第5回 最新6モデルの印刷品質を見極める小型フォトプリンタ徹底攻略ガイド(1/2 ページ)

» 2007年03月02日 14時30分 公開
[小川夏樹,ITmedia]
本特集で検証する小型フォトプリンタ
最新技術と多くの機能を備えた上位モデル
Colorio me E-700 エプソン 3万2000円前後
PIXUS mini 260 キヤノン 2万円前後
HP Photosmart A716 日本HP 2万5000円前後
小型フォトに徹したシンプルな下位モデル
Colorio me E-300 エプソン 1万8000円前後
PIXUS mini 220 キヤノン 1万6000円前後
HP Photosmart A616 日本HP 1万9950円

 複合機やA4ダイレクト/単機能プリンタは、メーカー間の画質競争が一段落した感があり、エントリーモデルでも印刷品質に不満が出ることは少なくなった。一方、ここ2年ほどで台頭してきた小型フォトプリンタに関しては、まだ発展途上にある印象だ。小型フォトプリンタは本体の小型化が重視されるため、インクの色数やノズル数を減らしており、当然ながらフラッグシップの複合機やA4ダイレクト/単機能プリンタほどの性能は得られない。しかし、各社とも画質をおろそかにしているわけではなく、現状の小型フォトプリンタでもアルバム保存や配布を行うのに十分な印刷品質は得られる。写真で作品を作りたいといったユーザーは別として、実際に各製品の印刷サンプルを見比べてみない限り、画質の差が気になるようなことはないだろう。

 とはいえ、できるだけ印刷品質のよい小型フォトプリンタを選びたいという人は少なくないだろう。そこで本特集の最終回は、エプソン、キヤノン、日本HPの注目モデルを集め、その印刷品質をチェックした。検証した製品はこれまでと同じ6モデルだ。各モデルの製品概要とインプレッションは第2回、各種機能の比較は第3回、印刷速度の比較は第4回を参照してほしい。


L判写真印刷の画質(メーカー純正写真用紙/最高品質設定)

 印刷品質のテストは、各モデルで同じ画像ファイルをAdobe Photoshop Elements 5.0 for Windows経由で印刷し、それらを見比べた。PCのプリンタドライバは最高品位に設定したため、印刷速度がもっとも遅い状態での出力となっている。色補正などの画質設定は、すべてデフォルトのままだ。印刷に使った用紙はメーカー純正の最高品質メディア。エプソンのE-700とE-300は「写真用紙クリスピア」、キヤノンのmini 260とmini 220は「プロフェッショナルフォトペーパー」、日本HPのA716とA616は「アドバンスフォト用紙」を使用した。

 以下に、各モデルの印刷サンプルを1200dpiでスキャンし、PNGファイルで保存したものを掲載した。それぞれの縮小画像をクリックすると、スキャンした画像の一部を1024×768ドットで切り取ったものが表示される。実際に出力した画像のサイズは幅56ミリ、高さ85ミリと小さく、見た瞬間に粒状を感じるほどではないが、凝視してみるとドットが気になる製品もあった。スキャン画像は細部の描写の違いを確認するための参考として掲載したが、実際はここまで拡大して見ることはなく、全体の縮小画像が大まかな各モデルの傾向と考えてもらえばよい。

 各印刷サンプルはカラースペースがsRGBの環境で見た目の傾向が最も近くなるが、表示画像は実際の印刷サンプルよりも色域が狭い(実際の印刷サンプルはより鮮やかな発色になる)ため、色再現性は正確ではない。また、表示するPC環境の違い、とくにディスプレイの違いによって画像の印象は大きく変化することから、掲載した画像はあくまで各モデルの傾向を相対的に判断するための参考で、評価は各縮小画像のキャプションを確認してほしい。実際の印刷品質は、店頭などでチェックするとよいだろう。

E-700:自動色補正のオートフォトファイン!EXは、人物写真向きで、このサンプルでは色彩が若干沈んだ。背景が実際の画像より若干グレーになった。4色インクながら画質は健闘しており、再現が難しい金属部分にも粒状がほとんどない
mini 260:最小インク滴が1ピコリットルと精細なエンジンを搭載しただけあり、売れ筋の複合機に見劣りしない印刷品質を誇る。粒状感は皆無で、4色インクの小型機でこの品質は見事。彩度は高めだが、全体的なバランスはよい
A716:凝視すると、全体的に粒状が見られる。彩度が高めでコントラストが強いため、見た目に派手な印象。3色インクのため、CMYの3色混合で黒を出すが、その再現性はなかなか優秀だ。黒は濃いグレーになるものの、薄くは感じない

E-300:3ピコリットルのMSDTエンジンは、E-700が搭載する2ピコリットルのAdvanced-MSDTエンジンに劣るが、オートフォトファイン!EXやインク構成は変わらず、全体的な傾向はE-700に近い。こちらも粒状感は気にならない
mini 220:全体の印象はmini 260に似ているが、3色インクなので黒の締まりでは若干不利。最小インク滴は2ピコリットルとmini 260の1ピコリットルより大きく、凝視すると背景のグレーにわずかな粒状感があるが、通常は目立たない
A616:プリントエンジンはA716と同じため、画質に差はない。カラーバーや果物、グラスに粒状感がある。こちらもCMYの混合で黒色を表現するため、黒の濃度はわずかに足りないが、不自然な色かぶりはなく、黒色ときちんと認識できる

 画質はどれも写真プリンタとして不足のないレベルにあるが、とくにmini 260が優秀で、ほぼ同列でE-700、E-300と続き、mini 220がその後を追っている印象だ。A716とA616は、目を近づけると少し粒状感がある。

 ちなみに各モデルで印刷品位を1段階下げても、画質はそれほど変化しない。見比べると細部の再現性などに差があるのだが、通常は気にならないレベルだ。たとえば最高画質を求めず写真を何枚も印刷して配布したい場合、エプソン製品とキヤノン製品は「標準」の設定、日本HP製品は「きれい」の設定を選べば、十分なクオリティが保てる。最高品位で印刷しなくても、写真を受け取った人から不満が出るようなことはないだろう。

 余談だが、日本HPの純正写真用紙にはアドバンスフォト用紙のほかにプレミアムプラスフォト用紙も用意されている。プレミアムプラスフォト用紙はアドバンスフォト用紙と比較して乾燥時間がかかり、印刷速度が多少低下するものの、色域が広くパンチのある画像が出力できるうえ、100年以上の耐光性をうたっている。日本HP製品のユーザーは、2種類の用紙で印刷品質を見比べてみてもよいだろう。

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