真の「全天候型」TOUGHBOOKが誕生した勝手に連載!海で使うIT

» 2006年12月21日 00時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 TOUGHBOOKシリーズ3年ぶりの新製品となる「CF-30」「CF-19」はデザイン、サイズ、重量という外的要因は従来製品とほぼ同じだが、CPUにデュアルコアのCore Duoを搭載(CF-30は低電圧版Core Duo L2400、CF-19は超低電圧版Core Duo U2400)し、チップセットはIntel 945GMを採用するなど、その構成を一新した……、と通常のノートPCならこういうところが注目されるし、ビジネス用途やホームユースならば、倍増したHDD容量や光学ドライブにDVDマルチドライブが選べること、そしてインタフェースにExpressCardスロットやSDメモリーカードスロット(CF-30のみ)、IEEE 1394が設置されたことを高く評価するだろう。

13.3インチ液晶ディスプレイ搭載モデルのCF-30。その外観は従来機種とほとんど変わらない。インタフェースは防水カバーで守られる。CF-30では従来モデルになかったSDメモリーカードスロットやIEEE 1394が用意された

 しかし、TOUGHBOOKにとってそれは「些細」な進化でしかない、と乱暴にもこの記事では言い切ってしまおう。「どんなところでもドンと来い」というタフなガテン系PCを愛するユーザーとしては、なんといっても「液晶輝度が2倍に」なったことや「欧米モデルが対応していたBluetoothやGPSモジュールの筐体内蔵を実現」したことに狂喜乱舞しなければならない。

 TOUGHBOOKといえば、イベントや製品発表会で必ず見られる、ペットボトルから水をボトボトとかけられても、落下試験装置から「ズゴン」と派手な音をたてて落とされても、「元気に動いていますっ」と、ある意味けなげなデモでよく知られる防滴性能と耐衝撃性能にこそその存在理由がある。実際の運用においても「思わずよろけて」80キロの体重でキーボードを踏みつけても「誤って」金属の棒で液晶ディスプレイに突きっ!を入れても傷ひとつ付けることなく(誇張ではなく実話)、波を30時間に渡って浴びながらもいたって平気で動作しつづけたことは身を持って証明している。

TOUGHBOOKといえば、「落下デモ」「水かけデモ」「粉かけデモ」はお約束。しかし、フィールドワークPCなら、もはや「これはできて当たり前」の技だ。ライバルが登場したいま、TOUGGBOOKにはさらなる付加価値が求められる

 どんな環境条件でも使える、というのがTOUGHBOOKの重要なコンセプトであり、たしかに、ヘビーデューティな状況では問題なく動作するのであるが、意外なことに、日本晴れの直射日光に晒されると、その画面がまったく認識されなくなってしまうのであった。もちろん、これはTOUGHBOOKに限らずノートPCに共通した弱点であるが、常時携帯していても使うのはオフィスや喫茶店、もしくは乗り物の中が多い通常のモバイルノートPCなら致命的とはならないが、TOUGHBOOKのディスプレイが暴風雨では使えるのに穏やかな晴天で見えなくなるのは野外利用が前提となっているノートPCとしていかがなものか、と筆者は思い続けていた。

 この問題の解決を図ったCF-30とCF-19は、ようやく暴風雨だけでなく晴天下でも使える「全天候型」ノートPCになった。直射日光の下でも液晶ディスプレイの視認性を向上させるために、CF-30とCF-19はそれぞれ異なるアプローチを取っている。13.3インチ液晶ディスプレイ搭載モデルのCF-30は「液晶パネルのバックライトを1灯から2灯に増やして輝度を上げる」というシンプルな手法を採用した。従来のCF-29も500カンデラ/平方メートルとノートPCとしては高い輝度を実現していたが、バックライトを2灯に増やしたことでCF-30は1000カンデラ/平方メートルという驚異的な輝度を可能にしたのだ。

