垂直記録方式を採用した3.5インチHDD「Barracuda 7200.10」説明会

» 2006年05月11日 23時07分 公開
[小林哲雄,ITmedia]

 シーゲイトは垂直磁気記憶への対応表明はやや遅れたものの(1.8インチの東芝、1インチのHGSTに続いて3番手)ではあるものの、2006年に入って2.5インチと1インチの製品で積極的に採用製品を発表してきた。そのシーゲイトが5月11日に日本の関係者に向けてPC市場のメインストリームとなる3.5インチHDDで初めて垂直磁気記憶技術を採用した「Barracuda 7200.10」の説明会を行った。

 説明会では、HDDの解説に先立って日本シーゲイトの広報を担当する藤森 英明氏から現在の市場動向が説明された。それによると2006年第2四半期から第3四半期にかけてデスクトップPC向け製品のシェアが落ちる予測が示された。これは低容量ドライブの出荷を抑えるためで、大容量ドライブ(200Gバイト以上)に限定するとシーゲイトはシェアを伸ばしていく見通しとなっている。

デスクトップ向けHDDのマーケットではトップを守るものの33%から31%にシェアを落とすとシーゲイトは予測している
その一方で大容量HDDのマーケットでは一貫してシェアを伸ばしているのが分かる

垂直記録だけでなくヘッドの浮上量を制御する技術も

 今回のBarracuda 7200.10は大容量にフォーカスした製品だ。最大の特徴はコンシューマー向け3.5インチHDDで世界で初めて垂直磁気記録プラッタを採用したことだ(先に発表されたエンタープライズ向けのCheetah 15K.3は2.5インチプラッタを採用している)。垂直磁気記憶は大容量に向いた技術で、Barracuda 7200.10のプラッタ容量は最大188Gバイト/プラッタ、128Gビット/平方インチに達する。従来モデルの最大133Gバイト/プラッタ、106Gビット/平方インチと比べるとプラッタ1枚あたりで40%の容量アップ、ドライブ全体では50%のアップとなっている。

 Barracuda 7200.10のラインアップは200〜750Gバイトと大容量ドライブのみとなっており、従来モデルのBarracuda 7200.9の40〜500Gバイトといった広いユーザーをカバーしていた構成と異なる。低容量製品の需要に対しては従来モデルで対応するとシーゲイトは説明している。

 キャッシュメモリは200Gバイトと250Gバイトのモデルが8Mバイトで250/320/400/500/750Gバイトモデルが16Mバイトとこちらも多い。流体軸受けで低騒音(アイドル2.7ベル、シーク時3.0ベル(ただしquietモード動作時)。Serial ATAモデルは当然ながら3.0Gbps転送とNCQをサポートしている。

 また、信頼性を上げる2つの取り組みがなされている。その1つの「Clean Sweep」はパワーオン時にヘッドがプラッタ全域の表面検査を行うことでメディアの均一性を保つ機能を強化している。メディアには潤滑剤が塗ってあり、これを毎回均一にならすイメージだ。この過程が入ってもパワーオンレディ時間は15秒で従来と変わらないとシーゲイトは説明する。

 もう1つが「Adaptive Fly Height」だ。HDD内部でヘッドがプラッタと離れすぎているとデータの読み書きが正常に行えない。しかし浮上量を下げすぎるとヘッドとプラッタがぶつかる可能性が増す。ヘッドと高速で回転するプラッタが接触すると最悪の事態である「ヘッドクラッシュ」が発生する。

 その一方で「線速度が違うために内周と外周でヘッド浮上量が異なってくる。また、温度が変わると空気密度も変わるのでそれにともなってやはりヘッドの浮上量が変わる」(日本シーゲイト フィールド・アプリケーション・エンジニア部 シニア・マネジャー 佐藤之彦氏)という。そこでシーゲイトではヘッドを空気流で浮き上がらせる部品「スライダー」に工夫を凝らし、電気で制御する「可変ウイング」でヘッドの浮上量をコントロールする方法を採用した。

 記者は以前「3.5インチは次世代の166Gバイト/プラッタまで水平記録でできるめどがたっている」「垂直磁気記録はエンタープライズ市場向けの製品にはしばらく採用しない」というコメントを聞いていたが、結局どちらの市場でも垂直磁気記録を採用した製品を発表した。この理由としてシーゲイトは垂直磁気記録の開発と採用製品の製造が順調で今回の発表(それにともなう出荷)も予定より数カ月前倒しになっていると説明している。

真のハイパフォーマンス製品はトップモデルで

 なお、Barracuda 7200.10のスペックで「最大」188Gバイト/プラッタと書いたのには理由がある。資料を読むとモデルによって平均プラッタ容量が異なっているのだ。

Barracuda 7200.10の平均プラッタ容量
モデル750500400320250200
ヘッド865433
平均プラッタ容量187.5166.7160160166.7133.3

 従来モデルはラインアップの最大容量製品で平均プラッタ容量が抑えられていたが(500Gバイトモデルはプラッタ容量が125Gバイトだった)、今回のラインアップを見ると750Gバイトモデルだけプラッタ容量が突出している。実際の転送レートは線密度だけで左右されるわけでないが、最も高いパフォーマンスを発揮するのは最上位モデルの750GBモデルである可能性は高い。

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