民生用のデジタルビデオカメラは、2003年に登場した日本ビクターの「GR-HD1」以来、ハイビジョン(HD)化が確実に進み、ユーザー数もここ数年で急増している。しかし、そのHDカメラで撮影した映像を個人のPCで編集しようと思うと、ハード、ソフトともに成熟したDV編集のようにはすんなりいかない。
HDVカメラに対応したビデオ編集ソフトはかなり増えたものの、登場して間もないAVCHD方式のビデオカメラについては、対応ソフトがまだまだ少ないのが現状だ。こうした状況の中、AVCHD対応をうたう編集ソフトとして新たに名乗りを挙げたのが、インタービデオジャパンの「VideoStudio 11」だ。
VideoStudioシリーズは、低価格なビデオ編集ソフトとしては代表的な存在と言える。この価格帯の製品はライバルが多いため、ビデオ編集の入門者でも迷わず使える分かりやすさはもちろんのこと、機能や使い勝手のブラッシュアップも常に要求される。さらに、Windows Vista Home PremiumやUltimateでは、HDVに対応したビデオ編集ソフトが標準で搭載されるに至り、市販ソフトとして価格以上の価値をアピールする必要も出てきた。
VideoStudio 11は今回のバージョンアップでAVCHDへの対応を果たし、一足先にジャストシステムとカノープスから発売されたHDV/AVCHD両対応(AVCHDは無償提供のユーティリティで対応)のビデオ編集ソフト「エディウスJ」を追撃する形だ。また、サイバーリンク トランスデジタルのビデオ編集ソフト「PowerDirector 6 Vista」に関しても、AVCHD対応モジュールを後日配布する予定としており、AVCHDの家庭における編集環境は少しずつ整いつつある。
ユーザーにとって選択肢が増えるのは喜ばしいが、価格や機能が似通っているだけに、いくら低価格とはいえ、どのソフトが自分にとって使いやすいかを見極める必要があるだろう。ここでは、VideoStudio 11で追加された新機能を中心に、実際の使い勝手やライバル製品との違いについて報告しよう。発売日は6月15日ということで、今回使用したのは製品版に近いβ版になるため、実際の製品と一部仕様が異なる可能性があることを最初にお断りしておく。
なお、同社では、DVD-Video形式での保存に特化したオーサリングソフト「DVD MovieWriter 6 SD Edition」を一足先に発売しているが、こちらもHDVやAVCHDの映像を素材として扱うことが可能だ。最終的な保存の手段はDVD-Videoだと決めているユーザーは、併せて検討するとよいだろう。
VideoStudio 11は、さまざまなビデオ編集が行える「標準モード」に加えて、「おまかせモード」および「クイックDVDウィザード」という合計3つのモードを備えており、最初に利用したいモードを選ぶ必要がある。標準モードでの作業の流れは、画面上部に設けられたタブを左から右へと順番に切り替えながら、キャプチャから動画編集、書き出しまでが行えるという、VideoStudioシリーズでおなじみのスタイルだ。全体的な画面の構成は前バージョンを踏襲しており、ビデオ編集ソフトとして一般的な操作系になっている。
おまかせモードは、あらかじめ用意された複数のテンプレートから好きなものを選ぶだけで、映像や音声に対するエフェクトの設定を自動化できる点が通常モードとの違いだ。もちろん、HDVやAVCHDの映像も利用できる。最大で7本のビデオトラックを駆使しながら、手作業では面倒な効果を自動でセットしてくれるし、気に入らない部分は、通常モードに移行して好きなように修正することもできるので、試してみると面白いだろう。
最後のクイックDVDウィザードは、DVテープの映像を手早くDVD保存することに特化したモードで、わずかな作業でDVDーVideoを作成できるというものだ。DVテープ以外のメディアには対応していないが、HDVカメラに限ってはけっこう便利なはず。というのも、カメラ側で「DV変換」を有効にしてPCに接続すれば、HDVの素材でもSD画質にダウンコンバートしてクイックDVDウィザードの機能をすべて利用できるからだ。
単にテープの映像をDVD化したいだけなのに、HD対応ビデオカメラを買ったばっかりに面倒くさくなってしまった、と感じているHDVカメラのユーザーにとって、クイックDVDウィザードは非常にありがたいモードだろう。しかも、HDのまま編集したい場合は通常モードやおまかせモードを使えばよいわけで、3つの選択肢が用意されているのは、VideoStudio 11の大きな魅力といえる。
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