前座なのに真打ち登場──ビル・ゲイツ氏基調講演2007 International CES(2/2 ページ)

» 2007年01月08日 21時48分 公開
[富永ジュン,ITmedia]
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熱い熱い(暑い?)ロビー・バック氏のスピーチはとにかく動きが激しい。その動きの激しさは羽ばたいている手が写らないほどだ

 ここでゲイツ氏は退場し、世代の交代を感じさせるかのごとくMicrosoft社長のロビー・バック氏がスピーチを引き継いだ。バック氏は、これからはハードウェアとソフトウェア、コンテンツが一体となって「つながる楽しさ」を提供することがユーザーの支持を得るための鍵だと語った。その取り組みの例として、2006年11月14日に発売された、無線LAN機能や音楽共有機能を持つマルチメディアプレイヤー「Zune」を挙げた。Zuneは、発売以来100万台の売り上げを記録し、すでに業界第2位のマルチメディアプレイヤーの座に駆け上がったことでMicrosoftは携帯端末においても成功を収めているとバック氏は強調、BlackBerryよりもはるかに売れている、とさらにアグレッシブな発言も飛び出した。

 つながる楽しさは、ゲーム機にも積極的に取り入れられている。バック氏は、世界で最も利用されているゲームプラットフォームはPCだとし、その理由としてペアレンタルコントロールが簡単でゲーム以外の用途にも利用できる、さらに、ハードコアゲームとカジュアルゲームの両方が充実していることなどを挙げている。

 また、MicrosoftのもうひとつのゲームプラットフォームとなるXbox360では、2006年末までに世界37カ国で1040万台を売り上げただけでなく、これらの購入者のほとんどが初めてXboxプラットフォームを購入した新規開拓層だとした。現在、Xbox360向けのゲームタイトルは、240万本を記録した「Gears of War」を含む160タイトルが用意されているが、2007年末までに2倍の300タイトルを提供するとバック氏は宣言した。その中には、「ダンス・ダンス・レボリューション」「ギター・ヒーロー」、そしてXboxシリーズが独占する大ヒットタイトルの新作「Halo 3」も含まれている。つながる楽しみの取り組みとしては「Xbox Live」が取り上げられ、Xbox360でハードコアゲームをプレイしている遠隔地のユーザーにWindows VistaマシンからXbox Liveを通じてカジュアルゲームの招待を送って一緒にプレイする、というデモが行われた。

 最後に、この冬のホリデーシーズンにUS国内で販売されたPCの約8割がMedia Center Edition(MCE)であることや全世界で300万本ものMCEが販売されたことを例に挙げ、ユーザーはマルチメディアセンターを求めているとバック氏はアピールする。このニーズを満たすために、Xbox360の新モデルには、HD DVD再生、HDビデオのダウンロード購入といった機能のほか、現在Microsoftが取り組んでいるインターネットベースのテレビ配信サービス「IPTV」が取り入れられることも明らかにされた。

フォードのフィールド氏が紹介した「携帯端末とデジタルミュージックプレイヤーを組み込んだFord専用車載システム」は、日本で言うところの「TOYOTA MUSIC PLAYER bB」と「通信カーナビ」の組み合わせたものに相当するのではないかと思われる

 ここでフォードのエグゼクティブ・バイス・プレジデントのマーク・フィールド氏が登場し、携帯端末とデジタルミュージックプレイヤーを組み込んだFord専用車載システムが発売されると発表した。この車載システムは、iPodやZuneなどのデジタルミュージックプレイヤーを接続してカーオーディオで再生できるほか、Bluetoothに対応した携帯端末ならばカーオーディオからアドレス帳やメールをダウンロード可能で、さらには着信したメールを読み上げる機能も備えている。また、ボイスコマンドで動作し、オンラインシステムアップデートにより最新機種にも対応予定とした。フィールド氏は当初は高級機種からこのシステムを取り入れ、徐々に普及モデルにも入手しやすい価格で提供していくと説明している。

 基調講演の締めくくりとして、再びゲイツ氏が登壇し、Microsoftが予想する家電のこれからを表した「未来予想」を紹介した。その“予想”では、バス停でバスを待っている間に携帯電話を使って次のバスがいつ到着するのかを調べたり、携帯電話のGPS機能から現在地の近くにあるレストランを探して、割引情報や予約ができたりしている。また、外出時に自宅に小包が届いても、携帯電話経由で引き取りのサインができるなどの未来も描かれていた。キッチンではテーブルなどの平面をスクリーン代わりに使って、現在ある材料でできる料理のレシピを表示したり、スクリーンへのタッチやボイスコマンドで操作したりと料理に不慣れなユーザーでもテクノロジーを利用することでより簡単にできるようになるとゲイツ氏は述べている。ベッドルームでは、壁一面をスクリーン代わりに使ってモバイルPCに保存した画像やゲーム画面を映し出したり、メール着信通知を表示する場面も紹介された。

 一部の機能は日本ですでに実用化されているものもあるが、これらの未来予想図は、あくまでも「こうなったらいいな」という話であり、具体的な実現のめどが立っているものではない。しかし、基調講演で紹介された技術が実現されれば我々の生活とあり方を大きく変化させるだろう。ゲイツ氏が第一線を退いたとしても、今後もMicrosoftは業界のトップを走り続けるという決意を強く感じさせるスピーチだった。

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