日本ヒューレット・パッカード(hp)のCore 2 Duo対応デスクトップPCは、Intel Q965 Expressを採用する「dc7700」シリーズと「dx7300」シリーズが存在するが、dc5700シリーズはIntel Q963を採用しているのが相違点だ。これは、Intel Q965の廉価版となるチップセットで、Intel Q965と異なり、PCI-Express x16インタフェースが省略されメモリもDDR2-667までのサポートとなる。
半分以上のエリアにスリットが刻まれたフロントパネルからも分かるとおり、hpのデスクトップPCとしては初めてBTXフォームファクタを採用したのがこの機種の特徴だ。側面のカバーを取り外して内部を見ると、フロントパネルのすぐ後ろにケースファンを装備し、続いて巨大なヒートシンクが鎮座しているのが分かる。このヒートシンクの下にCPUがあり、CPUファンを兼ねたケースファンのエアフローによってCPUを冷却する仕組みだ。さらに、ケース背面方向には大きなヒートシンクを載せたチップセットがあり、その熱も効率的に奪う構造になっている。この結果、冷却ファンをケースファンと電源ファンの2つに削減することに成功した。
冷却ファンは回転数をリアルタイムに自動調整するタイプで、低負荷時には回転数を低くして騒音を最小限に抑える。今回試用したモデルは、発熱量の少ないCore 2 Duo E6600(動作クロック2.4GHz)を搭載していたこともあってか、ベンチマークソフトをしばらく走らせて高い負荷をかけた状態でもケースファンは低回転のままで静音性が保たれていたのは評価できる。ケースファンと電源ファンは大口径タイプとなっており、低回転でも風量を確保できる点も静音性の向上に貢献しているといえよう。
ケースに関しては、メンテナンス性の高さも見逃せない。ドライバーレスで側面カバーを取り外せるのはもちろん、プラスチック製のレバーを動かすだけでドライブ類や電源ユニットを簡単に取り外せる。メモリスロットの上には電源ユニットが覆い被さっているのだが、これもワンタッチで取り外せるので、メモリ増設はそれほど手間ではないだろう。
マザーボードはmicroBTXタイプを採用している。拡張スロットはPCI-Express x1が1基とPCIが2基で、いずれもLowProfileタイプに限られる。マザーボードを見ると、PCI-Express x16と同じ形状の細長いスロットがあるのだが、スロット脇の「ADD2 SUPPORT ONLY」と書かれたシルク印刷のとおり、これはIntel GMA 3000相当のチップセット内蔵グラフィックス機能にDVI出力を追加するための拡張カード「ADD2カード」専用となっている。そのため、一般的な外付けグラフィックスカードは装着できない。もちろん、。PCI-Express x1仕様のグラフィックスカードは組み込んで利用できるが、現在のラインアップではIntel GMA 3000の性能を飛躍的に高めることはできない。
なお、Intel Q963チップセットがUltra ATAをサポートしておらず、加えてdc5700が搭載するマザーボードは外付けのコントローラチップを搭載していないため、Ultra ATA対応のIDEコネクタは用意されない。そのため、HDDだけでなく光学ドライブもSerial ATA接続となる点は将来の拡張に備えて覚えておきたい。パーツショップでは、Serial ATA接続の光学ドライブをほとんど見かけないため、高性能なドライブへ換装を考えているユーザーは注意が必要だ。
また、ケース内部に空いているドライブベイがないため、2台めのHDDは内蔵できない(BTOメニューでFDDを省いた場合はこの限りではない)。とはいえ、USB 2.0を前面に2基、背面に6基用意するなど余裕があるので、外付けドライブを増設するのがお勧めだ。パフォーマンスを追求したいならば、PCI-Express x1スロットにeSATAカードを増設し、eSATA対応の外付けHDDを接続するのもよいだろう。
ビジネス用途において必須ともいえるセキュリティ機能は、セキュリティ技術に関する標準化団体「TCG」(Trusted Computing Group)が定義したTPM 1.2準拠のセキュリティチップを搭載している。ただし、dc5700にはTPMを利用するためのユーティリティソフトは付属しないので、ユーザー自身で別途用意する必要がある。
micro ATXマザーボードを採用する「HP Compaq Business Desktop dx7300 ST/CT」などと比較すると、ケースのサイズはひと回り大きくなっており、高さが45ミリ、奥行きも37ミリ増えている。大きすぎるというほどではないのだが、設置スペースを重視するユーザーならば覚えておきたい。
