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ちょっと気になるネットの話題「ねとらぼ」
連載2006年11月13日 11時17分 更新
山谷剛史の「アジアン・アイティー」:10年前の日本で考える現代中国の違法コピー事情 (2/2)改善を促したのは「バンドルソフトてんこ盛り」現在のようにWindowsとオフィススイーツ、各種実用ソフトをPCにバンドルするのが本格化したのはWindows 95が発売した後になる。1995年を境に違法コピー率が下がったのは、初心者がこのような「Windowsとオフィスソフト大量バンドルPC」を購入して一気に増えたからかもしれない。 これを考える1つの材料として、JEITAから発表された日本のPC市場の成長率と、CSAJから発表された日本のPCソフト市場の成長率、BSAから発表された違法コピー率を並べてグラフにしてみた。グラフにしてみると、PC市場が堅調な成長をしているなか、違法コピー率が下がってはいる。また、PCソフト市場の成長は1997年以降ほぼ同じ傾向で、2003年からはPCの成長率とほぼ同じ値になっている。 1993年からPC市場は急激に成長するが、ソフト市場はそれにリンクして急激な伸びを見せない。違法コピー率も高い水準のままだ。この年に「コンパックショック」という言葉で象徴されるような、低価格なAT互換機の発売が開始されている。これらのPCは価格を抑えてPCの需用を喚起したが、それだけにプリインストールされていたソフトの数は少なかった。 グラフでPC市場が急激な伸びを見せる1995年の11月23日にはWindows 95が発売される。このとき、富士通のFMV DESKPOWERシリーズやNECのVALUESTARといった大量のバンドルソフトを組み合わせたPCの第1弾が登場した。このバンドルソフトの中にはマイクロソフトのWordにExcel、もしくはジャストシステムの一太郎にロータスのLotus 1-2-3のいずれかが事前に導入がされていた。1996年になると、このような膨大なソフトをプリインストールしたモデルが各社からリリースされる。そして、このタイミングで違法コピー率が現在とそう変わらない数字まで下がったのだ。 筆者は中国のあるメディアで日本の現状を紹介するとともに、中国の海賊版問題を考察したことがあった。その記事が掲載されたニュースのWebサイトはmixiのように読者が感想を投稿できるが、そこで「中国は貧しいから仕方がない。日本人は中国人の何十倍も所得があるから違法コピー率が低いんだ」「もし給料が日本人と同じだったら私は絶対正規版を購入する」というコメントが多数を占めた。 しかし、厚生労働省発表の日本人の1世帯当たりの平均所得金額は2005年で580.4万円、1992年で647.8万円となっている。1992年より1世帯あたりの所得が10ポイント以上も下がっているにも関わらず違法コピー率は60ポイント以上と劇的に改善している。違法コピー率の改善した理由には廉価版ソフトの存在もあるだろうが、違法コピーの問題の根源は単なる所得差だけではないように思えるのだ。 筆者を担当している中国の編集者はこう指摘する。「著作権に関わる文章は、読者自身らが悪いことをしているのを分かっているのだから、それを敢えて(違法コピー率の低い)日本の作者が(違法コピー率の高い)中国の読者をつつくようなことを書けば、そうコメントせざるを得ないでしょう」 ここ数年、中国では、日本のPCゲームが代理店となる中国ソフトメーカーによって正規中文版として販売されている。日本向け製品と同様の大きなパッケージで、値段は28元から高くても68元程度と、いずれも日本円にして1000円以下で市場に投入した。金銭感覚をそろえるならば中国人にすれば2800円から6800円程度になるため、日本のゲーム価格に近い感覚になる。それでも「海賊版のため、採算が取れるソフトはごく一部」(中国メーカー)という。 中国ではあらゆるジャンルの模倣品(デッドコピー)が出ていているが、中国の消費者は模倣品なら何でも買うわけではない。安かろう悪かろうなもの、例えば外観は同じでも素材が悪いもの、印字状態の悪いコピー本は中国の消費者も購入しない。ところがソフトはコピー品でも品質は同じであることはPCユーザーなら誰でも知っている。しかも、Windows XPの海賊版は最新のパッチがあたった状態で販売されていたり、ソフトによっては中文化されていたりと、中国の消費者いわく「正規版より高機能」なのだ。 1992年の日本と今の中国は同じか?