「お客様との約束を積み重ねたい」――ナナオの液晶ディスプレイ説明会(1/3 ページ)

» 2007年03月01日 12時00分 公開
[田中宏昌&前橋豪,ITmedia]

 まずは液晶ディスプレイの基本的な原理と特徴、そしてナナオの独自技術について、同社カスタマーリレーション推進部 商品技術課 課長 森脇浩史氏が解説した。液晶ディスプレイは、前面キャビネット、液晶モジュール、拡散板、バックライト、制御基板、背面キャビネットといったパーツで構成されており、バックライトの光を液晶モジュールで偏光させて階調表現を行うという基本設計はどの製品も変わらない。ただし、バックライトの方式や液晶パネルの駆動方式によって、画質やコスト面が違ってくる。森脇氏は「液晶ディスプレイの購入時には、用途を明らかにして、最適なものを選ぶことが重要」と語る。

液晶ディスプレイの構造(写真=左)。同社がとくに力を入れているのが、画像表示の心臓部となる制御基板の部分だ。液晶モジュール、拡散板、バックライトは他メーカーから調達するが、品質基準に対するチェックは厳しく行っており、一定の基準を満たす液晶パネルのみ使用している。同社の医療用液晶ディスプレイをパーツ別に並べたもの(写真=中央)。多数の層から構成される液晶ディスプレイ(写真=右)。バックライトからの光量を偏光板と液晶で調整し、カラーフィルターに光を通してカラー表示が行われる

バックライトは直下ライト方式とエッジライト方式がある

 バックライトの方式は、液晶モジュールの背後に直列で何本ものライトを並べた「直下ライト方式」と、少ない本数のライトを上部や下部に配置して拡散板で光を画面全体に回り込ませる「エッジライト方式」がある。

 直下ライト方式は、コストや消費電力の面でエッジライト方式より不利になるものの、輝度を高めつつ、輝度の均一性を上げることができるため、動画再生に配慮した大型ワイド液晶ディスプレイなどに採用されることが多い。エッジライト方式はコストと消費電力を下げることが可能なため、単体の液晶ディスプレイはもちろん、ノートPCでも一般的だ。ただし、液晶パネルのサイズが大きくなるにつれて、輝度の高さや均一性を確保するのは難しくなる。当然、画質面では直下ライト方式のほうが有利だ。

高輝度化と輝度均一化に有利な直下ライト方式(写真=左)。コストと消費電力が下げられ、実装面積も抑えられるエッジライト方式(写真=右)

 PC用液晶ディスプレイにおけるバックライトの種類は現在はCCFL(冷陰極管)が標準的だが、昨今では業務用ディスプレイなどでRGBの3色LEDを採用した製品も登場しつつある(ノートPCなどの小型液晶ディスプレイには、白色LEDバックライトを採用したものも増えている)。「LEDバックライトは、液晶パネルの色域を広げられるのが大きな魅力であり、研究は進めているが、長寿命をうたいつつも実際の耐久性は現状のCCFLとさほど変わらず、コスト面で不利になるため、早急に必要とは考えていない」(森脇氏)

液晶パネルの特徴をつかさどるTN、VA、IPSの駆動方式

 液晶モジュールは、上下もしくは左右の方向に振動する光のみを透過させる2枚の偏光板で、液晶分子の詰まった液晶層をサンドイッチ状に挟みこんだ構造となっている。液晶層の表面と裏面にカバーするガラス基板に電圧をかけ、液晶分子を動かすことで光の振動方向を上下/左右にスイッチングし、偏光板で光を遮断もしくは透過させるというのが液晶ディスプレイの基本的な動作原理だ。ただし、以下に紹介する液晶分子の配列方法(液晶パネルの駆動方式)によって、表示の特性は大きく変わってくる。

