“ポストレーザープリンタ”の実力は?――「HP Officejet Pro K850dn」(1/2 ページ)

» 2006年07月12日 08時00分 公開
[榊信康,ITmedia]

レーザー/インクジェットのいいとこ取りを図ったK850シリーズ

photo 日本ヒューレット・パッカード「HP Officejet Pro K850シリーズ」。有線LANと自動両面ユニットを備えたK850dn(写真)とそれらを省いたK850がある(+D Shoppingで最安値をチェックする)

 6月16日、日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)はオフィス向けインクジェットプリンタ「HP Officejetシリーズ」の新製品として、A3ノビ対応のOfficejet Pro K850シリーズを発売した。その製品コンセプトは、ポストレーザープリンタとでも言うべきだろうか。周知のようにインクジェットプリンタはフォトプリントが全盛を極めている。製品の多くが多色化しており、概してランニングコストが高くなりがちだ。また、スピードは遅く、給紙容量は少ないなど、ビジネスで用いるには甚だ心許ない仕様になっているものが多い。

 一方でレーザプリンタ市場においては、カラーレーザーの伸び率が高い。しかし、A3クラスのカラーレーザープリンタとなると、イニシャルコスト、ランニングコストともかなり高くなる。また、本体のサイズも大きくなるため、小規模のオフィスには導入しにくい。

 このような両者の欠点を吸収して、オフィスでの利便性を高めたのがK850シリーズだ。ラインアップは高速エンジンを搭載したスタンダードモデルK850のほかに、自動両面ユニットとネットワーク機能を標準装備したK850dnを用意する。K850とK850dnの実売価格差はわずか1万円しかないので、ここは後者のK850dnを中心に紹介していこう。

 なお、K850シリーズの対応OSはWindowsのほか、Mac OS X 10.2.8以降となっている。

photo A3ノビ対応機ゆえ、それなりの設置スペースが必要だ。ACアダプタのサイズも80(幅)×149(奥行き)×45(厚さ)ミリと大柄だ。K850dnはボディサイズが610(幅)×525(奥行き)×205(高さ)ミリ、重量は14.3キロ、K850は610(幅)×434(奥行き)×205(高さ)ミリ、重量は12.3キロと若干の違いがある。なお、排紙トレイを最大まで伸ばすと約20センチほど出っ張る

印刷速度も便利な自動両面ユニットを標準で備えるK850dn

プリント速度(A4モノクロ1部)
A4モノクロ片面(普通紙/J1/テキスト)
ドラフト 5秒8
はやい(標準) 7秒5
きれい 9秒4
A4モノクロ両面(普通紙/J1/テキスト)
ドラフト 29秒8
はやい(標準) 36秒4

 まずはプリントエンジンの仕様だが、ビジネス機で肝要なのは、やはりプリントスピードだろう。この点、K850dnの公称プリントスピードはモノクロが24枚/分、カラーが21枚/分(いずれもA4)となっている。さすがに標準プリントサンプルを用いたベンチマークテストでは、ここまでの速度は出せていないが、高速と呼べるレベルには達している。


プリント速度(カラー1部)
A3ノビ(プレミアムプラスフォト/JIS 2004 N3RGB)
高画質 16分15秒5
最大dpi 18分25秒7
A4(プレミアムプラスフォト/JIS 2004 N3RGB)
高画質 7分13秒5
最大dpi 8分4秒
L判フチあり
高画質 2分2秒6
最大dpi 2分18秒9

 残念なのは、自動両面印刷で極端な速度低下が見られたことだ。片面印刷ならば13秒弱(約6秒×2枚)の原稿が、自動両面印刷ユニットを使用すると30秒近くかかる。急ぎのときには手動で両面印刷をしたほうがよいだろう。この場合、わざわざ奇数ページと偶数ページを分ける設定を行う必要はなく、プリンタドライバの「レイアウト」タブで、自動両面印刷ユニットを使用せずに両面印刷を行うように設定すればよい。あとは、印刷中に表示されるダイアログに沿って作業を行うだけで、両面印刷が完了する。

 なお、この自動両面印刷ユニットとドライバのブックレット印刷機能を使えば、簡単に小冊子を作成できる。自動ページ割りにも対応しており、簡単なパンフレットやマニュアルなどの印刷時に重宝するはずだ。

 ビジネス機としては、サポートするメディアの種類も気になるところ。これに関してもK850dnは、A3ノビ/A3/A4/A5/A6/B4/B5/ハガキ/L判/封筒/カスタム用紙サイズ(76×127ミリ〜330×2540ミリ)まで対応しており不満はない。K550ではハガキサイズの非対応が不評だったが、K850dnはしっかりと対応している。カード類は自動両面印刷ができないが、上記の手動両面印刷は、ほとんどの用紙で行える。ちなみにフチなし印刷には非対応だ。ビジネス機でそれほど必要とは思えないが、必須なユーザーは注意してほしい。

 ボディサイズは、ヘッド・インク分離型ということもあって、A3対応機にしては比較的小ぶりだ。基本的にフロントオペレーションの設計になっており、給紙・排紙トレイやインクスロット、ヘッドへのアクセスドアはすべて前面に用意している。ただし、メンテナンス用のドアは背面にあるほか、厚紙(0.4ミリ厚まで対応)へ印刷するような環境では背面から給紙するためのスペースを空けておく必要がある。メインのマルチパーパストレイは可変式になっており、セットする原稿のサイズに応じて、フロントへのセリ出しを調整できる。もっとも、給紙容量は最大150枚と少なく、トレイの増設も行えない。ビジネス機を名乗る以上はもう一声欲しかった気がする。

photo 100BASE-TX/10BASE-Tの有線LANやWebサーバ機能を標準で搭載するK850dn。そのほかにも、USB 2.0とパラレルポートを備える
photo K850dnには背面に取りつける自動両面印刷ユニットが付属する。K850用にはオプションで提供される(直販価格で1万4700円)
photo 給紙方法は前面のトレイに加え、前面と背面の手差しと3通りある。給紙トレイには最大150枚の用紙をセットできるが増設は不可だ

photo K850シリーズのドライバで、左は自動両面印刷ユニットを使ったブックレット印刷の設定画面。A3用紙にA4サイズで4ページのマニュアルを作るといった作業が、チェックボックスのオン/オフだけですむ。用紙幅センサをオンにしておけば、内蔵の赤外線センサが用紙サイズを自動的に判別してくれる(画面=右)
日本ヒューレット・パッカード「HP Officejet Pro K850dn」

日本ヒューレット・パッカード「HP Officejet Pro K850」

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