中国純正CPU「方舟」沈没山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2006年07月10日 11時48分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

中国独自CPU「方舟」が沈没したわけ

 中国が独自に開発してきたCPUはいくつかあるが、その最も早期に開発されたものの1つが方舟(英語名ARCA)という名のRISC CPUだ。この方舟を開発してきた方舟科技が突然その開発中止を発表した。

 方舟は「方舟1号」から「方舟3号」まで開発されていたが、実際に市場に出回ったのは方舟1号(Arca1)と方舟2号(Arca2)である。2001年5月にリリースされた1号は動作クロック166MHz、L1キャッシュは8Kバイト+8Kバイトというスペック。レノボ(聯想)など複数の中国企業が同CPUを採用したネットワーククライアントを販売した。2号は2002年12月にリリースされ動作クロックは330MHz〜400MHz、L1キャッシュは8Kバイト+8Kバイト。こちらもFounder(方正)など複数の中国企業が同CPUを採用したネットワーククライアントを販売した。いずれのネットワーククライアントもLinuxをOSとしている。

 同社のWEBページによると、方舟3号のスペックは動作クロック500MHz〜600MHz、L1キャッシュは16Kバイト+16Kバイトとなっているが、先に述べたように開発は中止されリリースされることはなかった。方舟科技の社員が「中関村(北京にある中国版シリコンバレー)の人間なら誰でも知っている失敗作」という発言は、パフォーマンスが思ったより優れていなかったことをうかがわせる。

 方舟1号、方舟2号を搭載したネットワーククライアントは、コンシューマー市場はさておき、ビジネス市場では政府のネットワーククライアント導入推進政策によって数万台が北京市で販売された。方舟科技が受けた優遇措置として、この政府による大量購入のほかに官民さまざまな機関からの大規模投資も行われた。順風満帆の航海が約束された方舟科技は、あろうことか2004年に破産の危機に直面する。

 方舟科技の董事長(トップ職)である李徳磊氏は方舟開発中止の原因を「市場がなく儲からないから」と話す。しかし、方舟科技は破産の危機に直面したその一方で方舟大厦という巨大なビルを施工している。中国政府をはじめ多くの機関から研究費としてかき集めたお金を無駄遣いしCPUの研究を怠ったのではないか、という論調で多くの中国メディアはこの方舟事件を紹介している。

左が方舟1号の構成で右は方舟2号の構成。2号ではUSBやLANのコントローラを内蔵している

方舟のロードマップ。0.18マイクロプロセルルールを採用して動作クロック600MHzを目指した3号はついに陽の目をみなかった

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