「勝負は同じ土俵でやらないか?」──モバイルCPU市場でAMDもインテルを牽制

» 2006年06月08日 18時10分 公開
[岩城俊介,ITmedia]
photo AMD CTOのPhil Hester氏

 日本AMDは6月8日、都内ホテルで同社テクノロジ戦略に関する日本国内の記者・アナリスト向け説明会を開催した。なお、AMDは1日にカリフォルニア州サニーベールの本社で同様の説明会をすでに行っている(関連記事参照)

 同社は2006年5月以降、Socket AM2対応のAthlon 64 X2やAthlon 64 FX-62、モバイル向けデュアルコアCPUであるTurion 64 X2などの新たなCPUやテクノロジ、ホームエンターテインメント向けプラットフォーム「AMD Live!」など、ここ最近、2006年以降に向けた新たなアーキテクチャを精力的に発表している。

 昨今、同社がターゲットとする市場(サーバ、デスクトップ、モバイル)には「継続的なパフォーマンスと消費電力効率の改良」「シングルスレッドとマルチスレッド、双方の性能バランス」「さまざまなワークロードにおける高性能さ」「簡単かつ早急に対応できうる、カスタマイズ可能なアーキテクチャ」が望まれる。AMD CTO(最高技術責任者)のPhil Hester氏は「適正なときに、適正な技術を投入することが重要」と述べ、例えばDDR2に対応するSocket AM2プラットフォームの投入時期も、価格や流通量、ニーズを含めて“適正”と判断した結果だと自信を見せる。

 次世代のサーバ・デスクトップ向けアーキテクチャには、サーバ/ハイエンドデスクトップ向けに65ナノプロセスのクアッド(4)コア、デスクトップ向けにデュアルコアCPUがあり、2007年の投入を予定する。とくに電力効率──ワット当たりのパフォーマンス向上やプラットフォーム(ソケット)の共通化に加えて、各コア共用となる2Mバイト以上のL3キャッシュの採用、Enhanced RAS、Enhanced virtualization(仮想化環境技術)などが盛り込まれる。アプリケーションの使用状況により各コアの周波数をダイナミックに調整し、かつコアのオン/オフを制御する技術「DICE」(Dynamic Independent Core Engagement)の導入により、半分以下の消費電力で稼働させることも可能となる。ワット当たりのパフォーマンスは2007年に60%、2008年に150%と大幅な向上を見込んでいる。

photophoto 2007年投入予定のサーバ/デスクトップ向けCPUの概要。新たなクアッドコアCPUは65ナノプロセスで製造され、L1/L2キャッシュは各コアごと、L3キャッシュは各コアで共用する仕組みを採用する
photophoto 2008年までのサーバ/デスクトップ向け製品のロードマップ

 3Dゲーマーなどを中心とするハイエンド・パワーユーザーデスクトップ向けに、コードネーム「4x4(フォーバイフォー)」プラットフォームの計画も明かされた。4x4はデュアルコアCPUを2つ、デュアルGPU搭載グラフィックスカード2枚(NVIDIA SLIないしCrossFire)をDirect Connect Architectureで接続し、4つのコアと4つのGPUで構成。システム全体でクアッドコアCPU相当のパフォーマンスを実現するというもの。クアッドコアCPU搭載もサポートされ、クアッドコアCPU×2/8コア構成での運用も想定されている。導入当初はシングルCPUで、追ってマルチCPU構成にするといったコンシューマユーザーのニーズに沿ったシステムアップが行えるのも特徴となる。

 サードパーティが特定の演算コプロセッサを「HyperTransport HTX」アドインカードとして用意し、機能追加を可能とするHTX拡張スロットを搭載する「Torrenza」プラットフォームの投入も現実的になった。主にOpteron構成となるサーバ向けプラットフォームとして、暗号/復号化処理や解析・計算処理などの特定用途においても共通プラットフォーム上で利用でき、大幅な処理高速化が望めるとしている。なおHTXスロットはデスクトップ向けプラットフォームにも採用する可能性があることも示唆し、すでにベンダー4、5社がHTXカードを開発しているという。

photophoto 4x4(画像=左)およびTorrenza(画像=右)のプラットフォーム構成概念図
photophotophoto モバイル向けCPUのダイ解説図(画像=左)とロードマップ(画像=中、右)。2007年投入予定の新コアモデルは、65ナノプロセスとHyperTransport 3.0などに、プラットフォームはHDMIやHDソースの再生支援、ハイブリッドHDDなどへの対応が予定される

 モバイル向けCPUとして先日同社は、デュアルコアのTurion 64 X2を投入したが、2007年にはノートPCでの利用に特化し、ワット当たりのパフォーマンスをさらに高めた新コアのモデルを投入する。同CPUは、高速インタフェース「HyperTransport 3.0」やダイナミックにコアのオン/オフやコア周波数を調整する機能などを備え「2倍以上の効率アップが望める」(Hester氏)という。ほか、HDMI/HD Video再生時におけるハードウェアアクセラレーションやハイブリッドHDD(関連記事参照)、IEEE 802.11n/3Gなど新たな規格への対応が予定される。

 なおインテルは6月に入り、新たなCPUとチップセットを発表し、COMPUTEX TAIPEI 2006会場ではIntel Core 2 Duo Extremeを中心に、AMDを強く意識したデモを行っている。

 「このような、インテルによるCore 2 Duoのアピールについてどう思うか。どのような形で対決していくのか」という記者質問でHester氏は「モバイル向け製品はとりわけ、ワット当たりのパフォーマンスが重要だ。そこでのパフォーマンスはナンバーワンだと自負している」と述べながらも、それを計る業界標準の“ものさし”がない現状を嘆き、業界標準のベンチマークツールを業界で協議して作りたいとした。「加入を拒んでいるインテルにも参加してもらいたいところだ」(Hester氏)と語尾を上げ、AMDもインテルを牽制する。

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