米国家電市場で融合するハードウェアとコンテンツとサービス2007 International CES

» 2007年01月07日 21時15分 公開
[富永ジュン,ITmedia]

 発表の冒頭において、CEAは現在の米国の経済状況を「消費者金融からの借り入れが微増し、担保付き長期債務の利息率がピークだった1985年の約半分になり、一般家庭における資産が負債の5倍に達するなどの不景気の影響を受けて、需要、インフレーションともに伸びが鈍化している」と分析した。

 続いて、CEAの上級産業アナリストであるショーン・ワーゴ氏は、2007年の家電市場の成長率は前年度の半分以下となる6.5%に留まるものの、それでも市場規模そのものは2003年の1056万ドルから2007年の1552万ドルへと5年間で150%以上の成長を遂げていると語った。また、長期間の家電市場の成長率が6%、小売の成長率は4.5%、GDPの予想成長率は2〜3%であることを根拠として挙げ、鈍化こそ見られるものの2007年の家電市場の成長はまだまだ健在であるとした。

 2006年に最も出荷数が伸びた製品は液晶TV(成長率160%)、ポータブルナビ(同154%)、DVDレコーダ(同132%)で、なかでも液晶TVは2005年の3倍の伸びを見せている。製品個体の価格の下落やデフレーションが進行するなか、こういった家電の購入意欲を支えているのが新世代製品への買い換え需要だ。

米国の1世帯が所有する家電製品数の推移。2000年から2005年にかけて急激な伸びを示している
家電製品にかける出費金額も高い成長率を依然として保っている。このデータも家電市場が成長過程にあるとCEAが判断する根拠だ
2006年に出荷数が伸びたせ遺品カテゴリー。2005年に上位にいたポータブルMP3プレーヤーや車載モニタは姿を消した

 新世代製品に共通するキーワードとして、「さらなるリアルさの追求」「ネットワーク機能」「携帯性」「これまでにない技術やサービス」の4つをCEAは挙げている。「さらなるリアルさの追求」の意味するところは、2007年に出荷されるTVの約半数がより高画質なハイ・ディフィニション(HD)対応になると予想されているほか、約3分の2がフラットパネルとなる点を指している。また、従来はグラフィックスでのリアリティが大きくフォーカスされていた家庭用ゲーム機でもPLAYSTATION 3、Xbox 360、Wiiなどが登場したことで、HD出力への対応やゲートウェイなどゲーム以外の用途でも利用できるようになるなど、高機能化が進んでいる。さらには、デジタルカメラも500万画素超のものが大多数を占めると想定されるほか、これらの高画質高機能化をうけて、現状では30万枚に留まっているHD DVDやBlu-ray Discの出荷数がこの先3年間で1160万枚に達するなど急激な成長を遂げるとCEAでは予想している。

リアルさの追求を示す指標の1つであるHD TVの出荷台数に占めるウェイトの変化。2005年から急速に拡大してその傾向はいまも続いている
リアルさの追求を示すもうひとつの指標がフラットパネルの出荷ウェイトの推移だ。2005年からの急速な拡大傾向はますます加速を増している
コンシューマーゲーム機もHDグラフィックス対応世代が登場したタイミングで、売り上げ金額の伸びが上昇している。このあたりも「リアルさを追求する」キーワードを示している

 ネットワーク機能では、WiMAXやWi-Fi、Bluetoothといったハードウェア面での接続性だけでなく、VoIPやブログ、SNSといったサービス面でのつながりも重視されるほか、携帯性では、2007年には携帯MP3プレイヤーが4100万台が出荷され、そのうちの46%に動画再生機能が搭載されると予想。また、ノートPCの出荷台数がデスクトップの出荷台数を上回るなど、常に持ち運べることが重要な機能の1つと見なされるようになったと、CEAは分析する。

 これまでにない技術やサービスの影響がもっとも顕著に表れているのが、音楽や動画の購入形態と利用方法だ。購入時は、オンラインなどで手軽に購入できる音楽や動画の配信サービスよりもCDやDVDといったメディアが好まれる傾向があるが、実際に利用する場面になるとMP3などのデジタルメディアに変換するユーザーが増えている。これは、iPodなどの携帯マルチメディアプレイヤーの台頭によるものだ。これを裏付けるように、CEAの独自調査によると米国ユーザーの約47%がTVでPCに保存されている動画を視聴したいと答えたほか、最新の家電に関心が高い層の34%、全ユーザーの12%が携帯マルチメディアプレイヤーで動画を見たいと答えている。このほか、Amazon Video、iTunes Video、Xbox Live、Google、YouTubeといった新しい形態のサービスも登場していることに加え、インターネットベースのTVサービス「IPTV」の加入者も徐々に増えている。

 最後に小売業の現状についても言及、業者の淘汰が進んでBEST BUY、Costco、Walmartなどのトップ5業者のみで全売り上げの6割近くが占められているとした。また、これからはハードウェアを売ることから利益を得るのではなく、アクセサリや付加サービスから得られる利益が大きくなると予測している。現状では、全ユーザーの57%が家電本体を購入した店舗とは別の店舗でアクセサリを購入していることに加え、本体と同一の店舗でアクセサリを購入しなかった場合、ユーザーの56%が製品に対して不満を抱き、43%が店舗そのものに対しても不満を持っていた。さらには12%が返品したいと考えるなど、ひとつの店舗で本体からアクセサリーまでそろうことがユーザーの満足度と購買意欲を高めるために重要だとしている。

 さらには、ホームオーディオを例に挙げ、手持ちのホームオーディオをアップグレードするユーザーの3〜4割強、現在ホームオーディオを所有していないユーザーでさえ2〜3割程度がセッティングや音質のチューニング、家具類や照明といった付加サービスに興味を示すとした。ただし、ホームオーディオを所有するユーザーの約7割がこういった付加サービスはどこで提供されているのか分からないと答えている調査結果を示し、これらの点を解消することでさらなるビジネスチャンスが生まれるとした。

デスクトップPCが優勢であった米国でもついにノートPCがデスクトップPCを出荷台数で抜く時代になった
購入するコンテンツは依然としてCDやDVDといった「目に見える形」を求めるが、実際使うときはデジタルデータに変換しているユーザーが大勢を占める
米国家電流通量でトップ5社が占める割合の推移。急激な変化がないものの確実に寡占が進んでいる

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー