キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)代表取締役社長の村瀬治男氏は、キヤノンのイメージング事業の現状について好調のデジタル一眼カメラ、交換レンズ、コンパクトカメラを始めとするすべての項目で計画を上回り、業績は過去最高となっているとアピール。村瀬氏はキヤノンのデジタルフォト事業についても“入口”となるデジタルカメラから“出口”となるプリンタまで自社製品で網羅できるのはキヤノンだけという特異性を強調している。「近い将来、ここに“SED”と呼ばれる薄型TVも加わることになる」(村瀬氏)
このように、デジタルフォトのすべてにおいて自社で製品を供給できるキヤノンは「量は目標に近づきつつある」(村瀬氏)とハードウェアたる製品の供給にはある程度満足しているが、「それはハードウェアの話。ハードウェアは道具に過ぎない」とデジタルフォトの世界は新たな転換期を迎えていると語る。「(デジタルフォトは)より多くの人々に、より身近に、より深く、より楽しめるようにならなければ」(村瀬氏)というキヤノンは製品を供給するだけでなく「デジタルフォトソリューション」と呼ぶユーザーのデジタルフォト活動を支援する大きな枠組みの構築を目指すと村瀬氏は述べた。
キヤノン取締役インクジェット事業本部長の清水勝一氏は、発表されたPIXUSの新機能について説明。2006年に登場した新しいPIXUSのキーワード「洗練」の具体的な内容を紹介した。「洗練」が表す第1の特徴は印刷速度の向上。インク粒サイズ1plに解像度9600dpiを実現した高密度プリントヘッド「FINE」は従来1plと5plの2種類だったインク粒サイズに新製品で2plを新たに加えたことで、パス数を低減して高速印刷を可能にした。印刷の高速化のための改善として紙送り機構の精度を上げてふちなしプリントのスピードをアップさせた「ダブルエンコーダシステム」も取り入れられている。
「洗練」が表す第2の特徴は簡単に多機能を操れる操作性。「お店に行かなくても家で印刷してもらうためには多くの機能を簡単に使える操作性が必要」と清水氏は述べるが、多くの機能をプリンタに実装するとボタンの数が多くなって操作が難しくなる。その相反する要求を満たすために2006年の新製品で搭載されたのが「イージースクロールホイール」だ。使う機能をボタンを連打して呼び出すのではなく、ホイールを回してメニューを選ぶことで操作性を格段に向上させている。
「洗練」が表す第3の特徴は筐体のデザイン。キヤノンは「美しい画は美しいプリンタで」というフレーズでアピールするが、新製品のMP810では、従来モデルのMP800であった背面上部の延長部分を省いて奥行きを74ミリ短くするなどの省スペース化を実現している。複合機のMP510は2004年に登場した単機能プリンタのサイズとほぼ同じになっている。
キヤノンMJ専務取締役コンスーマイメージングカンパニープレジデントの芦澤光二氏は2006年のプリンタ商戦プロモーションについて説明した。2006年のプロモーションでは「ENJOY PHOTO」がキーワードになる。「写真の楽しみはプリントにある。場所を選ばす楽しめて、ほかの人にあげたりアルバムに貼って感動を共有することはプリントをして初めて得られる」(芦澤氏)
キヤノンは自らの使命として「デジタルフォト文化の創造と発展」を掲げている。デジタルフォト関連製品の普及と進化によってユーザーにも顕著な変化が見られるようになったと芦澤氏は述べている。「ショット数が増えることで技術が向上し、良質な写真が増えてきた。それに伴なってプリント数も増えている」(芦澤氏)
キヤノンが説明会で示したデータによると、デジタルフォトをプリント方法のアンケートで70%近くのユーザーが所有するプリンタで出力を行っている。さらに、ユーザーのアンケートによると現状の複合機に対して「本体サイズが大きい」「操作が難しい」「プリント速度が遅い」という不満が上位を占めているが、新製品でで実現された筐体のコンパクト化、印刷速度の高速化、イージースクロールホイールによる簡単な操作をアピールしていくと芦澤氏は説明している。
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