ナナオの「FlexScan S2411W」は、「FlexScan S2410W」の後継モデルだ。24.1インチでWUXGA(1920×1200ドット)サイズの液晶パネルをはじめ、型番やスペック的にはマイナーチェンジのイメージだが、動画に関連する性能と機能が引き上げられた点が大きなポイントだ。
はじめに「FlexScan S2410W」(以下、S2410W)と「FlexScan S2411W」(以下、S2411W)のコアスペックを比較してみよう。
「FlexScan S2410W」と「FlexScan S2411W」のコアスペック
FlexScan S2410W | FlexScan S2411W | ||
画面サイズ | 24.1インチ | 24.1インチ | |
画面解像度 | WUXGA(1920×1200ドット) | WUXGA(1920×1200ドット) | |
駆動方式 | VA(高品位タイプ、オーバードライブ) | VA(高品位タイプ、オーバードライブ) | |
最大表示色 | 1677万色(10億6433万色中) | 1677万色(10億6433万色中) | |
視野角 | 水平178度/垂直178度 | 水平178度/垂直178度 | |
最大輝度 | 450cd/m2 | 450cd/m2 | |
コントラスト比 | 1000:1 | 1000:1 ※コントラスト拡張時3000:1 | |
応答速度 | 黒→白→黒 | 16ms | 16ms |
中間階調 | 8ms | 6ms | |
PC入力端子 | DVI-I(デジタル/アナログ)×2 | DVI-I(デジタル/アナログ)×2 ※HDCP対応 | |
内蔵スピーカー | なし | なし |
以上のように、採用している液晶パネルそのもののスペックは、S2410WとS2411Wはほぼ共通だ。S2411Wの強化点は、おもに動画に関連する性能と機能なので、この点をじっくり見ていこう。
まず、2系統のDVI-Iインタフェースが、デジタルコンテンツの著作権保護技術「HDCP」(High-bandwidth Digital Content Protection system)に対応した。DVI-Iはアナログ接続とデジタル接続の両方が可能で、ケーブルによって信号が変わる。
HDCPの仕組みを簡単にまとめると、映像信号を暗号化して送信するため、送信側と受信側の両方がHDCPに対応していないと映像が映らない。送信側のインタフェースが受信側を認証し、公開鍵暗号でやりとりする。
現在のPC環境の場合、Bru-rayドライブ、HDCP対応ビデオカード、WindowsXP SP2をそろえることで、市販のBru-rayタイトルをPCとS2411Wで視聴できるようになる(かなりのマシンパワーが必要だが)。将来的に考えても、Windows Vista、Bru-rayドライブ、HD DVDドライブなどの普及で、著作権保護されたデジタル映像が増えていくのは確実な情勢だ。いずれはHDCP対応のディスプレイ環境が必須となりそうなので、S2411Wを購入するにもよいタイミングと言えるだろう。
HDCPが機能するのは、PCとS2411WをDVI-Dケーブル(両端がDVI-Dコネクタ)でデジタル接続したときだが、アナログ接続でもPC画面はきちんと映る。アナログ接続の場合は、著作権保護されたコンテンツがPC側から出力されないだけだ。ただしコンテンツによっては、2010年まではアナログRGBでも出力可能なケースもある(現時点での暫定措置)。
なお、HDD/DVDレコーダーといった家電製品や、家庭用ゲーム機との接続は保証されていない。おそらく多くの機器で問題なく表示されると思われるが、もし試す場合は、故障などのリスクを承知したうえで、自己責任で行ってほしい。
もう1つ見逃せないのは、フルハイビジョン解像度(1920×1080ドット)のドットバイドット表示に対応したことだ。ドット補完(スケーリング)されないため、コンテンツ本来の品質で楽しめる。
PCでWUXGA以下の解像度を表示するときは、フルスクリーン拡大、アスペクト比を保持した拡大、ドットバイドット(実ドット)表示の3通りが選べる。これはS2410Wと同じだが、解像度によってはドットバイドット表示に対応しない場合もあるので、S2411Wの対応信号表で確認してほしい。
動画の表示品質に関するところでは、中間階調の応答速度アップ、コントラスト拡張、輪郭補正の3点が挙げられる。
まず応答速度は、オーバードライブによる中間階調の応答速度が6msに向上した(S2410Wは8ms)。加えて、オーバードライブにおいて若干見られる、オーバーシュート/アンダーシュートという現象を改善した点に注目したい。
オーバードライブの基本的な仕組みは、到達目標とする階調の電圧レベルを超える電圧をかけることで、その階調に達する時間を短縮することだ(電圧変化が大きくなると、階調の変化も高速化する)。例えば、変化前の階調を「127」とすると、変化後の階調が「200」なら「201」以上の電圧、変化後の階調が「50」なら「49」以下の電圧がかかる。
前者をオーバーシュート、後者をアンダーシュートという。瞬間的に目標階調を通り過ぎる階調が表示されるため、画面上では輪郭の偽色となって現れる。オーバードライブを“強く”すると応答速度は高まるが、オーバーシュート/アンダーシュートによる偽色が見えやすくなってしまう。一般論として、オーバードライブを搭載した液晶ディスプレイで中間階調の応答速度が高い製品ほど、オーバーシュート/アンダーシュートが出やすい傾向がある。
応答速度とオーバーシュート/アンダーシュートについて、「Pixel Persistence Analyzer」というフリーソフトを使って、動画表示における残像の度合いを簡単に調べてみた。Pixel Persistence Analyzerのテスト項目は「Streaky pictures」、設定はすべてデフォルトだ。
テスト画面では、画面の右から左へと、赤い車が高速にスクロールする。この画面を、富士フイルムのデジタル一眼レフ「FinePix S3 Pro」で撮影した。シャッタースピードは1/1024秒、絞りはF3.0、ISO感度はISO1600だ。
左の写真はS2411W、右の写真は2005年初頭に発売されたソニーのノートPC「VAIO type F」(VGN-FS70B)である。あくまで静止画なので、目に映る動画の残像感としては伝えられないが、応答速度の高低は明確に現れている。S2411Wは残像の輪郭が1つだけで、しかも残像が弱い。対してVAIO type Fの液晶は、複数の残像輪郭が重なるように映っている。赤い車が高速移動したとき、移動元の部分(過去に描画されていた部分)が背景のグレーに変わるまでに、時間がかかっているということだ。
また、S2411Wの写真で車や吹き出しの輪郭に注目すると、オーバーシュート/アンダーシュートによる偽色はほとんど発生していないことも分かる。
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提供:株式会社 ナナオ
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年3月31日