キヤノン製ドキュメントスキャナDRシリーズの最大の特長は、自社の業務システムからDRシリーズの全機能を自在に制御・活用できるようにするソフトウェア開発キット「CapturePerfect SDK」が提供されている点だ。今回は同キットにフォーカスし、どこまで簡単にDR-5010Cを活用できるかを探ってみたい。
前回の記事でドキュメントスキャナ「DR-5010C」と、高機能とシンプルな操作性を実現したスキャンユーティリティ「CapturePerfect 3.0」の大まかな機能を知っていただけたと思う。
しかし、ビジネスの現場において、この2つが提供する価値は、単純な電子文書化による省力化だけにはとどまらない。単体のドキュメントスキャナとしてトップクラスの実力を誇る原稿搬送能力や高画質スキャン、それにOCR機能、PDF機能といった付加機能を、自社のアプリケーションの中で自在に活用するための道筋が付けられている点にもっとも注目すべきだろう。
今回はVisual Basicでの活用を意識した高機能のソフトウェア開発キット「CapturePerfect SDK」を通して、どこまで簡単にDR-5010Cを活用できるかを探ってみることにしたい。
前回の記事でも簡単に紹介したように、CapturePerfect SDKとはWindowsのDLL(ダイナミックリンクライブラリ)として提供される、キヤノンDRシリーズとアプリケーションの間をつなぐAPIセットである。
スキャナの機能にアクセスするためのAPIとしては、以前からTWAINやISISといった規格があり、それぞれのドライバをインストールすることで、さまざまな機種に対応できる。もちろん、DRシリーズもそれらのAPIを利用可能だが、TWAINはそもそもの設計が古くプログラミングが煩雑だったり、スキャナが持つすべての機能を活用できないといった問題もあった。また高速なスキャンが可能になるISISは、ランタイム開発元への頒布ライセンス料金が必要になる場合があるといった別の問題もある。
そこでCapturePerfect SDKでは、ISISを通じた高速スキャン、OCRやPDF生成といった機能など、CapturePerfect 3.0の持つ機能を呼び出すことで、DRシリーズが提供するほとんどすべての要素をカスタムアプリケーションの中で活用可能にしている。つまり、CapturePerfect 3.0の主要機能を構成する核となる部分を、コンポーネントとして利用できるのである。ISISのライセンスはキヤノンが取得し、CapturePerfect SDKから呼び出しているため、別途SDKのユーザーに対するライセンスフィーは発生しない。
CapturePerfect SDKは6万4800円(税別;購入後3カ月のサポート付き)という低価格ながら、SDKを用いて作成したアプリケーションの頒布は自由。同種のライブラリ集としては破格と言っていい自由な使い方ができる上、低価格だ。また、現行すべてのキヤノンDRシリーズに対応するため、導入する部署や用途に応じて異なる性能のスキャナを複数台配置する際、あるいは将来的に新機種へのリプレースや追加購入を検討している場合にも有利と言える。
対象としている開発環境は、Visual C++ 6.0 SP5以降およびVisual Basic 6.0 SP5以降(以下、VBおよびVB6)。VBはその後2回のバージョンアップを経ているが、CapturePerfect SDKが対応しているのはVB6のみという点は注意していただきたい。VB6の次のバージョンからは.NET環境を意識した開発環境へと大きく変化しており、サンプルソースコードにもコンバート作業と手直しが必要となる。動作の保証も行われていない。
とはいえVB6はWindows上で非.NETアプリケーションを開発する環境として、現在も幅広く使われている。今回の記事でもVB6を中心に紹介を行っていこう。
VB6向けのソフトウェア部品集の中には、OCXコントロールとして動作し、フォームに透明部品として貼り付けてプロパティを設定。内部でメソッドを実行することで機能するタイプの製品もあるが、CapturePerfect SDKはDLLとして提供されているため、プログラム内で呼び出しDLLを定義しておき、外部プログラムとして呼び出す形式を取っている。
呼び出すAPIはCP3API.DLLだが、SDKに含まれているCappeAPISampleというVBプロジェクトファイルをVB6で開けば、その中には必要な宣言やライブラリのロード方法、エラーハンドリング用サブルーチンなどがすべて含まれており、これらをコピーして再利用することができる。また、APIとして実装されているすべての機能にこのサンプルアプリケーションからアクセスできるため、このソースコードを見ていけば、自プログラム内でCapturePerfect SDKを利用するために必要なすべての作法を学ぶことが可能だ。
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提供:キヤノンマーケティングジャパン 株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年6月19日