8万9800円PCをメディアプレイヤーとして使い倒す工人舎のミニPCを再検証(1/2 ページ)

» 2006年11月24日 10時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]

 すでにPC USERで取り上げられた工人舎のミニノートPC「SA1F00A」(以下SA1F)。前回のレビューでは、プリインストールされたWinDVD 5ではVOBファイルの再生が困難という結果の報告にとどまっていたが、そのサイズやバッテリー動作時間、ディスプレイを表にして折りたたんでGUI操作が可能など、動画再生を中心としたメディアプレイヤーとしての資質はなかなかのものである。さらに標準でBluetoothを内蔵し「A2DP」プロファイルもサポート、ワイヤレスでのヘッドフォン利用まで可能なのだから、メディアプレイヤーとしての魅力は間違いなく大きい。そこで今回はメディアプレイヤー、とくに動画再生利用にフォーカスしてみた。

PCやDVDレコーダーで録画した番組を見たいっ

工人舎のミニPC「SA1F00A」。抜群の小型ボディと8万9800円と安価なのが魅力だ。HDD容量を2倍の80Gバイトにし、Office Personal Edition 2003を内蔵した上位機「SA1F00B」(10万9800円)もある

 TV番組の録画に関してはPCという人も、DVDレコーダーを兼用しているという人も多いだろう。PCでもDVDレコーダーでも、録画時の動画圧縮はほとんどの場合MPEG2で行なわれており、再エンコード/トランスコードなどを行なわずにそのまま再生できるのが理想的だ。PCでの録画ならLAN経由でSA1Fにファイルコピーするだけですむし、DVDレコーダーで録画した場合でも、デジタル放送でなければDVDメディア経由(+外付けドライブやほかのPC経由)、東芝のRDシリーズなら「ネットdeダビング」経由など、SA1Fに取り込むことはさほど難しくない。とにかくMPEG2がきちんと再生できるかどうか、という点はメディアプレイヤーとして重要になる。

 前回のレビュー記事でも指摘されていたが、プリインストールされたWinDVD 5でVOBファイルの再生は確かに再度検証しても結果は同じだった。この件に関しては工人舎のカタログに「動画の再生にはWindows Media Player(以下WMP)を利用すべし」という旨の記述がある。そこで今回、改めて複数の条件のMPEG2ファイルを準備して検証してみたところ、確かにWMPを利用すればWinDVD 5よりはずっと実用性があることは確認できた。

 検証に利用したMPEG2ファイルは、実写番組をDVDレコーダーで最高画質(9Mbps)で録画し、これを6/4/2Mbpsに再エンコードしたMPEG2ファイルだ。ちなみに一般には4Mbps程度がSPモード、2Mbps程度がLPモードと呼ばれている録画モードに相当する。

 この4種類のMPEG2ファイルを再生した時のCPU使用率をタスクマネージャーで監視すると以下のようになり、CPUパワー的には2Mbpsなら余裕、4Mbpsならぎりぎり、6Mbpsではコマ落ちは発生しているが映像と音声のズレもなくかろうじて実用的には大丈夫かなというレベル、9Mbpsは無理がある、という印象になった。ちなみにSA1Fの場合、ACアダプタで使用してもバッテリー動作でもCPUの動作クロックを制限するようなことはしていないようで、ほとんど変化は見られなかった。

左から2/4/6/9MbpsのMPEG2ファイル再生時のCPU使用率。使用率の数字は瞬間的なので、履歴を参照してほしい。CPU使用率で見ると4Mbpsでほぼ一杯一杯という感じだが、6Mbpsでも動画再生としての破綻は小さい。9Mbpsになると映像が静止し、音声だけが流れる状態が多くなる

 市販のDVD-Videoタイトルは規格一杯の9Mbps前後のビットレートであることが多いので、直接の再生はやはり難しそうだが、PCやDVDレコーダーでSPモードがそれ以下の画質モードで録画していれば問題なし、というところだろう。いずれにせよ市販のDVD-Videoを見るにはSAIFにDVDドライブを接続するしかないので、SA1Fにはあまり似合わない使い方になるとも思う。

 せっかくの機会なので、MPEG2コーデックによって変化があるかどうかも検証した。MPEG2コーデックはWindows XPには含まれておらず、多くの場合ソフトウェアDVDプレイヤーと一緒にインストールされる。ところがPCの処理能力向上に合わせて画質を向上させるため、新しいものほどMPEG2コーデックも重たくなっている傾向が見られる。そこで少し前のソフトウェアDVDプレイヤーをインストールしてみると、よいことがあるかもしれないと考えた。もちろん、今となっては数年前のソフトウェアDVDプレイヤーを購入するのは困難だが、DVDドライブなどを購入すると必ずバンドルされていたりするので、手元に複数の再生ソフトウエアがあるという人も珍しくないのではないだろうか。

 筆者の手元にWindows XPに対応したもっとも初期の製品として「CyberLink PowerDVD VR-X」「InterVideo WinDVD Millennium」(いずれもパッチ適用でWindows XPに対応)の2製品があったので、これらをインストールしてMPEG2コーデックとして使用した。さらにフリーで利用でき、MPEG2再生もサポートするDirectShow Filterの「ffdshow」を加え、MPEG2も単体で再生可能な「Media Player Classic」を利用してみた。条件は先ほどと同じで、ffdshowでは画質向上のためのオプションは大半を無効にしてある。

 まず、CyberLink PowerDVD VR-XとInterVideo WinDVD Millenniumの2製品のMPEG2コーデックを使用した場合だが、WinDVD 5と比較すると確実にCPU使用率が低下した。とくにInterVideo WinDVD Millenniumでは6MbpsでもCPU使用率が100%に張り付くことが少なく、ほぼ問題なく再生されている印象だ。CyberLink PowerDVD VR-Xでも4MbpsまでのCPU使用率に余裕が見られる。

CyberLink PowerDVD VR-X利用時のCPU使用率とその履歴で、左から2/4/6/9Mbpsとなる。

InterVideo WinDVD Millennium利用時のCPU使用率とその履歴で(左からビットレート2/4/6/9Mbps)、2/4Mbpsでは確実にWinDVD 5のCPU使用率を下回っている。両ソフトともWinDVD 5より軽いMPEG2コーデックを使っているのは間違いない

 ffdshowもWinDVD 5よりはCPU使用率は低いのだが、こちらは映像表示の優先度が高いのか、CPU使用率が100%に達するような状況では音の途切れや映像とのズレが発生しやすく、WinDVD 5の代わりに利用するメリットは少ないと言えるだろう。また、Media Player Classicは軽快なメディアプレイヤーソフトとして知られているが、MPEG2の再生に関してはCPU使用率も低いほうではなく、WMPの代替として使うメリットはあまりなさそうだ。

ffdshowのCPU使用率(ビットレートは左から2/4/6/9Mbps)で、WinDVD 5よりは低いものの、音の途切れや音ズレが発生しやすいのが気になるところ

Media Player ClassicのCPU使用率はWinDVD 5と同等程度と言える(ビットレートは左から2/4/6/9Mbps)。あえてMPEG2再生に利用するメリットは少なそうだ

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