中国の呉儀副首相は、2006年4月11日に米国のワシントンD.C.で開かれた記者会見でソフトの違法コピーに対する態度を強化すると発表した。その一環で「レノボやファウンダーなど中国PCメーカー4社はマイクロソフト製OSを全製品にプリインストールする」と約束した。現在、これらメーカーはそれを遵守しているが、一方で未だにOSをプリインストールしていないメーカーも数多くある。 中国では、昔からOSはプリインストールされていなくて当たり前の状況でPCメーカー間の価格競争が行われていた。こういう市場でOSをプリインストールすることは価格競争から脱落することを意味するので、よほどの圧力を受けない限りはメーカーは正規版OSを搭載したくないというのが本音だ。 また、Windowsがプリインストールされても、それ以外のソフトは、製品専用のユーティリティ以外は何も入っていない。利用者は最新のパッチをあてたMicrosoft OfficeやAdobe Photoshopなど高価でメジャーな「海賊版」ソフトを導入するのが一般的だ。正規版のWindowsは大都市のソフト屋で稀にガラスケースに入れられて販売されていることもあるが、Photoshopになると販売している店舗はない。その一方で書店に行けばPhotoshopの解説本が、ソフト屋に行けばPhotoshopの解説ソフトが多数販売されている。これはPhotoshopに限らずメジャーソフトのほとんどで同じ状況にある。 このあたりも違法コピー率が改善されない一因ではないだろうか。 中国ではメーカー製PCより自作PCが人気である。しかし、筆者は中国の電脳街でWindows XPのOEMパッケージを見かけたことがない。PC用ソフトウェアの流通事情にしても、正規版販売店より海賊版販売店が圧倒的に多い。では、1992年の日本ではそのあたりの事情はどうだったのだろうか。秋葉原ではPC専門ショップが既に数多くあり、そういったマニア向けの一部のショップではコピープロテクト解除ソフトを扱っていた(なぜか、大手家電量販店でも売っている店舗があったが)。だが、いまの中国とは異なり、大手家電量販店でも秋葉原のPC専門ショップでも正規版のパソコンソフトがごく普通に陳列されていたのも事実だ。 日本において違法コピーが蔓延していたころは、PCはまだ1人1台どころか、一家に1台という状態にも達しておらず、PCを趣味とする個人か会社で導入する純然たるビジネス利用であった。現在の中国では1992年の日本よりもPCが一般的になっているだけでなく、そのころ日本になかったネットカフェがいたるところにある。PCは中国の都市部の若者にとって、「使えて当然」という当たり前の道具である。つまり中国では一般人にとって海賊版が遥かに身近な存在ではないだろうか。 PC以外の海賊版ソフトを見てみよう。都市部のCD、DVDショップでは正規版ソフトが増えつつあるが、しかしそれ以上に海賊版CDやDVDが多数販売されており、ひとつのタイトルを見ても1枚のビニールの袋をかぶせたものから、豪華なパッケージのもあり、消費者から見れば「そもそもどれが海賊版なのかわからない」という状況に陥っている。CDが普及する前は、海賊版のカセットテープが出回っていた。日本ではアメリカやイギリスのアーティストの海賊版CDなどが一部出回っているものの、日本のCD屋では昔も今も中国のように正規版と海賊版が双方販売されるということはない。 これはゲーム屋にもあてはまる。現在中国でのゲーム屋では主に海賊版が販売されており、コレクターのために正規版ソフトがガラスケースの中で販売されている。遡れば中国はファミコンのころから黄色の100in1ソフトを販売していた。一方日本では昔から大手家電量販店でもゲームチェーン店でも正規版のみが販売されている。 つまり中国では10年前、20年前からソフトの多くが海賊版であり、現在の若者は生まれて物心ついたときから海賊版ソフトが身近な存在として販売されていた。昔から身の回りで海賊版ばかりが販売されている中国人にとって、海賊版ソフトがよくないものと認識するのは、以前から身の回りで正規版が販売されていた日本人よりも難しいだろう。心理面でも中国人が過去の身の回りの環境を否定して、海賊版をNo!というのは日本人よりもハードルが高い気がしてならない。 関連記事[山谷剛史,ITmedia] Copyright© 2012 ITmedia, Inc. All Rights Reserved. Special
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