と、イベントの説明をするまえに、この連載でも以前紹介した「中関村」をもう一度復習しておこう。よく「中関村は中国の秋葉原」と言われるが、こでは正確な例えではない。俗に秋葉原と認識されているエリアと比較にならないほど面積が広いの中関村には、レノボやファウンダー(方正)、百度(バイドゥ)などのハイテク系企業の本社やR&Dセンターだけでなく、北京大学や清華大学などの中国の頂点に立つ大学や中国科学院といった学術研究施設などが集まっている。
確かに、電脳ビルが建ち並ぶ中国最大級の電脳街もあるが、それは中関村の一角を占めているのに過ぎない(といっても中関村の電脳街を初めて見て回るなら半日はゆうに費やすはずだ)。このように産学トップレベルの本社や施設が多いあたり、関東圏でいうなら「秋葉原」というよりは「つくば」といったほうがイメージは近い。
そんな中関村で行われる中関村電脳節は、中国最大のIT系イベントとして知られている。このイベントの内容は大きく3つのカテゴリーに分けられる。第1は主催者側が中関村電脳節のメインイベントと考えている「産学官提携でのカンファレンス」で第2が展示会会場内で最新製品を一般向けにIT関連企業や組織が展示する「展示ブース」になる。そして、第3のカテゴリーとなるのが電脳街の各ショップで行われる「指定商品に限りちょっと安く買える」というイベントだ。趣向の異なる3つのイベントが、それぞれ中関村の別々の場所で開かれる。そのため、各イベントをくまなく巡ろうとすると移動だけでも骨の折れる作業となる。
産学官提携でのカンファレンスでは、政府関係者による「技術大国を目指して」「政府の新政策を読み、企業の活力とする」「知的財産権を保護し、自主開発能力を促進する」などのマクロ的なスピーチが多い。そういうお偉方の「ビジネス誌」的な退屈なスピーチを紹介しても、遊び心一杯のPC USER読者には何も面白くないだろう。ちなみに産学官提携でのカンファレンスを経て、中関村のある北京市海淀区政府が約50のハイテク系プロジェクトにゴーサインを出し、投資企業や創業発展基金から392億元の融資が決定したと中国メディアは報じている。また、電脳街のイベントは、見た目も中身も「秋葉原電器まつり」と同様で、日本にいるユーザーにはとくに目新しいものではない。そこで最も興味深い一般向けの展示会を中心に中関村電脳節の内容を紹介しよう。
新製品の展示会場は中関村の海淀公園内にある海淀展示館にある。そこがどれほどマイナーは会場であるかは、乗ったタクシーの運転手が道中地元の人に行き方を尋ねまくったことでも十分にうかがえる。
タクシーの運転手も分からない建物にある展示会場は閑散としていて、同じ中国で行われたイベント「ChinaJoy」とこうも異なるのかと驚くほどだ。しかし、会場のブースを見渡すと、閑散としているわけが少し分かってくる。中国を代表するようなIT企業、例えばレノボとか百度とかが出展していないのだ。人出が少なくじっくりと見、じっくりと説明を聞けた展示ブースで「おおぉっ!」と思ったいくつかを紹介していこう。
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