛星を使った配信サービスがあり2006 International CESでも米国向けサービスの発表があったのですが、同様なサービスをほかの国で展開する予定はあるのでしょうか。

レジンスキー氏 米国では放送と通信の競合が激しくなっており、ケーブルTV会社が通信サービスを提供するのはもちろん、電話会社がIPベースの放送サービスに参入する例も見られます。衛星TVの会社も通信サービスを提供したいと考えたわけです。現時点で、通信衛星のサービスについて米国以外で提携する予定はありませんが、米国の事例から解消すべき問題や成功するためのポイントなどが明らかになれば、それを他国に持っていくのは容易でしょう。

──米国ではESPNなどTV局との提携が実現しています。日本のコンテンツに占めるTVの割合は非常に大きく、TV局との提携が実現すれば大きなインパクトになると思われるのですが、現時点でそのような提携について何か話してもられることはありませんか。

レジンスキー氏 日本では日本のチームがさまざまななコンテンツベンダと話し合いを持っていますが、現時点でお話できることは残念ながらありません。

レジンスキー氏はIDF Japan 2006で行った基調講演の冒頭で“けっこう長い”日本語の挨拶を行った。画像は日本語のスピーチが終わった直後のレジンスキー氏

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