CanoScanシリーズ新モデルの内訳は、CCDモデルとCIS(Contact Image Sensor)モデルが各2機ずつとなる。その構成をざっと見るに、従来機と比べ中堅クラスを核としてラインアップを圧縮したようだ。最上位のCanoScan 9950FVはラインアップから姿を消し、代わりに新モデルのCanoScan 8600Fが最上位に据え置かれる格好となった。ハイエンドクラスは、どうしても複合機との喰いあいになるので、やむを得ない処置だろう。とはいえ、CanoScan 8600Fも従来の8000番台モデルから格段に機能を向上しており、最上位モデルとしても違和感はない。早速レビューをと言いたいところだが、8600Fだけは発売がやや遅れて9月中旬となっている。まずは先行して9月上旬に発売される、CISスキャナのLiDEシリーズを紹介していきたい。
CanoScan LiDEシリーズは売れ筋だけあって、従来通りのスタンダードモデルとフィルムスキャン対応モデル(Fモデル)という構成を貫いている。従来と異なるのは、Fモデルへの力の入れようだ。これまでのLiDEシリーズは、型番にFを付加していても、その機能や性能、操作性はおまけの域を脱しておらず、“取りあえず取り込める”というレベルでしかなかった。ここから脱却すべく開発されたのが、このCanoScan LiDE 600Fというわけだ。
CISスキャナをフィルムスキャン対応とするにあたっては、いくつかのネックがある。まず第一に挙がるのは解像度の問題だ。CISスキャナは、縮小光学系のように光学系で解像度を上げることができない。センサそのものを高解像度にする必要があるわけだ。このため、これまでは「CCDも安くなったことだし、わざわざコストをかけてまで高解像度CISを開発・搭載する必要はないのでは……」という理由から、ハイエンド向けの縮小光学系、エントリー向けの密着光学系という区分が行われていた。
ところがキヤノンは、この流れを変えるようにインラインの4800dpi対応CISをLiDE 600F用に開発・実装してきた。LiDEブランドの意地と言うべきか。無論、CISスキャナでは世界初の試みで、複合機への転用が容易なキヤノンならではの思い切った転換だ。のみならず、ラインアップにおけるLiDE 600Fの位置付けを8600Fに次ぐミドルハイにまで押し上げて(あくまで価格ベースの話だが)、かつてのCIS=エントリー向けという図式までも覆しにかかっている。
ベンチマークテスト | |
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反射原稿(A4) | |
プレビュー | 11秒18 |
200dpi | 20秒4 |
400dpi | 44秒4 |
800dpi | 2分11秒9 |
反射原稿(L判) | |
200dpi | 10秒2 |
400dpi | 17秒7 |
800dpi | 1分0秒4 |
フィルム(ネガ/24x36mm) | |
1200dpi | 1分16秒1 |
2400dpi | 2分51秒7 |
3600dpi | 12分53秒3 |
4800dpi | 13分29秒7 |
4800dpi(FAREオン) | 18分32秒6 |
フィルム(ポジ/24x36mm) | |
1200dpi | 34秒2 |
2400dpi | 1分33秒6 |
3600dpi | 6分48秒2 |
4800dpi | 6分55秒7 |
4800dpi(FAREオン) | 9分12秒5 |
とはいえ、解像度はクリアしたものの問題はまだ山積している。次なる課題はスキャンスピードだ。もともと、CISは特性上スピードアップが難しいが、これが高解像度で精度を出すとなると、高速化はより困難になる。実際にLiDE 600Fの仕様を見ると、ラインあたりの読み取り時間はLiDE 500FVに比べて約1.7倍(カラー/2400dpi時)にまで増加している。実際、右記のベンチマークテストの結果を見てもらえばわかるが、高解像度のフィルムスキャンは、かなりの時間を要している。
救いなのはフィルムスキャンに反して、反射原稿スキャンのスピードが高速なことだ。大抵の場合、高解像度スキャンがここまでの速度だと、低解像度もそれなりに引きずられるものだが、LiDE 600Fでは両極端な結果となった。これは、LiDE 600Fが1200dpiと4800dpi用に2種のギアを用意して駆動系を制御しているためだ。高解像度での速度低下は割り切り、低解像度への影響を抑えようという手法である。
CISは被写界深度の浅さから、どうしてもスキャンできるフィルム種が限られる。しかも、LiDEシリーズはUSBケーブル1本で動作するワンプラグスキャンを身上としており、FAUにも消費電力の制限が重くのしかかる。結論から言えば、LiDE 600Fの対応フィルムは35ミリスリーブフィルムのみだが、従来は1コマのみだった取り込みコマ数が6コマに増えた。このため、LiDE 500FVほどのわずらわしさはない。FAUユニットは従来と同様に着脱式になっており、マグネットでしっかりと本体に固定できる。これは振動による光源のブレを低減するためだろう。本体にセットした状態でFAUのカバーを開き、内側にフィルムをセットする構造になっている。フィルムが剥き出しで原稿台とFAUに挟まれる格好になるので、多少反ったフィルムでもフォーカスの心配は無いが、フィルムそのものが傷つく可能性は否定できない。ゴミ傷除去機能の「FARE Level3」があるから大丈夫、と割り切れる程度のフィルムならばともかく、貴重なフィルムは避けたほうが無難かもしれない。
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