「オーバークロックは“Hobby”だ」──OCZ Summit 2006で知る極限の遊びかた

» 2006年12月08日 11時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 OCZ Technologyは12月7日に台湾の台北市でテクニカルイベント「OCZ Summit 2006 APAC」を行った。このイベントには、OCZ Technology以外にも、ASUS、SiS、GIGABYTE、abit、Shuttleがセミナーセッションを行い、各ベンダーの最新製品の説明や未発表製品の紹介、オーバークロック性能のデモンストレーションが行われた。

 OCZ Technologyは、米国本社から訪台したマーケティング&コミュニケーション担当バイスプレジデントのアレックス メイ氏がキーノートスピーチを行った。メイ氏は、オーバークロックで重要なのは高速駆動を可能にする十分な電力の供給と、より多くの電力を供給することで発生する熱を冷却するより強力なクーラーであるとアピール。安価なシステムで高価なシステムに相当するパフォーマンスを実現するオーバークロックは、それ自体がホビーであると述べるメイ氏は、その一方で、オーバークロックを行うには高クロック駆動や高い電圧や発熱に対処できる強力なクーリングシステムを必要とし、システムは安定性に問題を抱え、また、強力なクーリングシステムは騒音を増加させる(OCZ Technologyはオーバークロッカーが使っているクーラーユニットは通常50dB以上の騒音を発生すると資料の中で述べている)と説明する。

 このように、難しい問題を解決しなければならないオーバークロックを初心者でも可能にできるように、メーカーは協力して、使いいやすいオーバークロック機能や特化したパーツで構成されたプラットフォームをユーザーに提供すべきだ、というのがOCZ Technologyの主張だ。

 OCZ Technologyはオーバークロックに特化したメモリや電源ユニットなどをリリースしている。Summitでは11月に発表された水冷対応メモリモジュール「OCZ DDR2 PC2-9200 FlexXLC Editon」の冷却機構や「OCZ EL DDR2 PC2-5400 Gold GX XTC」で採用されたメモリモジュール用ファン内蔵の空冷ユニット、1000ワットクラスでは世界最小サイズとOCZ Technologyが説明する電源ユニット、開発コード名「シルバーアレイ」と呼ばれる銅と銀のハイブリッドヒートジャケットを採用する水冷チップクーラー(プロトタイプ)の紹介がメイ氏によって行われた。

OZC Technologyがリリースしているファンを組み込んだメモリモジュール用空冷クーラーユニット(画像左)と、水冷にも対応するメモリモジュール「OCZ DDR2 PC2-9200 FlexXLC Editon」の冷却機構(画像右)

 ASUSはオーバークロッカーやハイエンドゲーマー向けのマザーボードラインアップ「R.O.G.」シリーズを同社プロダクトマネージャーのデレク・ユ氏が紹介した。R.O.G.シリーズのマザーボードはすでにnForce 680i SLIマザー「Striker Extreme」にnForce 590 SLIマザー「CrossHair」が出荷されていて、今回のSummitで未発表のIntel P965マザー「Commando」が公開されている。

 いずれも8フェーズ電源回路、ヒートシンクとヒートパイプで構成される「Zero noise」「Zero Fan」「Zero Worriers」「work in up-side down case」のチップセットクーラー、オーバークロックに特化した設定項目を持つBIOSを実装、ケースに収納せずマザーボードをそのまま横置きにして使うケースが多いオーバークロッカーのために、「電源ボタン」「リセットボタン」「CMOSクリアボタン」を基板に設置し、システムの状態を表示するLCDをバックパネルに設けている。

ASUSのセッションはR.O.G.シリーズを中心に進められた。ヒートパイプを組み込んだファンレスクーラーユニットは縦置きでも平置きでも所定の性能を発揮する

 SiSは最新のSiS 671FXとSiS 968を実装したリファレンスマザーの展示を行っていた。SiS 671FXはCore 2 Duo、Core 2 Extreme、クアッドコアCore 2 Extremeに対応するノースブリッジでDDR2-667メモリを1チャネルあたり最大2Gバイトまでサポートする。グラフィックスコア「Mirage 3」を組み込んだ統合型チップセットだが、PCI-Express x16スロットを1つ実装できるのでディスクリートのグラフィックスカードも搭載できる。

 サウスブリッジのSiS 986はギガビットイーサネット、HDオーディオ、1チャネルのUltra ATA/133に加えて、2ポートのSerial ATA IIを用意。Serial ATAはRAIDの構築に対応する。

 SiS 771FXとSiS 968は消費電力をSiS 771FXで従来製品から40%減、SiS986も同じく50%減になるなど消費電力を抑えているのが特徴。これは、Marage 3で描画負荷にあわせて動作クロックを動的に変化させたり、SiS 968で接続しているデバイスの利用状況にあわせてデバイスの電源管理を細かく行うことで実現させている。

Summitで展示されていたSiS 671FX搭載のリファレンスマザーとSiS 671FXとSiS968の構成図

Marage 3で行っている負荷にあわせた動作クロックの動的設定とSiS 968で行っているデバイス動作にあわせた電力管理によって、このチップセットは消費電力を劇的に削減している

 GYGABYTEのロックソン・チェン氏(プロダクトマネージャー)は自社マザーボードの品質の高さをアピールした。とくに実装するソリッドタイプコンデンサーの寿命と特性の優秀性とGIGABYTE独自の「Silent Pipe」「Crazy Cool」による冷却性能の高さを具体的なデータやサーマル画像を用いて説明。GA-965P-DQ6において、FSBクロック2GHz、メモリクロック600MHz(データ転送レートで1200Mbps相当)のオーバークロック動作に成功した実例を紹介している。

 abitテクニカルマーケティングエンジニアのキナー・ロウ氏は、2006年に変わった新しいロゴをはじめとする「生まれ変わったabit」を、おもに会社拠点や製品ラインアップ、ラインアップごとに定められたロゴカラーを中心に紹介している。

 現在、abitの製品ラインアップには5種類のラインが用意されていて、それぞれ、オーバークロック向けマザーは「Max」、ゲーミングユーザー向けマザーは「Fatal1ty」、コストパフォーマンス重視マザーは「μGuru」、Digital Home向けマザーは「Theater」、スピーカーには「iDome」というネーミングで区別されている。

GIGABYTEはソリッドコンデンサーのアドバンテージと冷却機構のメリットを中心に紹介した。冷却機構の説明では「Silent Pipe」によってノースブリッジ温度が摂氏89.3度から同じく47.2度に、サウスブリッジ温度が61.8度から49.7度に下がった実例が紹介された

 Shuttleのスタン・チェン氏(セールスディビジョン・バイスプレジデント)は、SFF(スモールフォームファクタ)でも高い性能を発揮できるキューブ型ベアボーン「XPC」の強力な冷却機構「ICE」(Integrated Cooling Engine)の説明を中心にセッションを進めた。

 チェン氏はICEを実装したXPCによるオーバークロックの具体的な例として、クアッドコアのCore 2 Extreme QX6700と4GバイトのDDR2(1Gバイトモジュールを4枚)組み込んだシステムの結果を示し、デュアルチャネル動作でメモリクロック533MHz(データ転送レートで1066Mbps相当)、シングルチャネル動作でメモリクロック600MHz(データ転送レートで1200Mbps相当)で動作したときのCPU-Zの画面を紹介している。

画像左はクアッドコアCPUに対応したShuttleのキューブ型ベアボーン「SD37P2」のエアフローで、画像右はタワー型ベアボーン「9012」のエアフロー

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