第1回 果たしてWindows Vistaはテイクオフできるのか?元麻布春男のWatchTower「Windows Vista編」(1/2 ページ)

» 2006年06月13日 08時30分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

2006年は5年ぶりの“Windows Year?”

Windows Vistaのロードマップ。コンシューマーとOEM向けは2007年1月にリリースされる予定だ

 2006年は、久しぶりにマイクロソフトから新しいWindows、Windows Vistaがリリースされる予定の年だ。現在使われているWindows XPのリリースが2001年11月だから、同社がいうように、たとえボリュームライセンスを持つ大企業向けだけになるとしても、11月にWindows Vistaをリリースできれば、ちょうど5年ぶりのメジャーバージョンアップとなる(一般向けのリリースは2007年1月とされている)。

 通常、企業ユーザーは、新版のソフトウェアが正式リリースされたからといって、すぐに導入することはない。さまざまな評価を行い、その評価が良好であれば、具体的な導入計画をたて、順次導入を始める、という段階的なステップを踏む。11月にリリースされても、それは正式版による評価のスタートであり、必ずしも実使用を意味するものではない。にもかかわらず、同社が11月のリリースにこだわるのは、5年という歳月の重みを知っているからなのだろうか。

 1985年11月(これまた11月なのだが)にリリースされた最初のWinodws 1.0以降、同社はおおむね1年から4年程度で、Windowsのメジャーバージョンアップを行ってきた。5年も間隔が空くというのは、異例のことである。同社自身、サーバOSのリリース戦略として、4年サイクルのメジャーバージョンアップと、その中間でのリリースアップデートを公言しているくらいだ。

Windows Vistaのラインアップが増えた理由

 なぜ間隔を空けすぎると良くないのか。間隔が空くと、それだけ対応せざるを得ない技術進歩が増えるし、市場の変化も激しくなる。必然的に、OSに盛り込む新しい機能が増え、開発とテストを困難にする。Windows Vistaもその例外ではない。

 同時にこれは、古いプラットフォームと新しいプラットフォーム間で機能や性能の乖離(かいり)が大きくなるということでもある。5年前、Windows XPをプリインストールして販売されたPCと、2007年1月にWindows Vistaをプリインストールされて販売されるであろうPCの差が大きくなればなるほど、新しいPCが売りやすくなる一方で、アップグレード市場は縮小していく。

 この問題を回避するため、MicrosoftはWindows Vistaで機能差を設けた複数のパッケージを用意しようとしている。たとえばコンシューマー向けであればHome Basic、Home Premium、Ultimateの3ランクが用意される見込みだ。それぞれのパッケージ間には、機能差だけでなく価格差も設けられる。

 最も低価格のパッケージとなるHome Basicには、喧伝されるWindows Vistaの新機能の1つ、新ユーザーインタフェースのWindows Aeroは実装されない。これを「廉価版では必要な機能さえ削るMicrosoftはひどい」とか、「一貫性に欠ける」と批判するのはたやすい。が、おそらく5年前にWindows XPがプリインストールされて販売したPCにAeroを無理矢理インストールしても、良好なユーザー体験は得られないだろう。それだけAeroをはじめとするWindows Vistaの新機能の負荷は高い。それどころか、現状のベータリリースを前提にすると、昨年のPCですら危ないと感じるほどだ。

Windows Vistaの各Editionとサポートする機能表
機能 Home Basic Home Premium Ultimate Business Enterprise
IE7+
WMP11
Aero Glass
Remote Desktop
Virtual PC Express
BitLocker
Domain Logon
Media Center
Tablet PC


 古いPCにメモリを増設し、プロセッサのアップグレードを行い、グラフィックスカードを最新のものに交換する、といった作業を行うくらいなら、新しいVistaプリインストールPCを購入した方が安くつきかねない。そういう意味では、機能を落としたパッケージの存在は、安価な「今」のPC向けという側面だけでなく、高価だった「過去」のPC向け、という意味合いもあるのだと思う。

 前回、Windows XPにおいてはHomeとProfessionalの2つが展開された。Home EditionはProfessionalの単純な機能削減版ではあったが、特別な性能面での差異はなかった。Windows 2000のリリースから1年8カ月の間隔で出されたWindows XPには、性能的に劣る古いPCへ配慮する必要は、それほどなかったからだ。しかし、Windows Vistaは5年の間隔が生じてしまったがゆえに、OS的にはわずか1世代前であるにもかかわらず、古いPCにおいてWindows Vistaの全機能をサポートすることができない状況になってしまった。

今年の夏モデルから市販PCに貼られるようになったWindows Vista Capable PCシール

 1つのポリシーとして、最新版OSへのアップグレードは行わない、という考え方もできなくはない。しかしそれでは5年前のPCの人はまだしも、この夏に新しいPCを買う人は納得できないに違いない。夏モデルには、Windows Vista Capable PCというVistaが動くむねのロゴシールさえ貼ってあるのだ。また、そうした措置を行わなければ、メーカーは買い控えの心配をしなければならないハメとなる。結局、Vistaの全機能が利用できなかろうと、初期のWindows XPマシンにも導入できそうなパッケージを用意するしかない。Microsoftとしては、新規プリインストールはHome Premium/Business以上にして欲しい、というのが本音で、Home Basicはサンキュッパ(3万9800円)の激安PCや過去のPCのアップグレード用だと思っているのだろう。

左の画面がAero Glassをオンにした状態で、右の画面がAero Glass非対応のHome Basic Editionだ。前者ではスタートメニューから飛び出たアイコンの配置や、ウィンドウ枠の透過などが可能だ。
Windows Vistaで採用されたシステム用のClearTypeフォント「メイリオ」とWindowsサイドバーに追加可能なガジェット(画面=左)。右の画面はタスクスイッチのFlip 3Dで、ウィンドウが3D表示される
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