日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)は米国で発表された垂直磁気記録方式採用の2.5インチHDD「Travelstar 5K160」の国内向け説明会を行った。
同社の鈴木良氏(HGST取締役HDDプロダクト本部長)は熱ゆらぎの影響(記録密度が高まってデータビットを構成する磁性粒子が小さくなることで磁化方向が室温でも反転してしまう)によって従来の面内磁気記録方式で記録密度の伸び率が低下している現状を述べ、垂直方向に磁化される垂直磁気記録方式(PMR)は面内磁気記録のデータビットよりも記録密度の向上に有利であると説明。PMRの採用によって年率40%の記録密度が伸びていくという見通しを示した。
HGSTはPMRをHDDに採用する理由として、利用できるコンテンツが急速に増えて膨大なHDDストレージ容量がユーザーから求められている市場の動向を紹介。大容量HDDの供給は「私ども(HGST)の使命である」と考えるHGSTはPMRを採用してHDDの大容量化を図っていくと語った。
同社は今後もPMRを全ラインアップで採用していく計画で、今年後半には1.8インチHDDでPMR採用ドライブが登場し、時期は明らかにしなかったものの3.5インチHDDでもPMRを採用するなど、「今後開発し投入するHDDはすべてPMRを採用する」(鈴木氏)予定になっている。
日立製作所をはじめとする日立グループにあってPMR採用HDDはグループ全体で開発に取り組む「特研体制」扱いになっている。そのため日立グループ各社の技術を利用することで、ただPMRを採用しただけでなく「日立独自の材料構成と磁性層製造プロセスによる耐腐蝕性を高めた」(HGST資料より)PMRプラッタやイリジウム−マンガンクロム合金を採用した磁気安定性の高いリードヘッド素子をTravelstar 5K160に投入することで、同じPMRを採用した競合HDDとの差別化を図っている。
HGSTが市場に投入したはじめてのPMR対応2.5インチHDD「Travelstar 5K160」のラインアップには160Gバイト、120Gバイト、80Gバイト、60Gバイト、40Gバイトが用意されている。160Gバイトと120Gバイトはプラッタ2枚、そのほかはプラッタ1枚構成でプラッタ容量は80Gバイト(記録密度は131.5Gビット/平方インチ)となる。
回路設計の見直しやHigh Voltage Efficiency Regulatorの採用で低消費電力化を実現。このことで動作時の発熱低減と低騒音化を可能にしている。HGSTが行ったベンチマークテストPCMark05 HDD ScoreでTravelstar 5K160は従来の2.5インチHDDに比べて6〜29%の性能向上を示したとHGSTは説明している。
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