バックライトの光はさまざまな方向に進むが、偏光板は一方向に振動する光しか通さない(写真=左)。一方向に振動する光しか通さない2枚の偏光板を90度回転させて配置すると、1枚目の偏光板を通った光は2枚目の偏光板で吸収され、光が外に漏れなくなる(写真=中央)。液晶ディスプレイでは、2枚の偏光板の間に液晶層を挟み込み、1枚目の偏光板を通った光の向きを液晶分子で調整し、2枚目の偏光板に通す光の量を調整する。液晶パネルは、光の3原色であるR、G、Bを混ぜると白色になる加法混色を採用しており、R、G、Bの3画素で1ドットを構成している(写真=右)

TN、VA、IPSにおける一般的な特性の違い

 一般的にPC用の液晶ディスプレイに採用されている液晶パネルの駆動方式は、TN(Twisted Nematic)、VA(Vertical Alignment)、IPS(In-Plane Switching)の3タイプに大別できる。

 TNタイプはもっとも歴史が古く、液晶分子を偏光板に対して90度ねじれた状態で配置したものだ。製造コストが低いことから現在でも採用例は多いが、ねじれた構造の液晶分子が電圧オン時でも完全に垂直に立たないため、ユーザーが画面を見る角度によってコントラストと色度が大きく変化してしまう。視野角の狭さはTNタイプの欠点だが、最近の製品は精度が高い視野角拡大フィルムを装備しているものもある。しかし、それでもVAタイプやIPSタイプにはかなわない。また、黒→白→黒の応答速度を高速化しやすい半面、中間調の応答速度がかなり低下するという欠点も持つ。

 VAタイプは、液晶分子を偏光板に対して垂直に配向しており、電圧オン時では液晶分子が水平になる。このままではTNタイプと同様に視野角が狭くなるので、液晶セルを細かく分割し、電圧オン時に液晶分子を多方向に傾かせる構造にすることで広視野角を確保するマルチドメイン技術が普及している。VAタイプは電圧オフ時に、光が液晶分子の影響をほとんど受けずに直進して偏光板で止まるため、黒浮きが少ない高コントラストの表示を実現できるのが特徴だ。ただし、マルチドメイン技術を用いたVAタイプでもIPSタイプと比較して、画面を見る角度による色度の変化は発生しやすい(表示がわずかに白っぽくなる)。また、黒→白→黒の応答速度は遅くないが、中間階調の応答速度が遅れるのも短所だ。

 IPSタイプは、ガラス基板の片側にくし型の電極を形成し、液晶分子を水平に並べた構造となっている。電圧オン時には液晶分子が水平方向に回転するが、どの方向から見ても液晶分子が平らに並んで見えるため、視野角は広い。ただし、液晶分子を水平方向に動かす構造は、駆動に時間がかかり、光の透過率が悪くなる(応答速度とコントラストを高めにくい)。ただし、応答速度については、黒→白→黒の速度に対して、中間階調が低下しにくいという特徴もある。IPSタイプは製造コストがほかより高いため、視野角を優先したい大型モデルや液晶TVでの採用例が多い。「スペック上の数字が同じでも、実際はIPSタイプの視野角が広い」(森脇氏)

TNタイプは、電圧オフ時に液晶分子が90度ねじれた状態になるように配置されており、光が液晶分子に沿って透過するが、電圧オン時では液晶分子が斜めに立ち、光が通らなくなる(写真=左)。VAタイプは、電圧オフ時に液晶分子が垂直方向に立っており、この状態では光を通さないが、電圧オン時には液晶分子が傾き光を通す(写真=中央)。IPSタイプは、水平方向に液晶分子が並び、電圧オフ時は光が透過せず、電圧オン時に液晶分子が回転して光が通る(写真=右)

 なお、これら液晶パネルの方式に関係なく、最近では中間階調(グレーからグレー)の応答速度を向上させるオーバードライブ回路を搭載することで、黒→白→黒の表示に対して中間階調の応答速度が低下しない製品も増えつつある。

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