 10.4インチ液晶ディスプレイを搭載したCF-19の輝度は460カンデラ/平方メートルと実は従来モデルのCF-18の500カンデラ/平方メートルより下がっている。しかし「偏光フィルム」と光の波の振動方向を変化させる「位相差フィルム」を組み合わせた新開発のスクリーンによって、日光の反射率をCF-18の3分の1に低減して相対的に液晶ディスプレイの視認性を向上させた。

ディスプレイの視認性を向上させるためにCF-30はバックライトを2灯に増やし(左)、CF-19は偏光フィルムと位相差フィルムを組み合わせた。実際に直射日光の下で視認性を確認できなかったがCF-29とCF-30を並べるとはっきりと明るさが異なっているが分かる

 もう1つ、乱舞して喜びたいのが「BluetoothとGPUの筐体内蔵に対応」したことだ。欧米出荷モデルではすでに実現していたが、日本向けモデルでもようやくCF-30とCF-19で、カスタマイズメニューとして対応した。アウトドアではGPUと組み合わせたナビゲーション用途の需要が多い。また、操作をより簡単に行うために外付けのコンソールを接続するケースも多いが、これらの外付けデバイスをUSBで接続すると、普段はラバーカバーで覆われているコネクタがむき出しになって、その部分から水や粉塵が侵入してしまう問題があった。

 Bluetoothモジュールを筐体に内蔵することで、Bluetooth対応の外付けデバイスを利用すればウィークポイントとなるコネクタをカバーで覆っておける。これはカタログやベンチマークで数値として表現できないことだが実際に使う場面でそのメリットの大きさを理解することができるだろう。なお、TOUGHBOOKのハードウェア開発を担当している西松英雄氏(松下電器産業のテクノロジーセンターハード設計第二チーム主任技師)によると、GPSを内蔵した場合は、アンテナ収容部分がコブ状の突起となって筐体の一部が盛り上がるが、落下時の耐衝撃性能は通常のTOUGHBOOKと同等ということになっている。

 また、従来ヒーターでHDDを暖めて低温時動作を実現していたのに加えて、液晶パネルもヒーターで暖めるようになったのもTOUGHBOOKらしい「性能向上」のポイントとして注目したい。ヒーターの予熱でTOUGHBOOKは摂氏マイナス20度においても起動と動作を可能にしている。

 西川氏によると、このヒーターは搭載している温度センサーでTOUGHBBOKが一定温度以下になったことを検知すると自動でスイッチがオンになる仕組みになっているという。これは、PCの動作とは独立して制御されるため、PCとして動作していない状態でもヒーターがオンになることでTOUGHBOOKのHDDと液晶パネルを予熱しておくことが可能になった。ヒーターはバッテリー駆動時も利用可能であるが、省電力を考慮して、TOUGHBOOKが起動してシステム温度が上がったらそれに伴いヒーターへ供給する電力を下げていく仕掛けが組み込まれている。

 以上のように、フィールドワークPCとしての使い勝手を大幅に向上させた新しいTOUGHBOOKであるが、その価格はマイレッツ倶楽部のダイレクト販売価格でCF-30が40万円半ば、CF-19が30万円前半になる予定だ。欧米に比べて日本ではフィールドワーク向けのノートPCの市場が小さいといわれるが、筆者が見聞きする限りでいうとアウトドアホビーを中心にコンシューマーでもTOUGHBOOKを望む潜在ユーザーの数は意外と多い。彼らがTOUGHBOOKの購入に踏み切れないのは「価格に比べてCPUやHDDなどのスペックが低い」ことではなく、ひとえに「価格がべらぼうに高い」ことにあるという。

 フィールドワークユースではパフォーマンスがそれほど必要とされていないケースが多いので、バリュークラスのパーツと筐体の堅牢性を組み合わせたコンシューマー向けの「ローコストTOUGHBOOK」を登場させたら、意外と早く日本でもこの種の市場が拡大するのではないか?と筆者は思うのだが、アウトドアフリークの皆さん、いかがだろうか。

TOUGHBOOKはいまのところ法人需要がメインで価格設定もそのことが多分に影響していると思われる。米国のパトカーの半数以上にTOUGHBOOKが搭載されていることは有名であるが、日本でも警察車両や消防署で導入するケースが増えてきているという

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