BTOメニューを利用すれば、ユーザーが各パーツをカスタマイズして購入できる。CPUは、デュアルコアのCore 2 DuoやPentium Dだけでなく、Celeron Dも用意しているので、コストを重視したいユーザーも安心できる。メモリやHDDの選択肢も豊富で、予算や用途に合った構成が可能だ。ただし、グラフィックス機能に関しては、BTOメニューにADD2カードがなく。PCI接続のQuadro4 280NVS(+1万3000円)のみなので、グラフィックス性能を重視するユーザーは注意したい。
Celeron D 351(3.2GHz)や256Mバイトのメモリ、Windows XP Home Edition SP2を選択した最小構成の価格は6万3000円と、dc5700の価格競争力は高い。さすがに実際の利用を考えるとメモリの増設は必須となるが、512Mバイトに増設しても6万8250円と低価格を維持している。dc5700は、突出した機能やパフォーマンスを持つわけではないが、低価格や優れた静音性は注目すべき点であり、ビジネスシーンで安定かつ快適に作業をこなしてくれるはずだ。
幅広いBTOが用意されているdc5700だが、パフォーマンスと静音性能を考慮するならばCPUはCore2 Duoを選ばない手はない。L2キャッシュ容量が4MバイトのCore2 Duo E6600(2.4GHz)も魅力だが、コストを考慮するならCore2 Duo E6300(1.83GHz)を選択してもいい。同様に、メモリやHDDは不満のない容量を選びつつ使用頻度の低いFDDを省いて価格を抑えるのもいい考えだ。“Aero”を望まなければWindows Vistaもストレスなく動かせるスペックであり、長く使える1台を構成できると思う。
オフィスでは、勤務時間中にPCの電源を入れっぱなしにして長時間連続駆動させることが珍しくないうえ、PCをディスプレイと並べてデスクの上に設置することが多い。そのため、安定性と静音性能は重要なファクターとなる。優れたエアフローにより各パーツの冷却が効率的に行える本機は、そのようなオフィス環境にはうってつけのモデルだといえよう。
HP Compaq Business Desktop dc5700 SF/CT | ||
項目 | BTOオプション | |
CPU | Celeron D 351(3.20GHz)、Pentium D 915(2.80GHz)、Pentium D 945(3.40GHz)、Core2 Duo E6300(1.86GHz)、Core2 Duo E6600(2.40GHz) | |
チップセット | Intel Q963 | |
メインメモリ | 容量 | 256MB〜2GB |
規格 | PC2-5300(DDR2-667) | |
メモリスロット(空き) | 4 | |
ハードディスク | 容量 | Serial ATA 80/160/250GB |
回転数 | 7200rpm | |
光学ドライブ | DVD±RW(DVD±R DL対応)、コンボドライブ、DVD-ROM、CD-ROM | |
グラフィックスカード | Intel GMA 3000(チップセット内蔵)、Quadro4 280 NVS | |
サウンドチップ | Realtek ALC260 | |
拡張スロット | PCI-Express X1、PCI×2 | |
ベイ | 5.25インチ×1、3.5インチ×2(うちシャドウベイ×1) | |
USB | 背面6、前面2 | |
IEEE1394 | − | |
キーボード | PS/2日本語キーボード | |
マウス | PS/2スクロール光学マウス | |
有線LAN | 1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T(Broadcom 5755) | |
無線LAN | − | |
FAXモデム | V.92対応 56Kbps PCI Data/FAXモデムカード | |
外形寸法 | 114×342×393ミリ | |
重量 | 8.62キロ | |
搭載OS | Windows XP Professional(SP2)、Windows XP Professional英語版(SP2)、Windows XP Home Edition(SP2) |
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